「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

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第一章「適当…と言う名の運命」

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♢♢♢【オズベルト視点】
「オズベルト様、素敵ーっ!」
「こっちを向いてください、ぜひ!」
「一度でいいから、抱き締めてーっ!」
 貴族令嬢なんか漏れなく全員こんな感じだと、胸を張って言える。なぜなら、それしか娯楽がないから。見目や権力や金にしか興味がなくて、ドレスのペチコートをどれだけ膨らませられるかに命を賭けている。母が正にそうで、結果情欲に溺れて愛人と逃げた後その男に刺されて死んだ。
 父はそれを「大したことではない」と言い放ったくせに、二度と妻は娶らないと宣言している。やはり、裏切られたショックは計り知れないのだろう。

 幸か不幸か、美形両親からそれぞれのいいところだけを受け継いだ僕は、それはそれは女性から持て囃された。この国では珍しい、紫黒色の髪と瞳。身長には恵まれたが、体格はもっと筋骨隆々の方が僕は良かった。
 そして一番厄介なのは、身に染みついた甘く艶やかな香り。この地がヴァンドーム家の手中に渡った頃からずっと枯れることなく、辺境伯邸だけに咲き誇る白い花「ジャラライラ」。この変ちきな名前の花は、虫や昆虫だけではなく人さえも惑わす誘い花だ。
 長い年月の共生を経て、僕達ヴァンドーム家は香りへの耐性を身に付けた為に、日常生活に支障はない。それに相性というものがあるらしく、現在我が家でこの香りを纏うことが出来るのは僕だけ。
 この最悪な体のせいで、小さな頃から女難に見舞われまくった結果、女嫌いとなった。
 それでも、生涯独身は無理な話。のらりくらりと躱してきた結婚話も、二十四を迎えた今さすがに逃れるのも限界。けれど、とても社交界に出て相手を探す気にはなれない。というわけで、学生時代からの友人であるテミアン・セシルバに相談した。

「適当に決めちゃえば?」
「お前……。他人事だと思って」
「だって君、誰をどう推薦したって難癖つけるじゃないか。だったら適当に選んで、その後の生活をどうするか考えた方がいいんじゃない?」
 僕の部屋のソファに我が物顔で腰掛け、長い脚を優雅に組んでいる。僕ほどではないにしろ、この男も令嬢の憧れの存在らしい。
 輝く金髪に、薄茶の瞳。とろりとした甘い顔立ちと、高めの澄んだ声。過去にテミアンがふざけ半分で女装をして、僕に女嫌いを克服させようとしたこともあった。
 あれは、二度と思い出したくもない黒い過去。別の意味で鳥肌が立った。
 物事を引っ掻き回して面白がるタチの悪い性格だが、一方で僕にとっては信頼できる人間でもある。あと、シンプルにこいつしか友人がいない。
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