「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

文字の大きさ
40 / 99
第四章「溺愛演技が上手過ぎます、旦那様」

5

しおりを挟む
「オズベルト・ヴァンドーム様。第五王女殿下がお呼びですので、どうかご来臨賜りますようお願い申し上げます」
「だ、第五王女殿下が……」
「お一人でいらっしゃいますようにと」
 どうやら王族の御付人らしく、どうりで洗練された雰囲気が漂っていると納得した。第五王女殿下といえば、先ほど本日の主役である第三王女様と並んでいらっしゃった、七つか八つくらいの可愛らしい方。国王陛下や王妃陛下を始め全員が美形で、それはそれは圧巻だった。
「いや、妻の同席も許可願いたい」
「王女殿下の意向を無下にすると?」
「そうではありません。もうこれ以上、彼の方の貴重な時間をいただくことはできないと感じているからです」
 一体何の話だろうと首を傾げていると、セシルバ様が「以前からオズベルトは王女殿下に言い寄られているんだ」と私に耳打ちした。
「承知いたしました。一度お二人でご来臨いただき、以降は王女殿下にご判断を委ねます」
「はい、それで構いません」
 先ほどの表情豊かな旦那様はどこへやら、険しい顔で私の手を離す。非公式とはいえ殿下に謁見するのだから、手なんて繋げるわけがない。それでも、今の今まで感じていた温もりがなくなって、どこか寂しいと思う自分もいた。
 旦那様の過剰な演技(もしくは香気のせいかも)について話し合いたいと思っていたのに、予想外の事態になってしまった。別の意味で緊張に固まってしまう私の頭を、旦那様がぽんぽんと二度撫でた。

 王宮のプライベートサロンに通された私達の目の前には、ソファに腰掛けた第五王女アンナマリア様が不機嫌そうに私を睨めつけている。面会を許されたのが不思議なくらい、嫌われオーラがびしびしと肌に突き刺さる。
「どうぞ、座って。発言も自由に許可します」
「恐れ入ります、王女殿下」
「オズベルト様は、今夜も本当に素敵です。その正装姿も、お髪も、瞳も、すべてが完璧でお美しいですわ」
 私に向ける表情とは百八十度違い、凛とした王女らしい雰囲気が一瞬で甘さを含んだものに変わる。近くで見ると一層綺麗で可愛らしく、年齢よりもずっと大人びて見えた。
 まるで正面から直接太陽の光を浴びせられているみたいで、私なんかは一瞬で溶けてなくなってしまいそう。それでも妻としてこの場にいるのだからと、だらだらと噴き出る汗を必死に拭った。
「単刀直入に申し上げますと、お二人には別れていただきたいのです」
「恐れながら、それは出来ません」
「どうして⁉︎私の方がずっと前から貴方のことを好きだったのに‼︎」
 華奢な指先で顔を覆い、わっと泣き出した王女殿下。おろおろしているのは私だけで、旦那様はいたって冷静沈着に対応している。
「幼い頃、王宮の廊下で転んだ私を優しく抱き上げてくれたあの腕の力強さを、今でもはっきりと覚えています」
 彼女はうっとりと目を細めながら、ありし日の美しい出会いに想いを馳せているようだ。私はといえば、その様子を眺めながら「今も十分幼いんじゃ?」と空気の読めないことを考えていた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...