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第五章「衝撃(たぶん)の真実」
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「う、うう……」
セシルバ様から怒涛の口撃を食らった旦那様は、致死量の毒を盛られたかのような顔で唇を噛んでいる。さっきの彼とのやりとりを思い出した私は、はっとして彼の前に立ちはだかった。
「わ、私は旦那様との結婚生活がとても幸せです!始まりは政略的な結婚だったかもしれませんが、今は旦那様にめろめろのふにゃふにゃで、彼のいない生活なんて考えられません!二人で幸せに生きていきますので、どうぞご心配なく!」
どどん!と胸を張りながら勢いよく『夫大好き宣言』をした私。どうやら解毒効果は抜群だったようで、彼の顔がみるみる桃色に染まっていく。気が紛れて良かったけれど、そんな顔をされると恥ずかしい。
「フィリア……、嬉しい」
「あ、あはは……」
普段無愛想な麗人の照れた表情は、凄まじい破壊力。容姿より虫や食べ物に惹かれる私でも、ついくらりと脳が揺れてしまった。
「あのぼっちゃんが女性と懇意に……、なんて感慨深いんだ……」
側に控えていた執事長バルバさんが、唇を震わせながらしきりに目元を拭っている。それに続き、使用人達が次々に色めき立ち始めた。
「お二人は本当に、素敵なご夫婦です」
「奥様がいらっしゃってから、屋敷の雰囲気がとても明るくなりました。正にヴァンドームの救世主です」
ひ、ひいいぃ!という声にならない悲鳴が、潰された喉から搾り出されたような音となって消えていく。なんだか美談になっている気がするけれど、実際の私はまったく救世主なんかではないから反応に困る。
「奥様!最高!奥様!最高!」
マリッサの馬鹿!彼女だけは完全におもしろがっていると、変な掛け声で片腕を突き上げる自分の侍女をじとりとした視線で見つめた。
いまだに頬を染めて、とうとう瞳まで潤ませ始めた旦那様を、セシルバ様が笑いながら諌める。
「だってさ、オズベルト。愛らしい奥様からの告白を聞いて、君はただ熟れたプラムみたいに色付いてぼうっと木に生っているだけなのかい?」
はっとしたようにかっと目を見開いてぱっとこちらに手を伸ばした旦那様は、そのまま優しく私の腰を引き寄せた。
「ありがとう、フィリア。僕も君と一緒にいられて、本当に幸せだ」
「い、いやあの今のは……」
「僕もこれからは、変なプライドに拘らず素直に想いを伝えようと思う」
きゅっと手に力が込もり、同時に嬉しそうに微笑まれる。セシルバ様に責められて悲しそうな旦那様を励ます為の言葉だったのに、なにやらとんでもないスイッチを押してしまったような気分だ。
「あらら。今度はフィリアが真っ赤になっちゃった」
セシルバ様がやれやれとでも言いたげに肩をすくめると、旦那様は私を隠すようにしてすっぽりと覆う。僅かな隙間はあるものの、さらに距離が縮まってしまった。
しかも、私以上に心臓がばこばこと波打っているものだから、逆にこちらが落ち着いた。
「……名前を呼ぶのは止めてくれ。それから、目を見つめるのも。悔しいがお前は女受けする顔をしているし、万が一ということがあっては」
「だだだ、旦那様!ちょっと部屋でゆっくりなさった方がよろしいのでは!?」
セシルバ様に対してばちばちの臨戦態勢を取るので、私はたまらずぐいぐいと彼の腕を引く。自分自身が恥ずかし過ぎるので一旦退散したいという下心も、ほんの少し含まれている。
「なるほど。フィリア様は二人きりになりたいと」
「ちょ、ちょっとマリッサ!」
「そうか!察しが悪くてすまない。すぐに行こう」
「ち、違ううぅぅ!!」
マリッサの余計な追撃で、さらに誤解を与えた。旦那様はぱっと表情を明るくして、私以上の力で扉へと引きずっていく。正直朝食が食べたかった……とお腹を押さえながら、彼の悲しそうな顔が消えたからまぁ良いかと、私はそのまま大人しく引きずられることにしたのだった。
