【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

文字の大きさ
77 / 385
第二章 誘拐編

ヘリオスを無事護れたから気にしなーい!

しおりを挟む
 わたし達の席のそばに立ったまま静止したアポロニウス王子は、スバルの咳払いで再起動したらしい。

「当然だ。私はそれだけの教育を受けてきている。だが賞賛の言葉は受け取っておこう。だからと言って散漫な態度が許されるわけではないからな。気を付けるように。」

 つんと顎をそらしながら若干頬を染めて視線を反らした王子は、そのまま何事もなかったかのように立ち去って行った。

「さすが王子、大人びたしっかりした話し方と、立ち居振舞いねぇ。微笑ましいわー。」

 ほぅと、溜め息をつくと、何故か両脇からワンテンポ遅れて溜め息が聞こえる。

「今の王子の反応を見た感想がそれなんて。やっぱり、セレネは天然だよ。そして天然の攻撃力も併せ持っているよね。」
人工じんこう女豹めひょうが、どこまで太刀打ちできるか見物ですわね。」

 スバルとバネッタが勝手に理解しあって頷き合っているけれど、わたしには何のことだか訳が分からない。非常に気になるところではあるけれど、今のわたしにはそれを追求している時間はない。続く在校生代表の挨拶を行うため足取り軽く壇上への階段を上がる。
 そう、なんとわたしは今年度生徒会会長となってしまったのだ!夜会の行われた頃には全くそんな気配はなかった。それなのに、元からの親友で、自らの武功で騎士爵を得ているスバルと、そしてこれまでわたしと敵対していると大多数が見ていた最大派閥の最高権力者であるニスィアン伯爵令嬢の2名が、揃ってわたしを推挙したのだから教員たちが否やを言う訳もなく、さらにドッジボール令息とそのファンの令嬢もわたしを推すまとまった派閥となり、大勢の人たちの応援のお陰で当選するに至ったのだ。ちなみに対抗馬はいなかったので、そのお陰での当選でしかないとわたしは思っている。まぁ、運も実力のうちっていうからね!ラッキーだったわ。

「はじめまして!新入生、転入生の皆様。わたしは今期生徒会会長を務めさせていただくこととなりました、セレネ・バンブリアです。」

 よし!噛まずに言えたっ!と、内心でガッツポーズをとりながら、興味津々といった様子でわたしに顔を向けている、ホールにずらりと並んだ新入生、在校生からの視線の圧を紛らわせるために、深く息を吸う。すると、微かにざわりとする嫌悪感が背筋を這う。
 この感じは特別な色の魔力よね?大神殿主ミワロマイレの黄色じゃないし、オルフェンズの銀色でもない。いったい誰?

赫々かくかくとした桜花を映した光が、かぐや姫の愛の如く地表をあたため、 葉桜が萌えいづる季節がめぐり来た今日の日を、わたし達も待ち望んでおりました。」

 話しながら視線を巡らせると、わたしを憎々しげに睨みつけるユリアン・レパードの周囲に、ごく薄い紫の魔力が漂って居ることに気付いた。薄紫色はなぜか令嬢を避けて、ユリアンの近くに居る令息たちに見境なく漂ってゆく。更に見ていると、薄紫の魔力が届いた令息は、何かに気付いたようにユリアンの方を振り返り、ある者は頬を染め、ある者は何かにはっと気付いたように目をしばたたかせて、彼女を凝視する。

「新入生、転入生のみなさま、ご入学おめでとうございます。」

 令息たちの反応は様々だけれど、そこに共通するのは「困惑」でもなければ、わたしが感じたような「嫌悪」でもなく、程度の差はあるようだけれど紛れもない「好意」だ。

「在校生を代表して、歓迎の気持ちをお伝えしたいと思います。」

 そしてついに薄紫色は、ユリアンと同級であるため近くに座っているヘリオスにまで届いてしまった。彼も他の令息同様に何かに気付いたようにハッと反応して周囲を見回し、ある一点を見詰めて静止する。

「これからの4年間、悔いのない学園生活を送れるように頑張ってください。」

 ヘリオスの視線が向かう先は、もちろんユリアンだ。
 うん、さっき確かに、恋に向かって一生懸命な姿は、がんばれーって温かい気持ちになる・とは言ったよ?けど、何だろうこの釈然としない感じは。

「みなさまのご活躍を期待しています。」

 こうして壇上から観察していると、良く分かる。ユリアンは周囲の異性に薄紫色の魔力秋波を送って好意を抱かせる力を持っているみたいね。けど、その魔力をわたしの大切な弟に振るうような活躍は期待しないぞ!?弟の自由恋愛を妨げる気はないけれど、魔力で篭絡されるのを黙って見守る理由などない!
 挨拶のための張り付けた笑顔が僅かに崩れて、ぐぐっと眉間に皺が寄って行くのが感じ取れた。生徒会長の第一印象を決める初舞台なのに不味いなと思いながらも、沸き上がる嫌悪感はどうしようもない。

「以上をもって、歓迎の言葉と―――。」

「いたします。」で結んでわたしの生徒会長初仕事である挨拶は、問題なく終わるはずだった。
 けど‥‥。

「したかったのですが、どうしてもみなさまにお伝えしたいことが増えましたので、アポロニウス王子のお言葉をお借りして更に一言追加させてくださいね。自己研鑽に勤め、貴族たる誇りと信念を貫く心の種は、すでにみなさんの中で育まれ始めているでしょう。わたしはみなさんの限りない可能性を信じています。」

 話が長くなってしまうのは申し訳ないので、謝罪の気持ちを込めてにこりと笑んで、小首をこてりと傾げる。すると、ヘリオスがぎょっと眉を吊り上げてこちらに視線を向けるのが見えた。パクパク動く口は間違いなく「お姉さま!?」と言っているのだろう。けど、わたしが生徒会長を務める任期に、また気持ちを操作されるような事件を起こさせる気はさらさらない!

「それなのに生徒会長たるわたしの言葉の最中に、もし他に気になる何かがあるのならそれは気の迷いでしかないでしょう。周囲に流されるものではなく、自分自身の心を強く持ち高めることのできる素晴らしいあなた自身をもう一度見つめなおしてください。生徒会長セレネ・バンブリアは、学園生たるみなさまを心から大切に想っています!どうです?わたししか目に入らないでしょう?これから、一緒に頑張りましょうね!」

 憎々しげな視線を送ってくるユリアンに対抗する意思を込めて、人差し指を向け、ぱちんとウインクすると背筋に感じていたざわりとする嫌悪感はすっと消え去った。かわりにユリアンの表情は更に険しく歪んだけど、ヘリオスを無事護れたから気にしなーい!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...