【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第34話 待っていたのは

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バスタオルを腰に巻き、髪を濡らしたままベッドルームへ向かう。
そこには、待ちきれないように俺の名前を呼ぶアオの姿があった。

どうやらしっかりと『アオ専用』が効いているようだ。

俺に気づいたアオが、潤んだ瞳でこちらを見上げる。
いつもと違うその光景に、一歩近づきかけて——すぐに足を止めた。
このまま見ていたい。

サイドテーブルの水を手に取る。

「レ……い……? まだ……?」

「もう少し待ってて。準備するから」

「……ん、待つ……」
素直にそう言うものの、俺を求めているのがわかって、かわいく見える。

椅子に腰を下ろし、アオがどこまで我慢できるか見守ることにした。

「れい……っ、レ……い……っ」

何度も何度も俺の名前を呼ぶ。
その声と表情が、愛おしくて仕方がない。

「まだ来ないなら……嫌いになる」

不貞腐れたような、懇願するような声。

——可愛い。
そう思いながら、ゆっくり立ち上がる。
「嫌いになられるのは困るな」

そう言ってキスを落とした。

「好き。レイ」

その甘い声が、俺を深く満たす。
——アオは俺のものだ。

「アオ、愛してる」

「僕も……愛してる……」

アオが俺を選んでくれている。
その事実が、胸の奥に確かな安心を灯す。

そしてアオが求めるすべてに応えていった。

*---------------

「リラックスできるって言ってたのに、どうしてこうなるの?」
まだ火照ったままのアオがむくれ顔で言う。

それはリョクが俺用にくれた『アオ専用』のアイテムだから。
理由はもちろんわかっている。けれど、あえてとぼけてみた。

「間違えた?」

「ううん。ちゃんと確かめたよ」
そう言って、上目遣いでこちらを見上げてくる。

「ごめんね。レイをリラックスさせたかったのに……」
「リラックスは、ちゃんとできてるよ」
そう返しながら、アオをギュッと抱きしめ、唇を重ねた。

「でも……結局」
「そうだね。アオがあの後も、ずっとおねだりしてきたのは珍しかったな」
「ちょ、やめて」
「でも嬉しかった」
「レイがいいなら……いいけど」

少し間を置いてから、俺は小さく笑って尋ねる。
「また、あのアオが見たいって言ったら……アロマなしでもしてくれる?」

「え……」
困ったように視線を逸らすアオ。その反応すら可愛い。
「やだ?」
「……レイがしてほしいなら……する」
小さな声で、恥ずかしそうに言うその姿が愛おしい。
アオは、本当に俺の願いを叶えようとしてくれる。

「タクミさんのところに行く時、俺も行こうかな?」
「えっ? 一緒に来てくれるの?」
「いい?」
「もちろんだよ。タクミさんにも紹介したいし。今度の休み、行ける? 一泊になるけど」
「ホテル取ろうか?」
「わっ、じゃあちょっとした旅行気分だね」
「近くに美味しいごはん屋さんもあるんだ。レイを連れて行きたい!」
「うん」
「わぁ。楽しみ」

本当に違うのか、この目で確かめなければ——そう思いながらも、アオに後ろめたいことがあったなら、こんなに嬉しそうにするはずがない、とも思えた。

*---------------

その頃。

「どうして、電話に出るんだ!」
カナメの声が響く。

「だってぇ……レイさんからの電話だったし」
「だとしても!」
「声、聴かれちゃったかもね。すっごい抑えてたけど」
ニヤニヤ笑うリョクが憎たらしい。
……抑えていたつもりだったのに。聴かれているはずがない。そう思いたい。

ピロン、とメッセージ通知音。
「……あっ。タクミさんのところに、今度レイさんも行くって。お詫びに、僕たち用のホテル取ってくれるみたいだよ?」
「え? お詫び?」
「ふふっ。ばっちり聞こえてたみたいだよ、カナメの声」

……聞かれていた。あの時の声を。
どんな顔してレイの前に立てばいいんだ。

「行こうよ、旅行がてら」
甘えるリョクに、カナメは短く答える。
「絶対に行かない!」

それが精一杯の抵抗だった。
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