セシルバ様から怒涛の口撃を食らった旦那様は、致死量の毒を盛られたかのような顔で唇を噛んでいる。さっきの彼とのやりとりを思い出した私は、はっとして彼の前に立ちはだかった。
「わ、私は旦那様との結婚生活がとても幸せです!始まりは政略的な結婚だったかもしれませんが、今は旦那様にめろめろのふにゃふにゃで、彼のいない生活なんて考えられません!二人で幸せに生きていきますので、どうぞご心配なく!」
どどん!と胸を張りながら勢いよく『夫大好き宣言』をした私。どうやら解毒効果は抜群だったようで、彼の顔がみるみる桃色に染まっていく。気が紛れて良かったけれど、そんな顔をされると恥ずかしい。
「フィリア……、嬉しい」
「あ、あはは……」
普段無愛想な麗人の照れた表情は、凄まじい破壊力。容姿より虫や食べ物に惹かれる私でも、ついくらりと脳が揺れてしまった。
「あのぼっちゃんが女性と懇意に……、なんて感慨深いんだ……」
側に控えていた執事長バルバさんが、唇を震わせながらしきりに目元を拭っている。それに続き、使用人達が次々に色めき立ち始めた。
「お二人は本当に、素敵なご夫婦です」
「奥様がいらっしゃってから、屋敷の雰囲気がとても明るくなりました。正にヴァンドームの救世主です」
ひ、ひいいぃ!という声にならない悲鳴が、潰された喉から搾り出されたような音となって消えていく。なんだか美談になっている気がするけれど、実際の私はまったく救世主なんかではないから反応に困る。
「奥様!最高!奥様!最高!」
マリッサの馬鹿!彼女だけは完全におもしろがっていると、変な掛け声で片腕を突き上げる自分の侍女をじとりとした視線で見つめた。
いまだに頬を染めて、とうとう瞳まで潤ませ始めた旦那様を、セシルバ様が笑いながら諌める。
「だってさ、オズベルト。愛らしい奥様からの告白を聞いて、君はただ熟れたプラムみたいに色付いてぼうっと木に生っているだけなのかい?」
はっとしたようにかっと目を見開いてぱっとこちらに手を伸ばした旦那様は、そのまま優しく私の腰を引き寄せた。
「ありがとう、フィリア。僕も君と一緒にいられて、本当に幸せだ」
「い、いやあの今のは……」
「僕もこれからは、変なプライドに拘らず素直に想いを伝えようと思う」
きゅっと手に力が込もり、同時に嬉しそうに微笑まれる。セシルバ様に責められて悲しそうな旦那様を励ます為の言葉だったのに、なにやらとんでもないスイッチを押してしまったような気分だ。
「あらら。今度はフィリアが真っ赤になっちゃった」
セシルバ様がやれやれとでも言いたげに肩をすくめると、旦那様は私を隠すようにしてすっぽりと覆う。僅かな隙間はあるものの、さらに距離が縮まってしまった。
しかも、私以上に心臓がばこばこと波打っているものだから、逆にこちらが落ち着いた。
「……名前を呼ぶのは止めてくれ。それから、目を見つめるのも。悔しいがお前は女受けする顔をしているし、万が一ということがあっては」
「だだだ、旦那様!ちょっと部屋でゆっくりなさった方がよろしいのでは!?」
セシルバ様に対してばちばちの臨戦態勢を取るので、私はたまらずぐいぐいと彼の腕を引く。自分自身が恥ずかし過ぎるので一旦退散したいという下心も、ほんの少し含まれている。
「なるほど。フィリア様は二人きりになりたいと」
「ちょ、ちょっとマリッサ!」
「そうか!察しが悪くてすまない。すぐに行こう」
「ち、違ううぅぅ!!」
マリッサの余計な追撃で、さらに誤解を与えた。旦那様はぱっと表情を明るくして、私以上の力で扉へと引きずっていく。正直朝食が食べたかった……とお腹を押さえながら、彼の悲しそうな顔が消えたからまぁ良いかと、私はそのまま大人しく引きずられることにしたのだった。
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