33 / 68
第33話 違う?
しおりを挟む
「お風呂入れてくるね」
アオは俺の疲れを気遣ってくれている。
そんな些細な優しさが、妙に胸に染みた。
アオが風呂場に向かう間、俺はリョクに電話をかける。
「もしもし? 今、ちょっと手が離せなくて」
受話口から聞こえる、微かに息の乱れた声。
……カナメの声か。リョクも相変わらずだ。
「すぐ済む。タクミってやつ、知ってるか? アオとはどういう関係だ?」
「えっ? アオと? ん~、昔から可愛がってくれてるけど、そんな深い仲じゃないよ。どっちかっていうと、俺の方が仲いいし」
「悪かった。カナメには今度お詫びすると伝えておけ」
「はぁ~い」
通話を切り、ソファに腰を沈めて天井を仰ぐ。
……あいつじゃないのか。
アオの背中にある紋章——すぐに確かめたい。
「レイ? 大丈夫? 疲れてるよね?」
戻ってきたアオが、覗き込むように顔を近づけてくる。
「ん。少し疲れたみたい」
「お風呂、一緒に入る?」
まさか、アオからそんな提案が来るとは。
ニヤリとしたいのを抑えつつ、その申し出に甘えることにする。
「ありがとう。助かる」
少し大げさに疲れているふりをしてみせる。
アオは長年リョクの世話をしてきたせいか、手際が自然だ。
*---------------
「お世話するって言ったのに、これじゃ髪洗ってあげられないよ?」
湯船に一緒に浸かったけれど、俺の前にアオがいる。
背後から抱きしめるだけで十分癒やされるが、本人はその事実を知らない。
「もう少し、このままで。ダメ?」
抱きしめる腕に力が入る。
「……いいけど」
そう言いながら、首筋にそっと額を寄せる。
背中の痣は濃くなっていない……やはり、タクミではないのか。
痣に軽くキスを落とすと、「くすぐったい」と笑いながら返してくる。
俺との紋章ではない——その事実が、胸の奥で静かに疼く。
次に、耳の後ろにある痣を指でなぞり、確かめるように見つめる。
「んっ…」
さっきとは違う反応。確実に感じている。
すでにある紋章も、よりはっきりと浮かび上がる。
アオは間違いなく俺のものだ。
「こっち向いて」
俺の言葉に、アオは首を傾げながらも体の向きを変える。
チュッ、チュッ……とキスをする。
アオは小さく息を漏らしながら、すべてを受け入れてくれる。
「今日は疲れてるんだし、早く寝よう? あっ、この間リョクがくれた『アオ専用』の中に、リラックスできるやつあったよね? あれ使おうか?」
「いいの?」
「えっ? ダメ? レイの疲れが取れるよ、きっと。お風呂上がったら準備しておくね。アロマタイプのだから」
「ん。じゃあ、お願いする」
張り切って準備に向かうアオ。
『アオ専用』の意味を、わかっていない。
さて……俺の前にどんな姿で現れるのか。
想像しながら、髪を洗い始めた。
アオは俺の疲れを気遣ってくれている。
そんな些細な優しさが、妙に胸に染みた。
アオが風呂場に向かう間、俺はリョクに電話をかける。
「もしもし? 今、ちょっと手が離せなくて」
受話口から聞こえる、微かに息の乱れた声。
……カナメの声か。リョクも相変わらずだ。
「すぐ済む。タクミってやつ、知ってるか? アオとはどういう関係だ?」
「えっ? アオと? ん~、昔から可愛がってくれてるけど、そんな深い仲じゃないよ。どっちかっていうと、俺の方が仲いいし」
「悪かった。カナメには今度お詫びすると伝えておけ」
「はぁ~い」
通話を切り、ソファに腰を沈めて天井を仰ぐ。
……あいつじゃないのか。
アオの背中にある紋章——すぐに確かめたい。
「レイ? 大丈夫? 疲れてるよね?」
戻ってきたアオが、覗き込むように顔を近づけてくる。
「ん。少し疲れたみたい」
「お風呂、一緒に入る?」
まさか、アオからそんな提案が来るとは。
ニヤリとしたいのを抑えつつ、その申し出に甘えることにする。
「ありがとう。助かる」
少し大げさに疲れているふりをしてみせる。
アオは長年リョクの世話をしてきたせいか、手際が自然だ。
*---------------
「お世話するって言ったのに、これじゃ髪洗ってあげられないよ?」
湯船に一緒に浸かったけれど、俺の前にアオがいる。
背後から抱きしめるだけで十分癒やされるが、本人はその事実を知らない。
「もう少し、このままで。ダメ?」
抱きしめる腕に力が入る。
「……いいけど」
そう言いながら、首筋にそっと額を寄せる。
背中の痣は濃くなっていない……やはり、タクミではないのか。
痣に軽くキスを落とすと、「くすぐったい」と笑いながら返してくる。
俺との紋章ではない——その事実が、胸の奥で静かに疼く。
次に、耳の後ろにある痣を指でなぞり、確かめるように見つめる。
「んっ…」
さっきとは違う反応。確実に感じている。
すでにある紋章も、よりはっきりと浮かび上がる。
アオは間違いなく俺のものだ。
「こっち向いて」
俺の言葉に、アオは首を傾げながらも体の向きを変える。
チュッ、チュッ……とキスをする。
アオは小さく息を漏らしながら、すべてを受け入れてくれる。
「今日は疲れてるんだし、早く寝よう? あっ、この間リョクがくれた『アオ専用』の中に、リラックスできるやつあったよね? あれ使おうか?」
「いいの?」
「えっ? ダメ? レイの疲れが取れるよ、きっと。お風呂上がったら準備しておくね。アロマタイプのだから」
「ん。じゃあ、お願いする」
張り切って準備に向かうアオ。
『アオ専用』の意味を、わかっていない。
さて……俺の前にどんな姿で現れるのか。
想像しながら、髪を洗い始めた。
30
あなたにおすすめの小説
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
【完結】獣王の番
なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。
虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。
しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。
やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」
拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。
冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!
【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜
小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!?
契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。
“契約から本物へ―”
愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。
※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。
※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。
※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。
※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。
予めご了承ください。
※更新日時等はXにてお知らせいたします
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる