【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
60 / 68

第60話 見つけた

しおりを挟む
「アオへの香りの作用、まだ不十分だ」

神宮寺はさらに依存を深めさせるため、香りの強度を上げるよう指示した。ティーセットや空調に仕込まれた香りは日ごとに濃度を増し、アオを離れられなくする予定だった。しかし、アオはすぐには乱れを見せない。

それでも、アオから接触してくる機会は増えていた。頭を撫でると安心したように目を閉じ、撫でている最中にスヤスヤと寝息を立てることもある。その姿を見て、神宮寺は「心を許している証拠だ」と確信した。

「寝てた……ごめん」最近、アオは敬語を使わなくなっていた。

「眠いなら寝ていてもいいよ」そう優しく答えると、胸に顔をうずめて甘えてくる。

顎に手を添えて顔を近づけると、アオは唇を避け、代わりに首筋へキスを落とした。チュッ、チュッと湿ったリップ音が響く。

「誘っていますか?」と問いかけても、アオは答えずにキスを続けた。今日の濃度は効果があった——神宮寺はそう信じ込んだ。

(そろそろ、俺のものにしなければ……)

そう思い、アオの服に手を差し入れた瞬間——

ブーブーブーッ!

けたたましいブザー音が館内に鳴り響いた。

「なっ……なに?」アオが怯え、神宮寺にしがみつく。

神宮寺は素早く電話を取った。「もしもし、何があった!?」

電話口の研究員の声が切迫している。「急に館内のセキュリティシステムがダウンして、すべてのロックが解除されました!」

「どういうことだ!? なぜそんなことに——」

「実験対象者が逃げ出しました!」

その言葉に神宮寺は舌打ちし、アオの手を引いて研究室へ急いだ。

しかし、その場所に着いたとき、スタッフ全員が床にうずくまり動けなくなっていた。

「ど……どういうことだ……」戸惑う神宮寺。

そのとき、低く静かな声が響いた。

「やっと見つけた」

レイが姿を現した。瞳に宿るのは静かな怒り。

「どうしてここが!?」神宮寺が叫ぶ。

「アオ! こっちに来て!」リョクがアオの手を引いた。

「リョク!」

「俺の支配の力は広範囲じゃ長く持たない。ムルの子たちはカナメとアキトが外に出した。だから一緒に行こう!」

「アオ! 待て!」神宮寺の声が遠くで響く。

しかし、レイのムガルの力は絶大だった。リョクが支配で止めていた研究員たちは意識を失い、次々と倒れ伏す。その波は神宮寺にも及び、彼の視界はゆっくりと暗転していった。

*---------------

建物を抜け出した直後、震えながらもこちらへ歩み寄る人物がいた。

ムル335号と呼ばれていた青年だった。以前、研究所で助けようと香りを嗅がせた相手だ。

「ありがとう。おかげで僕の番と会えた」青年は安堵に満ちた声でそう言い、手にしていた黒のバングルをアオに差し出した。

「これ……返すよ」

「よかった……でも、あの後も辛かったでしょ? すぐに助け出せなくて、ごめん」

「……いいんだ。君が動いてくれたから、俺はまだここに立ててる」そう呟く青年の瞳には、もうかつての虚ろさはなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!? 契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。 “契約から本物へ―” 愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。 ※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。 ※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。 ※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。 ※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。 予めご了承ください。 ※更新日時等はXにてお知らせいたします

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

処理中です...