75 / 99
特別編「フィリアとオズベルトは、理想の夫婦」
1
しおりを挟む
本日、ブルーメルは快晴。私はお屋敷の中庭で、領地の子ども達と遊んでいる真っ最中。
「ああっ、また負けたわ!」
「フィリア様ってば、油断しすぎ!」
「もう一回、もう一回だけお願い!」
「そう言ってから、もう五回目だよ!」
悪巧みが失敗した悪役のように、私はきいぃぃ!と唇を噛みながら地団駄を踏んでいる。誰が一番大きなカエルを捕まえられるかという遊びに絶賛参加中、というより発案者は私で一番ムキになっているのも私。
「だって、私の領地じゃあ負け知らずだったのに!こんなの悔しいじゃない!」
子ども相手になんと大人気ない態度だろうと、ちょっと自分で自分に引いている。だけど悔しいものは悔しいんだから、どうしようもない。
「そもそも、相手が私だけでしたからね。負け知らずも何も」
「マ、マリッサ!もしかして貴女、昔は手を抜いていたってことなの⁉︎」
「いえ、そもそも大人は真剣にやりませんよそんなもの」
「きええぇ‼︎」
まったく聞き捨てならない。この遊びがどれだけ頭脳と体力を使うのか、彼女はちっとも理解していない。母から受け継いだ渾身の奇声を発すると、胸に抱いているカエルが同じような声で鳴いた。
「ねぇ、僕もう飽きちゃった」
「僕も、他の遊びがしたいよ」
散々私に付き合わされている子ども達から、ついに不満の声が。それに対して私は、ぶすっと唇を尖らせてみせる。
「それなら仕方ないわね、私だってそこまで子どもじゃないし」
「二十歳も近いのにカエル捕りに夢中になっている人は充分子どもでは?」
「もう、マリッサの意地悪!」
そうは言っても、確かにこれじゃあどっちが遊んでもらっているか分からない。まぁ、カエル捕りに限らず木登りでも蟻の巣見つけでも大体私だけがムキになっているけれど。
そうして最終的には、子ども達が「フィリア様の勝ちで良いよ」と譲ってくれる。
あれ?冷静に考えてみたら、私ってイケナイ大人?
「フィリア様ぁ!わたし、お腹が空いちゃった」
悶々としている私の手に、小さくてふにふにした感触。下を見れば先月四歳になったばかりのルシェルが、うるうるきらきらの瞳で私を見上げていた。
「まぁ、ごめんなさいねルシェル。そろそろおやつの時間にしましょうか」
「わぁい、やったぁ!」
ああ、可愛過ぎる。ここへ遊びに来る子ども達はみんな素直で明るくて、本当にどちらが相手をしてもらっているのか分からない。
「今日はマリッサ特製のブルーベリークッキーと、旦那様がお土産にくださった王都のパティスリーのチョコレートがあるのよ!」
「わぁ、楽しみ!」
「でしょでしょ?私も朝から待ちきれなくて、ついついほんのちょこっとだけつまみ食いを……」
そこまで言いかけて、はっとして口元を手で押さえる。こんなことを教えるのは、未来あるこの子達の情操教育的に良くない気がしたから。
「あはは、フィリア様ったらいつもそう言ってる!」
「えっ、そうだっけ?」
どうやらもう、取り繕うのが遅かったみたいだ。ブルーメルに咲き誇る綺麗な花に負けないくらい、たくさんの笑顔がきらきらと輝いている。
「私ってばいつだって腹ぺこよ!早くしないと、全部ぺろりと食べちゃうんだから!」
「あっ、待ってフィリア様ーっ!」
ルシェルの小さな体をふわりと抱き上げると、そのままたたっと駆け出す。笑い声を響かせながら、みんなで一斉にお屋敷を目指して競走したのだった。
「ああっ、また負けたわ!」
「フィリア様ってば、油断しすぎ!」
「もう一回、もう一回だけお願い!」
「そう言ってから、もう五回目だよ!」
悪巧みが失敗した悪役のように、私はきいぃぃ!と唇を噛みながら地団駄を踏んでいる。誰が一番大きなカエルを捕まえられるかという遊びに絶賛参加中、というより発案者は私で一番ムキになっているのも私。
「だって、私の領地じゃあ負け知らずだったのに!こんなの悔しいじゃない!」
子ども相手になんと大人気ない態度だろうと、ちょっと自分で自分に引いている。だけど悔しいものは悔しいんだから、どうしようもない。
「そもそも、相手が私だけでしたからね。負け知らずも何も」
「マ、マリッサ!もしかして貴女、昔は手を抜いていたってことなの⁉︎」
「いえ、そもそも大人は真剣にやりませんよそんなもの」
「きええぇ‼︎」
まったく聞き捨てならない。この遊びがどれだけ頭脳と体力を使うのか、彼女はちっとも理解していない。母から受け継いだ渾身の奇声を発すると、胸に抱いているカエルが同じような声で鳴いた。
「ねぇ、僕もう飽きちゃった」
「僕も、他の遊びがしたいよ」
散々私に付き合わされている子ども達から、ついに不満の声が。それに対して私は、ぶすっと唇を尖らせてみせる。
「それなら仕方ないわね、私だってそこまで子どもじゃないし」
「二十歳も近いのにカエル捕りに夢中になっている人は充分子どもでは?」
「もう、マリッサの意地悪!」
そうは言っても、確かにこれじゃあどっちが遊んでもらっているか分からない。まぁ、カエル捕りに限らず木登りでも蟻の巣見つけでも大体私だけがムキになっているけれど。
そうして最終的には、子ども達が「フィリア様の勝ちで良いよ」と譲ってくれる。
あれ?冷静に考えてみたら、私ってイケナイ大人?
「フィリア様ぁ!わたし、お腹が空いちゃった」
悶々としている私の手に、小さくてふにふにした感触。下を見れば先月四歳になったばかりのルシェルが、うるうるきらきらの瞳で私を見上げていた。
「まぁ、ごめんなさいねルシェル。そろそろおやつの時間にしましょうか」
「わぁい、やったぁ!」
ああ、可愛過ぎる。ここへ遊びに来る子ども達はみんな素直で明るくて、本当にどちらが相手をしてもらっているのか分からない。
「今日はマリッサ特製のブルーベリークッキーと、旦那様がお土産にくださった王都のパティスリーのチョコレートがあるのよ!」
「わぁ、楽しみ!」
「でしょでしょ?私も朝から待ちきれなくて、ついついほんのちょこっとだけつまみ食いを……」
そこまで言いかけて、はっとして口元を手で押さえる。こんなことを教えるのは、未来あるこの子達の情操教育的に良くない気がしたから。
「あはは、フィリア様ったらいつもそう言ってる!」
「えっ、そうだっけ?」
どうやらもう、取り繕うのが遅かったみたいだ。ブルーメルに咲き誇る綺麗な花に負けないくらい、たくさんの笑顔がきらきらと輝いている。
「私ってばいつだって腹ぺこよ!早くしないと、全部ぺろりと食べちゃうんだから!」
「あっ、待ってフィリア様ーっ!」
ルシェルの小さな体をふわりと抱き上げると、そのままたたっと駆け出す。笑い声を響かせながら、みんなで一斉にお屋敷を目指して競走したのだった。
121
あなたにおすすめの小説
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます
さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。
生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。
「君の草は、人を救う力を持っている」
そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。
不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。
華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、
薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。
町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます
さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。
望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。
「契約でいい。君を妻として迎える」
そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。
けれど、彼は噂とはまるで違っていた。
政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。
「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」
契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。
陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。
これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。
指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる