転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ

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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常

第32話 スィームルグ(前)

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第32話 スィームルグ(前)


 それは、気配を消していたとか、見えなくなっていたとか、そういうことではなく、単純に僕たちの知覚範囲外からカッ飛んできたんだと思う。

 あまりにも早かったのでいきなり現れたように見えたんだ。
 そして、僕が気がついた時にはすでにその攻撃は到達していた。

 ドカーン!
 ガーン!
 ガーン
 ーン

 って感じで、何かが飛んできて、周辺にあった木とか、マンティコアの死体とかを薙ぎ払った。

 次の瞬間、映像でそれを見ていた僕たちのところにも、風とか、飛ばされてきた小石などがやってきて、爺ちゃんが作った遠見魔法がノイズにかき消されて消えてしまった。

「こいつはいけねえ!」

 爺ちゃんが怪獣の背中でそう叫ぶと、飛び降りて一目散に駆け出した。

 衝撃が飛んできた瞬間、背中にさっと隠れていたんだけどね、全く年寄りの動きじゃない素早さだ。
 そしてまた一人で走って行ってしまった。

『多分自分で何とかするつもりなんだな』

《しかし危ないですよー。さすがドラゴンですよー。あの攻撃はソニックブームですよー》

 しーぽんが言うには、スィームルグは超音速、それも多分とんでもないレベルの超音速で接近してきて、それによって発生したソニックブームを、どうやってか操って地上に叩き付けたらしい。

 なんかこう、すごいエネルギーを身に纏って飛び回り、相手に突っ込むみたいにそれを叩き付ける攻撃があったような。
 あのプラモデル好きだったんだよね。
 ただクローズアップされるのが赤いのばかりで、白とか黄色とかはあんまり商品化されなかったなあ。
 実は僕は黄色が好きだったのだ。特に前半タイプ。

《リウ太、急ぐですよー》

 むむっ、つれない。

 だが、確かにそのとおりだ。
 僕は怪獣を進ませて爺ちゃんの後を追いかける。
 爺ちゃんが一人で飛び出したのは僕を戦闘に参加させるつもりがないからだと思う。

 僕のことを心配しているんだね。

 だけど現状で一番大丈夫なのは僕だと思う。やはり僕が行かないといけない。
 僕は森の木々をなぎ倒し、戦場へと足をすすめた。

《後ろから大怪獣ですよー》
 
 まあ多分そう見えるよね。
 いやそんな余裕もないか?
 誰も気が付いてないよ。

「くそっ、当たらない、当たらない」
「早すぎるんだ」
「詠唱が間に合わないわ」

 若い(一応)魔導士達はパニック状態だった。
 スィームルグに対して彼らは何一つ有効な手を持っていないように見えた。

 彼らをフォローしているのが爺ちゃんとクエルさんだ。

「ばか者、高速で飛び回る的《マト》にのんびり詠唱など間に合うか!」

 クエルさんの言うとおり、スィームルグの機動は早く、狙いを付けて詠唱をしても詠唱が終わる頃には魔法の効果範囲の外に移動している。
 そもそも高速移動をする目標に、予備動作の長い魔法はほとんど意味がないように見える。

 追尾するような魔法もあるみたいだけど、全く追いつけてない。

 でもクエルさんは、さすが経験豊富というか、呪文の詠唱を終え、魔法が発動する直前の状態で待機して、スィームルグが突っ込んできたタイミングで魔法をぶつけることに成功していた。

 だが…

 パンっ!

 クエルさんが放ったのは、多分強力な火炎魔法だったと思う。

 無理に集中したりすることなく自然体で詠唱を実行し、しかもその詠唱も強化された僕の耳に届くこともないほど密やかにだ。
 なるほど確かにこういう魔法使いなら、なかなか手ごわいのだろうと思わせる。

 スィームルグには効果がなかったけどね。

《ふおおおっ、衝撃波を身に纏っているですよ。それで魔法をはじいたですよー》

 あの乾いた音は、クエルさんの魔法が消し飛んだ音だったのだ。

「くっ、さすが小さいながらドラゴンということか!」

「やれやれ、めんどくせえぜ」

 ここで爺ちゃんの魔法の詠唱が終わった。

 爺ちゃんの魔法は土系統の上級魔法。ロックキャノンという魔法だ。残念ながらこれも詠唱は聞こえなかったんだよね。
 この世界の魔法の詠唱って、なんか中二っぽくってかっこいいんだよ。うん。

 まあ、それはさておき、これはでっかい岩を作り出し、それを目標に向かって撃ち出すという魔法。
 ストーンショットと違うのはまず岩の大きさだね。

 効果としては大きな岩を投石機でたたきつけるような魔法なんだよね。

 ただこんなところで投石魔法(こういうとショボく聞こえる)なんて役に立つのだろうか?

