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第12話 解き放たれた災厄(前編)
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第12話 解き放たれた災厄(前編)
「うむ、よろしい。基本の動きはそれでいい。だが修練というものはずっと続いていくものだ。
これから教える型にその動きは組み込まれていく。
型は神威心闘流の動きを体にしみこませるものであると同時に可動範囲や稼働効率を良好に保つための準備運動でもある。
これから第一の型を教えるのでまずはそれを身につけるのだ」
そう言われたが俺はちょっと首をひねる。型は六個すべてを完ぺきに覚えているのだ。叡智さんが。まあ、あれも俺ではあるのだが。
「うむ、リウ君は既に型を覚えている。だが覚えていることと理解していることは別のことだ。さらに理解していることと感得していることも別のことなのだ。
一つ一つの動きに意味があり、この意味を理解して型を舞うことでその型には神が入る。
そうなって初めて神威心闘流の型ということができるのだ」
なるほど。奥が深いな。
俺はこくこくと頷いた。
この日はみっちり(6歳レベル)と型を教わり、そろって朝ご飯に向かう。
俺が武術を教わっているお礼にとお母ちゃんはアーマデウスさんを朝食に誘うようになった。とはいってもテンテン姉とフゼット姉も一緒だから楽しい食卓である。
アーマデウスさんは修業の時はきっちりとした稽古着を着ていて、食事のときなどは着替えて背広になっている。
いつも背筋を伸ばして緩むということがない。かといって力んでいるということもない。
自然体でそこにあるのだ。まるで大地に根を張った木のように。
これか達人という存在か…と感心する。
食事が終わるとテンテン姉たちは今日のローテーションに従って件の塚の監視に出かけていくのだが、この日はちょっと違った。増援部隊の先ぶれが着いたのだ。
「アーマデウスさま、お手数をかけました。今日の午後には本体が到着する予定です。本体が到着すれば封印の強化もあっという間に終わりましょう。
テンテンもよくやったな」
「いやあ、親父殿に褒められるなんて槍でも降るんじゃないかです?」
先ぶれとしてやってきたのはテンテン姉のお父さんだったらしい。
名前はニニララさん。
この人もなかなかに達人で雪の上を騎獣よりもずっと早く走るんだそうだ。
まあ、騎獣がどのぐらい早いのかわからんのだが。 え? 種類がいっぱいあるからピンキリ? 本体がいろいろ連れている?
そいつは楽しみだ。
そんな知らせが届いてみんながほっとした。
まあ、達人連中はそんなことないんだけど未熟な人は油断が出る。
それがとんでもない事態を引き起こしてしまったのだ。
◇・◇・◇・◇
あの日からクラシビア少年は封印塚に近づく機会をうかがっていた。
まあ、封印塚というのは事情を知っているものの認識で子供たちの感覚ではその後ろにすごいものがあるに違いないというぐらいの認識でいる。
それは子供の好奇心であったろうし、同時に俺を見返してやりたいという思いであったろう。
それ自体は悪くない。
やり方さえ間違わなければ正しい心働きというものだ。
そして冒険者のみんなはそれぞれに実力はあると思うのだが、性格的に問題があるものも多い。というか男はダメな感じだ。
僧侶のアベンチュリンは機械マニアだし、剣士のギールスは集中力が低くて同じことを続けているとたるみが出る。
この村で件の封印塚が見つかってから連日の見回りと見張り、ちょっとぐらい抜けてもいいだろうぐらいで用を足しに行くついでにしばらく煙草をふかしてきたりしていたようだ。ひどいときには寒さ除けでちょっと一杯。
取り巻きの少年が接近できたのはそんな時だったのだ。
そんな性格だからもう少しで本体が到着。この苦行(本人的に)から解放される。となったときに気のゆるみが出るのは…性格的に当然だったのかもしれない。
テンテン姉などはもう少しだから気を引き締めてという感じだったのでどんな言い訳もできないだろう。
その日ギールスさんはどうせなら景色のいいところで弁当でも使おうとその場を離れ。そこにクラ君がやってきてしまった。
「うーん、こいつかあ、確かに気持ち悪いな。でもなかなかきれいじゃん」
彼にはこの石からというかその向こうの何かからおぞけを感じるような感性は備わっていなかった。
