【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第35話 感情の行く先

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リョクの開発した商品が販売されることになった。
「イナンナ ギ・アグ」で取り扱う一般向け商品と、「ルガルとムル」の特別仕様商品の販売に向けて、動き始めていた。

「カナメさん、この前もらったデータベースから、この情報を取り出してもいい?」
「了解。テーブルを作って渡すよ。特別仕様のデータベースはセキュリティを高めたいからね。アキト、そのあたりは進んでる?」
「ああ、うん。設計書はもう作ってある。今は設計書の段階で、アオくんに確認してもらっているところだよ」

アキトとカナメは手際よく仕事を進めていく。

「これさ……悪用される可能性もあるよね?」
アオが慎重に指摘する。

「そうだね。『ルガルとムル』の特別仕様は、それぞれの趣味嗜好まで把握するものだから、かなり注意が必要だ。もし情報が漏れたら、うちの信用に関わる。だからこの部分は基本的にカナメさんが管理している。一般社員には情報を渡さず、独立した状態で設計しているよ」

アキトが静かに説明した。

3人はレイの所有するビルの一室に集まっていた。
会社ではなくこのビルで仕事をしているのは、一般社員にもその情報が分からないようにするため。最上階とその下は専用として使っているため、シークレットな話をするには最適な場所だ。

3人は最上階の1室で作業中。
一方、レイとキョウカは別室でエージェントと打ち合わせ中。
リョクは学校。そろそろ戻ってくる頃合いだ。

「そろそろ休憩しようか?」アキトが提案する。
「あっ、じゃあ僕、お茶を入れますね!」
「ありがとう。助かるよ。アオ」カナメはメガネに手を添えながら微笑んだ。

アオはレイのプライベートルームに行き、お茶の準備を始めた。
レイは必ずプライベートルームを作っている。

レイとキョウカが打ち合わせから戻り、リョクはカナメを迎えに来て、それぞれが帰って行った。アオは疲れたのか、すやすやとソファで寝てしまった。

レイは3人が作成した設計書に目を通す。
ムルの中でも特に能力が秀でた面々だけあって、抜かりはない。
感心すると同時に、その力を狙う存在が現れる危険性も意識せざるを得なかった。

今のところ、世間的にはキョウカが俺の婚約者候補という情報が有効に働き、アキトを守れている。しかし、前回のような事態が再び起こる可能性もある。
アキトを表立って守っているため、アオの存在は隠されているが、油断はできない。
カナメも力はあるものの、リョクと離れている時が心配だ。

「……手を打たないとな」

そんなとき、再び着信音が鳴った。
発信者はアキト。

『あの紋章の件だけど、ムルの力が強ければ強いほど、2つ目の紋章が現れる可能性があるみたい。
ただ、これまでの事例はごくわずかで、ほとんどは『あざ』程度で終わってる。
でも……アオくんは、初めて本格的に2つ目が出る可能性がある』

「つまり、アオが俺以外のルガルを受け入れることになる、という話か」

『アオくんの今の感情からすれば、そうはならないと思うけど……覚悟はしておいた方がいい』

「……わかった」

通話を終え、眠るアオの方へ視線を向ける。
アオの感情が、自分以外に向くなど考えたくもない。
けれど、俺にはそれを止める力はない。

――俺から離れないでほしい。
そう願うしかなかった。
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