「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

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第一章「適当…と言う名の運命」

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「あ、貴女って人は……」
 母は頭を抱えながら、まるで支えを失ったようにふらふらと体をよろけさせる。
「奥様、どうかお気を確かに」
「ああ、マリッサ。貴女にも苦労をかけるわね」
「お気になさらないでください。私はいつ何時も、奥様の味方です」
「なんて素晴らしい子なの……!」
 悲劇のヒロインよろしく、目元にハンカチを当てる母。マリッサはマリッサで、そんな母に同情の熱い視線を注いでいた。
「な、なによ二人して!だって、しっかり読み込んだって決められないんだもの!もう、こうして選ぶより他はないじゃない!」
 迷った時には、これが一番最強なんだから。
「絵姿だけご覧になっては?顔は大事ですよ」
「自分が大したことないのに、相手だけ素敵だったら嫌じゃない」
「おや、意外とまともなご意見」
 マリッサは、一体私をなんだと思っているのやら。だけど、彼女のこういう嘘を吐かない正直なところが、私は大好きなのだ。
「確かに、それもそうですね」
 にしても、ここは嘘でも良いから否定してほしかった。
「まぁ、良いわ。どの殿方を選んでも家柄身分共に申し分ない男性だから。むしろ、こちらが申し訳ないくらいよ」
「そうですよ、お母様。不良債権の押し付けはいけません」
「どの口が言うのかしら」
 至極まともな意見を述べたのに、ウジでも見るかのような視線を向けられてしまった。
「私の娘は、どこに出しても恥ずかしくないわ。不良債権なんて無粋な表現は辞めてちょうだい」
「お、お母様……」
 普段怒ってばかりでも、実はそんな風に思ってくれていたのかと、じいんと胸が熱くなる。
「どう、マリッサ。今の台詞、慈母ぽかったかしら」
「ええ、奥様。とてもそれらしくて素敵でした」
 二人の会話で、一気に氷点下まで胸が冷えました。思っても口に出さないでほしかった。
「とにかく、本当にその方で良いのね?中身すら見ていないけれど」
「女に二言はありませんわ!運命の女神が、この方を選べと私に囁かれたのです!」
「ただ適当に決めただけじゃない」
 どちらにしようかな、天の神様の言う通り。は、決して適当なんかではない。
「まぁ、良いわ。気が変わらない内に、さっさと先方へお伺いしましょう」
「えっ、行くの?」
「……おばかさん」
 コルセット、パニエ、お化粧、整髪。考えただけで、クローゼットに閉じこもりたくなった。
「まぁ、良いわ。旦那様となる方に、交渉すればいいだけの話ですもの。たくさん愛人を作っても構わないから、私を自由にさせてくださいって」
「今、とんでもなく聞き捨てならない台詞が聞こえた気がするのだけれど」
 私の心の呟きは、いつも勝手に外へと飛び出す。無表情でゆらりと立ち上がった母に向かって、どうにか誤魔化そうと選んだ釣書を掲げた。
「ほ、ほらほら!中を見ましょう、お母様!」
「そうね。まずはそこからね」
 しぶしぶ座り直した彼女に、私はほうっと胸を撫で下ろす。表紙を捲ろうと手を掛けたその瞬間、ばん!と勢いよく扉が開いた。
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