 一瞬そう思ったけど、さすが我らが爺ちゃん。作り出された岩を打ち出したりせずに少し待機させる。空中に浮かせた状態で少し位置を変えるぐらいはできるみたいだ。
 そしていくつかの岩が配置されたのはスィームルグの進路上だった。 
 進路上でふらふら揺れる。

 今度は『ドカーンっ!』と、音が響いた。

「高速飛行しているとふわふわ漂う障害物を回避するのは難しいだろう」

 にやりと笑って爺ちゃんが言った。

 そして爺ちゃんの言葉どおりだった。スィームルグは爺ちゃんの作り出したふらふら漂う岩をよけきれずにぶつかってしまっていたんだ。

 もちろん身に纏っている衝撃波で多少は岩を砕いて見せたけど、粉々にすることまではできずに岩に突っ込んでしまった。

 クルオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

 さすがに痛かったらしい。
 そして頭に来たらしい。

 スィームルグはある程度高度をとり、そこでホバリングに移った。
 といっても悠長な話ではなく、その場で仰け反るように大きく息を吸い込むような動作をする。

『やばい! ブレスだ!!』

 俺は躊躇わずに飛び出した。
 なぜって、当然ブレスの目標には爺ちゃんたちが入っているからだ。
 何か防御手段があるのかもしれないけどさすがにドラゴンブレスはまずいだろう。

 僕の操る怪獣は意外と速く『ずどどどどどっ』と弧を描くように彼らの前に飛び出した。
 間髪入れずにスィームルグのブレスが打ち出される。

 こいつのブレスは『ストームブレス』だ。
 ちゃんと予習しました。

 平たくいうと突風です。

 でも風と侮ることなかれ。
 風速50mもあれば家だって木だって吹き飛ぶんだ。

 ましてドラゴンブレスだ。そんなものよりずっと早いし、鎌鼬のような現象も含まれるらしい。
 これを食らうと大惨事。

 僕も負けじと咆哮を上げ、衝撃波を放つ。

《むむですよー。タイミングが遅れたですよー》

 いや、それ以前に力負けしているような?

 だけど僕の衝撃波も、ドラゴンブレスの幾ばくかはうち消したと思う。
 後のブレスはこの身で受けるのだ。

 後ろで爺ちゃんが『リウ』といったような気がするが周りがうるさくてよく聞こえなかった。

 怪獣が僕なのは一応内緒の方がいいのでみんなもそれどころでないと助かる。
 爺ちゃんもたまに迂闊である。
 でも、僕を心配しての事なので、大目に見てあげよう。

 それに、僕自身は危機感を感じていない。
 この怪獣は言ってみればぎっしり高密度で固められた砂のようなものなのだ。

 分厚い砂は爆弾の衝撃すら吸収するのだ。

 それと同じで衝撃は怪獣を構成する粒子を多少吹き飛ばすが怪獣を構成する砂はそれ自体が魔素のようなもので、僕の操魔の支配下にあるのですぐに元に戻ろうとする。
 流動する砂に衝撃を散らされ、ブレスは深くまで届かない。

 ブレスには鎌鼬のような刃も含まれていたけど、それも同じに力をそがれて霧散した。
 うん、この怪獣アーマーは想像以上の防御力だね。

 ぽんぽん。

『はにゃ?』

《後ろでパニックになった魔導師達が攻撃してきているですよー
 あっ、マシスジジイに殴り倒されたですよー
 自分が呼んだ応援の魔導士だと説明しているですよー》

 うむ、ナイス爺ちゃん。しかしポンポンとか情けないなあ。

《・・》

 しーぽんが何か言いかけたけど、ちょっと聞いている余裕がなかった。
 スィームルグが高度を下げて真正面に来たのだ。まるで怪獣とにらみ合うように。

 じっと見てる。何してるんだろ?
『ぽっ』とか言った方がいいかな?

《竜の威圧(ドラゴンフィアー)ですよー。リウ太には効かないですよー》

 ああ、そうなのね。うーん、よくわかんないけど効果がないんだからいいか。

 ここで僕は初めてまじまじとスィームルグを見た。観察した。
 精悍で大変美しい鳥さんだ。

 スタイルは鷹に近い。お腹側が純白で、背中側は茶色。その茶色も光を反射してキラキラと輝きまるで黄金のように見える。
 これが黄金のコンドルだと言われれば納得できてしまうほどの神々しさだ。
 頭の飾り羽と長めの尾羽が赤みがかって朱金に見える。輝く夕焼けの色だ。
 体長は5メートル。翼を広げた大きさはたぶん十数メートル。

 鳥は翼を広げるとでっかく見えるなあ。

《むむですよー。威圧が効かなかったからくるですよー》

 スィームルグは『ズドン』と一度大きく羽ばたくと前傾姿勢になって突っ込んできた。

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クライマックスです。
前 中 後 でお送りします。
どれもちょっと長めです。
ご容赦。

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