【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第56話 受け入れた?

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ソファに身を預け、香りに安らぐアオを横目に見る。彼が自ら頭を預けてくるまで、時間はかからなかった。

香りが作用しているのは事実だが、それだけではない。心をすり減らした獲物が寄りかかる先を、私は慎重に用意してきた。

「……可愛いですね」思わず口をついた言葉に、彼は小さく瞬きをしただけ。否定もせず、ただ身を委ねている。

面白い。実験したムルたちには即座に淫らな反応を引き出した香りに、アオは抵抗している。それなのに、私の「一条の香り」にはこうして素直に反応する。

「一度横になった方がいい」そう告げて彼を抱き上げると、アオは何も抵抗せず身を預けた。それなりに信用してくれている、ということか。

だが——この程度では足りない。彼が私に心から依存し、抗えなくなるまで。もっと強く、もっと深く、私なしでは生きられないように仕向けなければ。ムル・ナンバー7を手に入れるために。

トウヤ本人から、一条に随分かわいがってもらっていると連絡があった。調査部隊からも同じ報告を受けている。

一条はもう諦めたのか、それとも罠か。

一条を潰すよりも、神川アオ自身が絶望して一条から離れることを選ぶ方が近道だ。接触させるか。

「アオ君、今日は私が使っている会員制のラウンジに行きませんか?」
「ラウンジ?」
「気分転換にいいかと思いましたが、どうですか?」
「……じゃあ」

*---------------

ここはVIP専用ラウンジだ。柔らかな照明に包まれている。

その奥のソファにはレイとトウヤが座っていた。2人の距離感は、恋人以上の雰囲気を醸し出している。

「レイ、少し顔色悪いよ?」そう言ってトウヤは彼の頬に指先を添え、優しく撫でる。

その動作をしながら、視線だけをアオへ向け、にやりと笑った。

レイは眉ひとつ動かさず、ただ静かに資料に目を落とし続けていた。だが、それを拒絶する仕草はどこにもなかった。

「僕がそばにいるから、大丈夫」甘い声でそう囁くと、さらにレイの顎を軽く持ち上げ、唇を重ねるかのように顔を近づける。吐息が触れ合うほどの距離。

まるで「キスをする瞬間」を、アオに見せつけるかのように。

レイは抵抗しない。静かに彼を受け入れているように見える。——それだけで十分だった。アオの心臓が大きく脈打ち、胸の奥に鈍い痛みが広がる。

「っ……」見ていられない。けれど視線を逸らすことができない。

耐えきれず、アオは神宮寺の袖をぎゅっと掴んだ。
「……神宮寺さん、ここから……出たい」
かすれた声は、必死に逃げ場を求める子供のようだった。

神宮寺はゆっくりとアオを振り返る。その頬に指先をかけると、優しく微笑んだ。

「……アオ」甘く、低い声で名を呼ぶ。そして掴まれた袖ごと彼の手を取り、自分の側へと引き寄せた。アオは自分の所有だと誇示するように。

アオは抵抗せず、むしろ安堵するように神宮寺へ体を預けた。その仕草は他者から見れば「神宮寺に甘え、すがっている」ようにしか見えない。

トウヤはそれを見て、さらに勝ち誇った視線をアオへ送る。「見た? レイは僕のものだ」そう語るように、彼はわざとレイの肩に唇を寄せた。レイの表情は変わらない。
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