書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」

銀塊 メウ

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第九章 邪神降臨

第323話 慈愛に満ちた笑顔

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 蒼字(そうじ)は筆を振り目の前の空間を切り開く。轟炎に包まれたバアル・ゼブルを一刀両断したかに見えた。しかし蒼字(そうじ)は違和感を感じていた。

(……斬れてない?)

 巨大な火球は掻き消えたのに倒したと言う実感がなかった。でも目の前にバアル・ゼブルはいない。ヤツはどこに……

 周りの見渡すが姿はなく逃げられてしまったと悟る。


「蒼字(そうじ)!どこでもいいから筆を振りなさい」
 その時テュケが叫ぶような教えてけれた。そうだ!今俺の運気には女神が付いている。何か当てがあったわけじゃない。ただ闇雲に右斜め後ろに筆を振った。

 振った先の空間が大きく揺らぐ、揺らいだ先に人影が視えた、蒼字(そうじ)はそこに向かって筆を振る。すると揺らいだ先から何かが飛び出す。

「見つけたーー!」

 飛び出してきたのはバアル・ゼブル、どうしてこんなったか分からないが、恐らく空間転移で逃げているところを別次元の空間を開き無理やり引きずり出せたと言ったところか。
 
「おのれ!小賢しいわ!『ソウルヘルバースト』」
 バアル・ゼブルから燃え盛るように溢れ出る魂、苦痛と呪いの言葉呟く魂は今まで生贄にされた者達で恐ろしく強い呪いを纏っている。触れた者を即死させ地獄に連れて行く。

 霊能力者である蒼字(そうじ)にはしっかりと聴こえ視えている。魂の叫びが蒼字(そうじ)の怒りに火をつける。


「お前はいい加減人に迷惑かけんじゃねぇー!彼女達を愚弄することは許さない!」

 筆が七色に輝き周りを照らす。
 蒼字(そうじ)は彼女達を救いたい一心で筆を振った。


 『永字八法』
 『永』という字には書道に必要とされる
 基本技法8種類がすべて含まれている。

 永字八法の基本技法

1. 側そく  : 点
2. 勒ろく  : 横画
3. 努ど  : 縦画
4. 趯てき  : はね
5. 策さく  : 右上がりの横画
6. 掠りゃく :左はらい
7. 啄たく  : 短い左はらい
8. 磔たく  : 右はらい
 
『書道の基本であり最終地点』
 蒼字(そうじ)が今まで書いた字の数、そして数々の苦難の中培った戦闘の経験の集大成がここに極まる。

『書道神級』のスキルが覚醒した。
 蒼字(そうじ)は想いをのせ無意識に筆を振る。
 

『果てなき永遠の世界へ……夢幻』
 この瞬間世界が真っ白な光に覆われた。

 筆を振り終えゆっくりと筆を下ろす。目の前には邪神バアル・ゼブルが居たが驚いた表情で動きを止め、そして徐々に薄くなっていく。
 その時蒼字(そうじ)は内心困惑していた。実のところ今の術を理解していない。だから何が起こるか分からなかった。倒すべき敵であるバアル・ゼブルはそのまま薄くなり消えた。あまりにも呆気なく倒すことが出来た。危機は去ったようだ。


「……………」
 蒼字(そうじ)はしばらく無言で虚空を見つめる。あまりの戦いに精神的にも肉体的にも疲労し呆然としてしまった。……だから周りが騒がしくなっても気が付かなかった。
 
「何ボーっとしているの」
 女性の声が聞こえボスっと後ろから誰かがぶつかって来た。そして優しく抱き締められる。

「………セレーナさま……おれは」
 グッと目をつむり悔しさから強く手を握り締める。
「もう、またおかしなことを考えているのね」
 優しく頭を撫でる。
「でも俺は、セレーナ様を救えなかった」
「ふぅ~そんなことない。蒼字(そうじ)はいつも一人で抱え過ぎよ。一人の人間に出来ることなんてそれほど多くはないの、あなたはもっと周りを頼るべきなのよ」
 優しく頭を撫で続ける。
「そうだ……くそ!俺には大した力も無いのに、何やってるんだよ」
 蒼字(そうじ)は嘆く、それをセレーナは子供をあやすように慰める。でもこのままでは蒼字(そうじ)が納得しない。そう思ったセレーナは口元に指を当てながらニヤリと笑う。
「蒼字(そうじ)、あなたは二つ勘違いしているわ。だから訂正します。あなたはとても素晴らしい力を持っています。それは弛まぬ努力と優しい心を持っているから手に入れることが出来た力だと私は思うわ。それでね蒼字(そうじ)、あなたは私をちゃんと救ってくれたの!」
 
 蒼字(そうじ)は腕をダラ~ンっとさせて、強く握り締めていた手を開き全身の力を抜いた。

「すいませんこんなこと聞きたくないのは分かっているんです。でもダメなんです俺は言わずにはいられない。俺が無力なせいでセレーナ様を死なせてしまった」

「そんなことないわ。いい!しっかりと感じて」
 セレーナは蒼字(そうじ)の手を取ると自分の胸に持っていく。

 ムニュ…ポヨン……オバサンと呼ばれる年齢とは思えない柔らかさと弾力。

「な!?何してるんですかセレーナ様!こんな時まで冗談はやめてくだ……はぇ!?」
 蒼字(そうじ)の口から変な声が漏れた。慌てて振り返るとそこには真っ裸のセレーナ様がおり、更にその後ろにはセレーナ様に似ている少女と聖女のモニカさんが恥ずかしそうに胸と股間を手で隠している。何が何だか分からない蒼字(そうじ)はすぐに視線を外し腕を引っ張ったがセレーナ様が放してくれない。


「セレーナ様こんな時までふざけないでください」
 暴れるがセレーナはより強く胸に手を当てた。
 

「放さない!よ~く感じなさい。あなたが守ったものを、救ったものを、助けたものを……」


(……ドクッ…ドクッ…ドクッ………心臓の音?)
 

「感じた?蒼字(そうじ)、これは死んだ人にはない音よ。あなたはね私を救ってくれた。だから私は生きてる!」

(え!?……生きている?)

 蒼字(そうじ)が勢い良く振り返るとそこには慈愛に満ちた笑顔のセレーナが生きていた。
 
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