転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ

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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常

第25話 状況が少しわかった。さあ、山狩りだーっ

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第25話 状況が少しわかった。さあ、山狩りだーっ


 じいちゃんが広げた地図はこの国の地図だった。
 航空写真など無い世界のはずなのにかなり高度な地図と言っていいと思う。

「すごいねどうやって作ったんだろう」

「おう、地図職人なんて職号クラスコードもあるのさ、そいつらが歩き回ると頭の中に明確な地図が浮かび上がるらしくってよ。
 それを紙に起こしたのがこいつってわけさ」

「へえー、いろいろなクラスがあるんだね…」

「クラスってのは向き不向きと本人の努力の延長線上にあるもんだからな、こればっかりは神様に感謝だぜ」

《えへんですよー》

 やっぱり親をほめられるとしーぽんもうれしいらしい。

 さて、その地図を見る。
 街とかその周辺の地図というのならわかるけど、今見ているこの地図は国全体の地図だ。
 それがここまでしっかり書かれているとちょっとびっくりする。

 僕の村も載ってるし、今いるマシス公爵領もちゃんと載っている。
 僕にも叡智さんの司るオートマッピングの機能があるから、今まで通った主要な町の位置関係は把握できるんだ。

 それと照らし合わせても地図との齟齬は感じられない。
 つまりこの地図は地図職人の持つ『スキル』で作られていて、そのスキルは僕のマッピング能力と同じか、地図の広さを考えると上かもしれない。ということだね。

《だとしても、国全体を地図に起こすのは大仕事ですよー》 

 うん。全く同感だよ。この世界、飛行機とか無いしね。

 この地図を読み解くと、僕の住んでいた村は国の中心からかなり北西方向にあるようだ。そしてかなり北寄りだ。
 そこからずっと東南東方向に驀進すると、今いるアクアムンダムに着くわけだね。
 そしてこの街からちょっと西に、そしてずっと南に行くと王都がある。

 地図には『王都・セントロム』と記されているよ。

 そして、この町の北に森がえがかれている。今回の騒動の森だ。
 かなり大きくて、北側は国の外まで伸びていて、その先は地図がない。つまりそこまで調べた人がいないということなんだと思う。

 この森は西の方にも広がっていて、森の西側の下の方に一つの大きな町があるんだ。
 ウェザレルと記されているね。

 森に面した町…といってもここ《アクアムンダム》みたいに森に隣接しているというわけではなくて、少し離れているんだけどね。
 もうちょっと北だったらここに来るときに寄ってきたんじゃないかな?
 という位置関係だね。
 そしてこの町が今回の話のかなめ見たい。

「どうやら勇者はこの町に配置されたらしいな」

 じいちゃんがふむふむと納得しながらそうつぶやいた。

「ここに何かあるんですか?」

「おうよ、北の森がおかしいってことは、この街の北の森もおかしいってことさ、つながってんだからよ、
 クエルの報告によると、森から押し出された魔物が結構頻繁にウェザレルの町に押し寄せているらしいな。
 ウェザレル伯爵ってのは、あのリュメルクローテ公爵の腰ぎんちゃくの一人なんだが、まあ相応に小物でな。はっきり言って頼りにならない。だがこの辺りに住んでいるのも王国の民だ。
 それにこの伯爵家は王都を守る防波堤の役目を担っていた家だしな。
 本来は自力で解決せにゃならねえんだが、今代はまあ、撃っても響かない奴だからよ、できることっていやぁ、勇者にひっついて栄達を計ろうって程度さ。
 王国としてもいい口実だったんだろうぜ」

 ふむふむ・・・・・・・・・・・・?

「つまりそのなんちゃら言う勇者君にこの問題を解決させようっていうこと?
 勇者って10歳って言わなかった?
 無理じゃね?」

「まあ、無理だろうな。
 だけど現状で勇者の力に期待しているわけじゃねえだろ。あいつは竜爺のせがれだけあって、抜け目がないからよ。
 勇者にかこつけて、リュメルクローテ公爵の戦力を使おうって腹なんだろうぜ。
 貴族なら自分の軍隊を持っているのが普通だしよ。
 しかも公爵は勇者の親衛隊を作るんだってんで、やたら高価な防具をそろえたり、いい武器を買い込んだりしてやがる。まあ、貴族の義務を果たさせるにはいい機会ってことだろう」

 つまり他人の財布で仕事をしようと?

「まあ、せっかくの勇者親衛隊だから実戦に出る機会をくれてやろうってことだ。
 勇者が軍隊を率いてはならんという法はない。
 それで大活躍した勇者も過去にはいたわけだしな。
 どちらにせよ勇者は鍛えなきゃいけねえ。
 そして公爵が勇者軍、勇者親衛隊を編成するっていうなら、それごと鍛えてやればいい。どのみち勇者と勇者軍が役立たずでは将来が不安だ。
 でも予言の話とかあるしよ、簡単に勇者を切り離して万々歳とはいかねえ。できることはやらせてみねえとな」

 ふむふむ、思っていたよりもずっと緩い措置というか、現実的な話だよね。
 甘くね? と思わなくもないけど、じゃあどうするの? どうしていいかなんてわからんし、そう考えるとシビアと言えるのかな? ここら辺が年の功ってやつなのかもしれないね。

「でな、ウェザレルの北にある森はこの町のすぐ外にある森とつながっているわけだ。
 向うで大々的に討伐作戦なんかやると、こっちに影響が出ないとも限らない。
 それでクエルのやつが状況説明と援軍として送られてきたわけだな」

 あー、つまり森の反対側で大規模な討伐がされると魔物がこっちにながれてくるかも? 援軍送るからよろしくね。ってこと?
 クエルさん一人だけ?

