68 / 68
(完)第68話 選んだ道
しおりを挟む
久しぶりの会社。もちろんレイと一緒に。
レイは一足先にプライベートルームへ向かった。アキトに提出した退職届は処理されておらず、特別任務扱いで給与も支払われ続けていた。
「あれ?」
僕の代わりに高階さんが使っていたウォークインクローゼットは、ミーティングスペースに変わっていた。
「アオくんには言ってなかったね。改装したんだ。アオくん以外の人が使った場所は必要ないって、レイがそう言ってね」
「えっ」
「レイのウォークインクローゼットも、今はプライベートルームからしか入れなくしたよ」
「えっ、どうして?」
「もう、アオくんとレイ以外は使わないでしょ?だから、広くして二人の物を一緒に置けるようにしたんだ。安心して、アオくんのスーツや靴、時計は誰にも触らせず保管してあるよ。確認してきたら」
その言葉を聞き、アオはプライベートルームのドアを開けた。
「お帰り」
レイが両手を広げて待っていた。
──これをするために先に入ったんだ。そう思うと、アオは自然と笑顔になる。
「レイ、ただいま」
そう言って飛び込むように抱きついた。もう戻らないと思っていた温もりが、再び自分の傍にあることがただ嬉しかった。
顔を胸に埋めたまま、アオはふと尋ねた。
「そうだ、ウォークインクローゼット……少し変わったの?」
「見てみる?」
「うん」
レイに手を引かれて向かうと、そこには以前よりも広く整えられたクローゼットがあった。アオの物とレイの物が対になるように並べられている。
「あれ?スーツ増えてる?こんなに着れないよ」
「アオがいなくて寂しくて。戻ってきた時に困らないように、用意してたんだ」
レイは少し恥ずかしそうに答えた。
「時計も。全部ペアになってる」
「うん、変えた」
「アオ」
優しく呼ばれて振り向くと、レイの手にはペアリングが握られていた。
「もう離れない。ずっと一緒にいたい。愛してる」
その言葉と共に、レイは指輪をアオの左薬指にはめる。アオはもう「影」ではなかった。
嬉しさに涙がこぼれ、アオはレイに抱きついた。
「アオ……俺の番って、公表してもいい?」
アオはゆっくり頷き──それから小さく首を傾げた。
「あっ。でも大げさにはしないで。目立ちたくないから」
「わかった。アキトとキョウカの婚約発表の時に、俺に番がいるってだけ伝える。それでいい?」
「うん、それがいい」
「了解」
そう言って、レイはアオを抱き寄せ、深く、深く口づけを交わした。
二人の未来は、もう揺るがない。過去の恐怖も、孤独も、もうここにはない。ただ強く結ばれた絆と、穏やかな日々が待っている。
──愛する人と共に、歩んでいく。
それが、二人の選んだ未来だった。
レイは一足先にプライベートルームへ向かった。アキトに提出した退職届は処理されておらず、特別任務扱いで給与も支払われ続けていた。
「あれ?」
僕の代わりに高階さんが使っていたウォークインクローゼットは、ミーティングスペースに変わっていた。
「アオくんには言ってなかったね。改装したんだ。アオくん以外の人が使った場所は必要ないって、レイがそう言ってね」
「えっ」
「レイのウォークインクローゼットも、今はプライベートルームからしか入れなくしたよ」
「えっ、どうして?」
「もう、アオくんとレイ以外は使わないでしょ?だから、広くして二人の物を一緒に置けるようにしたんだ。安心して、アオくんのスーツや靴、時計は誰にも触らせず保管してあるよ。確認してきたら」
その言葉を聞き、アオはプライベートルームのドアを開けた。
「お帰り」
レイが両手を広げて待っていた。
──これをするために先に入ったんだ。そう思うと、アオは自然と笑顔になる。
「レイ、ただいま」
そう言って飛び込むように抱きついた。もう戻らないと思っていた温もりが、再び自分の傍にあることがただ嬉しかった。
顔を胸に埋めたまま、アオはふと尋ねた。
「そうだ、ウォークインクローゼット……少し変わったの?」
「見てみる?」
「うん」
レイに手を引かれて向かうと、そこには以前よりも広く整えられたクローゼットがあった。アオの物とレイの物が対になるように並べられている。
「あれ?スーツ増えてる?こんなに着れないよ」
「アオがいなくて寂しくて。戻ってきた時に困らないように、用意してたんだ」
レイは少し恥ずかしそうに答えた。
「時計も。全部ペアになってる」
「うん、変えた」
「アオ」
優しく呼ばれて振り向くと、レイの手にはペアリングが握られていた。
「もう離れない。ずっと一緒にいたい。愛してる」
その言葉と共に、レイは指輪をアオの左薬指にはめる。アオはもう「影」ではなかった。
嬉しさに涙がこぼれ、アオはレイに抱きついた。
「アオ……俺の番って、公表してもいい?」
アオはゆっくり頷き──それから小さく首を傾げた。
「あっ。でも大げさにはしないで。目立ちたくないから」
「わかった。アキトとキョウカの婚約発表の時に、俺に番がいるってだけ伝える。それでいい?」
「うん、それがいい」
「了解」
そう言って、レイはアオを抱き寄せ、深く、深く口づけを交わした。
二人の未来は、もう揺るがない。過去の恐怖も、孤独も、もうここにはない。ただ強く結ばれた絆と、穏やかな日々が待っている。
──愛する人と共に、歩んでいく。
それが、二人の選んだ未来だった。
14
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
【完結】獣王の番
なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。
虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。
しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。
やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」
拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。
冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!
【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜
小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!?
契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。
“契約から本物へ―”
愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。
※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。
※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。
※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。
※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。
予めご了承ください。
※更新日時等はXにてお知らせいたします
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後の最後の答え合わせまでわからなくて、そう言うこと!って、最後になった。面白かった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
途中どうなるのかなとはらはらしましたが、そういうことだったのかと本当普通に騙されたというか、話の持っていき方がすごいなと思いました!今後の皆の行く末も気になりますが、とりあえず皆ハッピーでらぶらぶで良かったです!!
はー様
感想ありがとうございます。
そして、最後まで読んでいただきとても嬉しく思います。
今後の行く末も徐々に書いて行こうと思っていますので、また読んで頂けると嬉しく思います。