それに石に刻まれた模様は、精巧で、確かになにがしかの圧迫感を与えるのだがそれは見ようによっては精巧で美しくも見える。
しかも何度も何度も重ね塗りされた薬のせいで半透明の膜で覆われたような見た目は神秘的であったりもした。
「うーん、こいつはすごいものかもしれないな。こんな目印があるんだからこの奥のものはもっとすごいものかもしれない。
何とか動かせないかな…」
彼は木の棒を拾ってきて梃にするとその石を、封印の石を動かそうとし始めた。
「ふぬぬぬぬぬぬっ」
「ぬぐぐぐぐぐっ」
「こんちくしょう」
やっているうちに本来の目的を忘れて石を殴り始めたのはまあ、そういう性格だったとしか言えない話だ。
そして表面の膜は薬が乾燥して固まった者。
殴れば当然のようにひび割れる。
ピキッっと。
強力接着剤ならよかったんだが残念ながらでんぷん糊みたいなものだ。簡単に割れた。
そして具合が悪いことに糊がくっついていたところより石の内部の方がずっとはがれやすかった。
「こらー、何やってやがる!」
弁当を食って(食べてというほど上品ではない)尖らせた小枝で歯をシーハーさせながら帰ってきた剣士ギールスは子供が封印の石を殴っているのを見た。
慌てて駆け寄るが時すでに遅し。
一か所できた欠けはすぐに全体の罅になり、同時にその罅からどす黒い瘴気が吹きだした。
「逃げろクソガキ、すぐに村にいるアーマデウス様に知らせるんだ!」
剣士は容赦なくクラシビアを放り投げ、アワアワしている彼に石を投げつけて追い払う。
乱暴なやり方だがそうしなければ彼は動かなかった、いや、動けなかっただろう。
そして同時に警笛を思いきり吹き鳴らした。
ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!
吹き鳴らしながら距離を取って警戒を。そう考える。
だが無駄だった。
封印石がバカッと割れたときそこから高速で飛び出してきた白い何かは信じられないスピードで剣士を跳ね飛ばし、彼の意識はそこで途絶えた。
最後にもう少し真面目に…とか思ったのかもしれないが、後悔は先に立たないから後悔なのだ。
そして災厄は解き放たれた。
「うむ、よろしい。基本の動きはそれでいい。だが修練というものはずっと続いていくものだ。
これから教える型にその動きは組み込まれていく。
型は神威心闘流の動きを体にしみこませるものであると同時に可動範囲や稼働効率を良好に保つための準備運動でもある。
これから第一の型を教えるのでまずはそれを身につけるのだ」
そう言われたが俺はちょっと首をひねる。型は六個すべてを完ぺきに覚えているのだ。叡智さんが。まあ、あれも俺ではあるのだが。
「うむ、リウ君は既に型を覚えている。だが覚えていることと理解していることは別のことだ。さらに理解していることと感得していることも別のことなのだ。
一つ一つの動きに意味があり、この意味を理解して型を舞うことでその型には神が入る。
そうなって初めて神威心闘流の型ということができるのだ」
なるほど。奥が深いな。
俺はこくこくと頷いた。
この日はみっちり(6歳レベル)と型を教わり、そろって朝ご飯に向かう。
俺が武術を教わっているお礼にとお母ちゃんはアーマデウスさんを朝食に誘うようになった。とはいってもテンテン姉とフゼット姉も一緒だから楽しい食卓である。
アーマデウスさんは修業の時はきっちりとした稽古着を着ていて、食事のときなどは着替えて背広になっている。
いつも背筋を伸ばして緩むということがない。かといって力んでいるということもない。
自然体でそこにあるのだ。まるで大地に根を張った木のように。
これか達人という存在か…と感心する。
食事が終わるとテンテン姉たちは今日のローテーションに従って件の塚の監視に出かけていくのだが、この日はちょっと違った。増援部隊の先ぶれが着いたのだ。
「アーマデウスさま、お手数をかけました。今日の午後には本体が到着する予定です。本体が到着すれば封印の強化もあっという間に終わりましょう。
テンテンもよくやったな」
「いやあ、親父殿に褒められるなんて槍でも降るんじゃないかです?」
先ぶれとしてやってきたのはテンテン姉のお父さんだったらしい。
名前はニニララさん。
この人もなかなかに達人で雪の上を騎獣よりもずっと早く走るんだそうだ。
まあ、騎獣がどのぐらい早いのかわからんのだが。 え? 種類がいっぱいあるからピンキリ? 本体がいろいろ連れている?