「いや、クエルの弟子の魔導士たちが同行しているぞ。
 前衛はなしだ。
 ここら辺がな、クエルがゆがんだ理由かねえ」

 じいちゃんがしみじみ口にする。じいちゃんの推測交じりの話なんだけど、これがちょっと面白い話でね。

 魔法使いと戦士職っていうのはお互い補い合うような関係にあるわけだよね。
 魔法を撃つ間、魔法使いを守ってくれる存在ものが必要なのさ。
 だけどじいちゃんの弟子たちは『魔法を撃つ時間は殴り合って稼げばいい』という変態ぞろい。

 一方、ほかの宮廷魔術師たちは、自分で身も守れないくせに守ってくれる人を『ろくに魔法も使えない』と馬鹿にしているわけで、これはもう図に乗っているとか、おごっているとか、そう考えざるを得ない。

 クエルさんとは話が合わなさそうなんだけど、クエルさんは本気で前衛を必要としていない。

 たぶん彼らは口をそろえて『魔法が使えないやつは役立たずだ』と、こう言うわけなんだよね。
 だけどクエルさんと、彼の間には温度差というか、認識の食い違いがあって、でも表面上は話が噛み合ってしまう。

 どうもそういう状況らしい。

「クエルもまだ若いからよ、魔法だけじゃどうにもならないことが、世の中にはいくらでもあってよ、それを克服するのは魔法じゃなくて、知恵とか機転とかよ、そういうものを持ってるかどうかだってのが、まだ実感としてわからないんだろうな。
 こいつがわかるようになりゃ、一人前の魔導『師』ってやつなんだがなあ…」

 じいちゃんはタバコをふかしながら、サングラスの下で遠いどこかを見ているように見えた。

「だから無理やりにでも仕事させようってこと?」

「そういうことだな、勇者と勇者軍はどちらにせよ育成しなくちゃいけねえ、国の将来にかかわるからよ。だからこいつは勇者をどう育てるのか、リュメルクローテ公爵をどう扱うのかの試金石ということだ」

 まあ、そうだね、勇者がしっかりしてくれないと僕ものんびりできないから。

 ◇・◇・◇・◇

 とはいえここでの仕事はあるわけで、翌日、僕たちはさっそく冒険者たちとの協力体制の構築に取りかかったのさ。

 こと戦闘力に関しては、じいちゃんの弟子とじいちゃんにしごかれまくった領地軍の方がずっと高い。
 だけど森歩きや、異変の察知。そして危険に対峙した時に生き残る底力は冒険者の方が上だ。と、じいちゃんは考えているようだった。

 ならば無理やり一緒に行動させるのはあまりプラスにならない。

 じいちゃんと冒険者ギルドが考えたのは、まず冒険者が周辺(近場)を探索し、状況が把握されてからそこに領地軍が陣地を築く。
 そしてそこを基点にすぐ逃げ帰ることのできる範囲で冒険者がまた周辺探査を行ない。そして領地軍が新たに探査された領域に陣地を押し上げる。

 この方法で大規模な山狩りを行うというのがじいちゃんたちの計画だった。

 前線に出るのはベテランの冒険者達だけど、ほかの未熟な冒険者たちにも伝令や荷物の運搬などで仕事はいっぱいある。
 冒険者たちは今が書き入れ時だと色めきたっているのだった。

「すごい活気だね」

 そしてギルドは人また人。

「おうよ、報酬は大盤振る舞いだからな。
 領主なんてのはこういう時のために税金取って金をため込んでいるんだからよ」

 うむ、正しい金の使い方だと思う。

「まあ、そういう領主ばかりだと助かるんですがね、相変わらず元気そうで何よりです、師匠。夕べだって徹夜のはずなのに」

「おお、クラウス。
 リウ、こいつはここのギルドマスターだ。
 ちっと鍛え方が足りない感じがあるが、まあ、頼りになる」

 クラウス・ベルフォートという人らしい。
 じいちゃんのお弟子にしてはかなりスマート。中年の眼鏡イケオジ。

「相変わらず口が悪いですねえ。向き不向きですよ。私は事務しごとの方が得意なんです。
 さて、君がリウ君か。アーマデウスが結婚したと聞いた時にはびっくりしたよ、あの朴念仁に女性を口説くような甲斐性があったとは…
 青天の霹靂かと思った」

 うん、正直な人だ。
 確かに父さんは女性に声をかけるとかできるような人ではないと思う。
 言われてみるとよくくっついたな。あの二人。

「あー、それはおれも思ったぜ。あれは今はやりの真実の愛とかいうやつだな。
 自然な流れでくっつくべくしてくっついた。
 はたから見ていてそうとしか思えなかったぜ」

「ほう、面白いですね。
 巷では燃え上がるような恋を『真実の愛』などといってもてはやす傾向があるんですが、私に言わせればあんなのはただ熱に浮かされているだけですね。
 真実の愛というのは…」

 クラウスさん熱弁。

 じいちゃんがこっそり教えてくれた。クラウスさんはものすごい愛妻家なんだって。
 貴族のお嬢様とのラブロマンスで、彼こそ真実の愛の流行のパイオニアなんだってさ。
 脚色で変なのがはやるのが面白くないらしい。

 うん、頑張れ!
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