「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

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特別編「フィリアとオズベルトは、理想の夫婦」

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 本日、ブルーメルは快晴。私はお屋敷の中庭で、領地の子ども達と遊んでいる真っ最中。
「ああっ、また負けたわ!」
「フィリア様ってば、油断しすぎ!」
「もう一回、もう一回だけお願い!」
「そう言ってから、もう五回目だよ!」
 悪巧みが失敗した悪役のように、私はきいぃぃ!と唇を噛みながら地団駄を踏んでいる。誰が一番大きなカエルを捕まえられるかという遊びに絶賛参加中、というより発案者は私で一番ムキになっているのも私。
「だって、私の領地じゃあ負け知らずだったのに!こんなの悔しいじゃない!」
 子ども相手になんと大人気ない態度だろうと、ちょっと自分で自分に引いている。だけど悔しいものは悔しいんだから、どうしようもない。
「そもそも、相手が私だけでしたからね。負け知らずも何も」
「マ、マリッサ!もしかして貴女、昔は手を抜いていたってことなの⁉︎」
「いえ、そもそも大人は真剣にやりませんよそんなもの」
「きええぇ‼︎」
 まったく聞き捨てならない。この遊びがどれだけ頭脳と体力を使うのか、彼女はちっとも理解していない。母から受け継いだ渾身の奇声を発すると、胸に抱いているカエルが同じような声で鳴いた。
「ねぇ、僕もう飽きちゃった」
「僕も、他の遊びがしたいよ」
 散々私に付き合わされている子ども達から、ついに不満の声が。それに対して私は、ぶすっと唇を尖らせてみせる。
「それなら仕方ないわね、私だってそこまで子どもじゃないし」
「二十歳も近いのにカエル捕りに夢中になっている人は充分子どもでは?」
「もう、マリッサの意地悪!」
 そうは言っても、確かにこれじゃあどっちが遊んでもらっているか分からない。まぁ、カエル捕りに限らず木登りでも蟻の巣見つけでも大体私だけがムキになっているけれど。
 そうして最終的には、子ども達が「フィリア様の勝ちで良いよ」と譲ってくれる。
 あれ?冷静に考えてみたら、私ってイケナイ大人?
「フィリア様ぁ!わたし、お腹が空いちゃった」
 悶々としている私の手に、小さくてふにふにした感触。下を見れば先月四歳になったばかりのルシェルが、うるうるきらきらの瞳で私を見上げていた。
「まぁ、ごめんなさいねルシェル。そろそろおやつの時間にしましょうか」
「わぁい、やったぁ!」
 ああ、可愛過ぎる。ここへ遊びに来る子ども達はみんな素直で明るくて、本当にどちらが相手をしてもらっているのか分からない。
「今日はマリッサ特製のブルーベリークッキーと、旦那様がお土産にくださった王都のパティスリーのチョコレートがあるのよ!」
「わぁ、楽しみ!」
「でしょでしょ?私も朝から待ちきれなくて、ついついほんのちょこっとだけつまみ食いを……」
 そこまで言いかけて、はっとして口元を手で押さえる。こんなことを教えるのは、未来あるこの子達の情操教育的に良くない気がしたから。
「あはは、フィリア様ったらいつもそう言ってる!」
「えっ、そうだっけ?」
 どうやらもう、取り繕うのが遅かったみたいだ。ブルーメルに咲き誇る綺麗な花に負けないくらい、たくさんの笑顔がきらきらと輝いている。
「私ってばいつだって腹ぺこよ!早くしないと、全部ぺろりと食べちゃうんだから!」
「あっ、待ってフィリア様ーっ!」
 ルシェルの小さな体をふわりと抱き上げると、そのままたたっと駆け出す。笑い声を響かせながら、みんなで一斉にお屋敷を目指して競走したのだった。
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