そいつは楽しみだ。
そんな知らせが届いてみんながほっとした。
まあ、達人連中はそんなことないんだけど未熟な人は油断が出る。
それがとんでもない事態を引き起こしてしまったのだ。
◇・◇・◇・◇
あの日からクラシビア少年は封印塚に近づく機会をうかがっていた。
まあ、封印塚というのは事情を知っているものの認識で子供たちの感覚ではその後ろにすごいものがあるに違いないというぐらいの認識でいる。
それは子供の好奇心であったろうし、同時に俺を見返してやりたいという思いであったろう。
それ自体は悪くない。
やり方さえ間違わなければ正しい心働きというものだ。
そして冒険者のみんなはそれぞれに実力はあると思うのだが、性格的に問題があるものも多い。というか男はダメな感じだ。
僧侶のアベンチュリンは機械マニアだし、剣士のギールスは集中力が低くて同じことを続けているとたるみが出る。
この村で件の封印塚が見つかってから連日の見回りと見張り、ちょっとぐらい抜けてもいいだろうぐらいで用を足しに行くついでにしばらく煙草をふかしてきたりしていたようだ。ひどいときには寒さ除けでちょっと一杯。
取り巻きの少年が接近できたのはそんな時だったのだ。
そんな性格だからもう少しで本体が到着。この苦行(本人的に)から解放される。となったときに気のゆるみが出るのは…性格的に当然だったのかもしれない。
テンテン姉などはもう少しだから気を引き締めてという感じだったのでどんな言い訳もできないだろう。
その日ギールスさんはどうせなら景色のいいところで弁当でも使おうとその場を離れ。そこにクラ君がやってきてしまった。
「うーん、こいつかあ、確かに気持ち悪いな。でもなかなかきれいじゃん」
彼にはこの石からというかその向こうの何かからおぞけを感じるような感性は備わっていなかった。
それに石に刻まれた模様は、精巧で、確かになにがしかの圧迫感を与えるのだがそれは見ようによっては精巧で美しくも見える。
しかも何度も何度も重ね塗りされた薬のせいで半透明の膜で覆われたような見た目は神秘的であったりもした。
「うーん、こいつはすごいものかもしれないな。こんな目印があるんだからこの奥のものはもっとすごいものかもしれない。
何とか動かせないかな…」
彼は木の棒を拾ってきて梃にするとその石を、封印の石を動かそうとし始めた。
「ふぬぬぬぬぬぬっ」
「ぬぐぐぐぐぐっ」
「こんちくしょう」
やっているうちに本来の目的を忘れて石を殴り始めたのはまあ、そういう性格だったとしか言えない話だ。
そして表面の膜は薬が乾燥して固まった者。
殴れば当然のようにひび割れる。
ピキッっと。
強力接着剤ならよかったんだが残念ながらでんぷん糊みたいなものだ。簡単に割れた。
そして具合が悪いことに糊がくっついていたところより石の内部の方がずっとはがれやすかった。
「こらー、何やってやがる!」
弁当を食って(食べてというほど上品ではない)尖らせた小枝で歯をシーハーさせながら帰ってきた剣士ギールスは子供が封印の石を殴っているのを見た。
慌てて駆け寄るが時すでに遅し。
一か所できた欠けはすぐに全体の罅になり、同時にその罅からどす黒い瘴気が吹きだした。
「逃げろクソガキ、すぐに村にいるアーマデウス様に知らせるんだ!」
剣士は容赦なくクラシビアを放り投げ、アワアワしている彼に石を投げつけて追い払う。
乱暴なやり方だがそうしなければ彼は動かなかった、いや、動けなかっただろう。
そして同時に警笛を思いきり吹き鳴らした。
ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!
吹き鳴らしながら距離を取って警戒を。そう考える。
だが無駄だった。
封印石がバカッと割れたときそこから高速で飛び出してきた白い何かは信じられないスピードで剣士を跳ね飛ばし、彼の意識はそこで途絶えた。
最後にもう少し真面目に…とか思ったのかもしれないが、後悔は先に立たないから後悔なのだ。
そして災厄は解き放たれた。
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