【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
40 / 68

第40話 それぞれの

しおりを挟む
リョクがヴィラの部屋へ戻った時、薄いベージュのシーツの上でカナメがゆっくりと瞳を開いた。

いなかったことには気づいていたのだろう。けれど身体はまだ完全に回復しておらず、再び眠りに落ちていたらしい。

「……おかえり。どこに行ってた?」

少し掠れた声で尋ねられ、リョクはベッドの縁に腰を下ろした。

「ちょっと。レイさんと話してた」
「何を?」

カナメのやわらかな視線に、胸の奥から罪悪感がせり上がる。固く唇を噛みしめたあと、リョクは小さく告げた。

「……カナメ、昨日、無理させてごめん」
「どうした?」

優しすぎる声だった。

「あのね。カナメに、2つ目の紋章が出てたんだ」

「え?」カナメの瞳が静かに揺れる。

「だから俺、カナメが俺以外の誰かに心を許したのかと思って。怖くて、止められなかった」

カナメは何も言わず、そっと指先でリョクの頬に触れた。それだけで、十分に伝わる。

「バカだな。リョクだけだよ」

淡く微笑みながらふわりと腕を広げる。リョクは堰を切ったように胸に飛び込み、肩を震わせた。

「うん。信じられなくて、ごめん。でも……怖かった」
「大丈夫。俺は、ずっとお前の番だ」

耳元で囁くその声に、リョクの表情がようやくほどける。

「でも、どうして紋章が?」
「レイさんは分かったみたい。お昼すぎに、『答え合わせ』をするって」
「ほんと、あの人は」

苦笑しながら、カナメはリョクの髪をゆっくり撫でた。

「ねえ、昼まで、抱きしめてて」
「いいよ。おいで」

カナメの胸に顔をうずめながら、リョクはやっと安堵の息をついた。

*---------------

その頃アオは、まだぼんやりとまぶたの奥に眠気を留めたままだった。

「……レイ?」
「まだ寝てていい」

レイは鳴り続けるスマホを取った。

「アキトから電話だ」

アオの髪を撫でながら、レイはそのままベッドの縁で通話を続ける。
こういう時にわざわざ席を外さないのは、やましいことが何もないというレイなりの誠意だ。
アオはぼんやりと、そんなことを思いながら背中に頬を押しつけた。

『——やっぱりそうか。かなり力が強い。本人の承諾が取れたら正式に調べてみる。また連絡する』

そう言って電話が終わる。

「レイ? 何かあったの?」
「ん? アオの心を奪って、紋章をつけた奴の正体が分かった」
「え? ぼ、僕に紋章? えっ? え?」

慌てるアオを見て、レイは少し意地悪そうに笑った。

「アオが、俺以外のヤツに心を許すなんて。……浮気者だな」
「ぼ、僕!? 浮気なんてしてないっ、してないよ! レイだけだよっ?」

必死になっているアオを、レイはやさしく撫でて息を落とす。

「分かってる。分かってるよ。今回はちょっと疲れた。今はアオを抱きしめたまま寝かせて」

ぽつりと言って、レイは再びアオを胸に抱き寄せた。
アオは何も言えなくなる。ただ、背中に回された腕のぬくもりと規則正しい寝息に包まれながら、そっと目を閉じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!? 契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。 “契約から本物へ―” 愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。 ※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。 ※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。 ※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。 ※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。 予めご了承ください。 ※更新日時等はXにてお知らせいたします

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

処理中です...