「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

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特別編「フィリアとオズベルトは、理想の夫婦」

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♢♢♢
「ん……、ま、待ってください!」
 ぷはぁ!と勢い良く息を吐いた私は、乱れたそれを整える余裕もないままに、ぺちぺちと旦那様の肩を叩く。
 ぐったりとして力が入らず、私の攻撃は彼にちっとも効かない。
 意地悪な笑みを浮かべながら艶のある吐息を吐いて、筋張った指先をつつ……と私の頬に沿わせる旦那様は、とんでもない色気を振り撒きながらこちらを見つめてくる。
「フィリア……、まだ足りない」
「で、でももうずっとベッドの中で」
「僕とこうしているの、君は嫌か?」
 そんなはずないと、彼はちゃんと分かっている。わかっていてそんな、誘惑するような瞳を向けるのだから本当にタチが悪い。
 旦那様がロウワード帝国から無事に帰国して、早七日。なんの下心もなくにこにこで彼を出迎えた私は、あっという間に手を引かれて寝室へ。それからほとんどをベッドで過ごし、満足に寝ることもままならない。
「も……っ、消えるどころか増えましたぁ……っ」
 これじゃあ、とてもスカーフで隠しきれない。私の貧相な体に無数に散らばった赤い痕を眺めて、旦那様はうっとりとした声を上げる。
「ああ、君はなんて美しいんだ」
「そ、それは私の台詞です……!」
 もうすぐ二十歳を迎える私は、もう胸の成長は絶望的だと諦めた。豊満なそれをゆっさゆっさと揺らしながら、旦那様を喜ばせるという夢は、来世で叶えることにして。
「お尻だってもっと大きい方が良かったし、唇だってもっとぷるぷるしたかったし、腰だってもっともっとくねくねさせて……」
「ちっとも分かっていないな、君は」
 いつまで経っても整わない呼吸をそのままに、羞恥心を涙に変えて瞳を潤ませる。結婚して心を通わせてから、もう数えきれないほどこうして愛を確かめ合ってきたけれど、きっと私は永遠に慣れない。
 触れ合う肌の温かさも、たまに掠める髪の柔らかさも、首元の少し湿った匂いも、心から満たされるこの不思議な感覚も。
 全部が初めての私にとっては、旦那様とだからこうなのか、他の誰かでもこうなのか、そんなことは分からないけれど。願わくば、この先も解けないままでいてほしい。それは、お互いに。
「フィリアでなければ、意味がない」
「だけどそれは……」
「君でなければ、駄目なんだ」
 旦那様は、少しの余白もないほどきっぱりとそう言い切って、私の頬にキスを落とす。たった一瞬触れただけだというのに、なぜだか胸が締め付けられた。
「愛してる」
「……私も」
「この先も、ずっと側に」
 恥ずかしがり屋の旦那様が、惜しげもなく愛の言葉を紡いでいく。行動で、言動で、こんな私を丸ごと包み込んでくれるこの人が、堪らなく愛おしい。
 つり合うだとかつり合わないだとか、そういうくだらないことを考えてしまうのは辞められそうにないから、私は私なりに彼を大切にしていきたいと思う。
 自分の中に「自分以外の誰か」が存在するのは少しだけ窮屈で、とんでもなく幸せ。
「フィリア、フィリア」
「……っ」
 耳元で名前を囁かれるたびに、心臓とは違う別の何かが暴れ出しそうになる。息が止まりそうで、頭がおかしくなりそうで、いつまで経っても熱が引いてくれない。
 そんな私を見て、旦那様の瞳がゆらゆらと揺れている。激しい情欲と、愛情と、気遣いと、その他。必死に葛藤するその可愛らしい姿は、この世界でたったひとり私だけが知っている。
「旦那様……、我慢しないで」
 自然と、そんな言葉が口を衝いて出る。もう限界だと思っていたのに、愛の力というものは私が思う以上に無限らしい。
 彼に組み敷かれながら、その逞しい腕にそっと指を沿わせる。声が震えてしまうのは、自分ではどうすることも出来なかった。
「もっと、愛して。オズベルト様」
「……ああ、フィリア!」
 迷いが消えた紫黒の瞳は、まるで底のない沼のようで。余裕をなくした旦那様の雄の表情を見ていると、怖くもないのにぶるりと体が震えた。
 
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