偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ

文字の大きさ
14 / 35

6-1

しおりを挟む
「殿下、私は何をすればいいのでしょうか?」
「ああ、君にやってほしいのは、病に苦しむ人々の治療だ。場所はこちらで用意する。大聖堂ほど大きくもないし、綺麗でもないが」
「場所や環境は関係ありません。それだけでいいのですか?」
「それが一番大事なんだ。特に今の時期はね」

 殿下は続けて説明する。
 スローレン王国やスパーク王国には四季がある。
 現在は秋だ。
 私が知る前世の四季よりも環境の変化が激しく、秋から冬にかけて一気に気温が下がり、乾燥していく。
 この変化に身体が驚き、体調を崩す人が多い。
 実際、スパーク王国でも寒くなり始めるこの時期は、風邪や体調不良の方が大聖堂に多く足を運んでいた。

「スローレンでも、この時期は風邪が増えるのですね」
「ああ……風邪だけならよかったんだが、うちはただの風邪じゃないんだ」
「ただの風邪じゃ……ない?」

 私は首を傾げる。
 殿下は小さく頷き、続けて説明する。

「通常の風邪よりも高熱が出る別の病気が流行るんだ。感染力も高く、安静にしていれば治るというわけでもない。若者なら体力もあって耐えられるが、老人や子供は高熱で動けなくなってしまうほどだよ」
「それは……」

 この時期に流行る病気で、風邪よりも厄介な病……。
 心当たりがある。
 私の前世でも秋から冬にかけて流行する病気があった。
 毎年ワクチンを受けることを勧められ、それでも多くの人々が感染し、毎年死者が出る。
 この世界でも、似たような病があるのかもしれない。
 私は医者や薬師じゃないから、彼らほど病気に関する知識はない。
 調べる技量も、必要もなかった。

「わかりました。病であるなら、私の祈りで回復させることができます」
「本当か!」
「はい」

 どんな病でも、原因が不明でも、聖女の祈りなら治癒できる。
 この力は治癒能力ではない。
 奇跡を起こす力だ。

「いつから始めればいいでしょうか? 私なら今すぐにでも」
「いや、さすがにそこまで急がなくていい。国民にも一度説明しないといけないから、驚かせないように段取りは踏みたい」
「そう……ですか」
「ありがとう。本気で心配してくれるんだね」
「聖女ですから」

 困っている人がいると知って、無視することはできない。
 私の心は、どうしようもなく聖女の力に染まっている。
 前世の私はこんなにも正義感が溢れ、前向きな性格じゃなかったのに。
 過去の自分と今の自分を比べると、まるで他人みたいだ。

「スパーク王国からは長旅だったのだろう? 今日はゆっくり休んでくれ。大したもてなしはできなくて申し訳ないが、王城の一室を自由に使ってくれて構わない」
「ありがとうございます。それだけで十分です」

 住むところを探そうと思っていたから、その問題が解決したのはラッキーだった。
 まさか今度は、王城で暮らすことになるとは思わなかったけど。

「人生……何が起こるかわかりませんね」
「聖女イリアス?」
「イリアスで構いません」
「そうか。なら俺のことはアクトと――」

 トントントン。
 部屋の扉をノックする音に、殿下の声は遮られた。
 私たちは扉のほうを向く。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう
恋愛
貴様とは婚約破棄だ! 追放され馬車で国外れの修道院に送られるはずが…

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
恋愛
聖女『神龍の巫女』として神龍国家シェンロンで頑張っていたクレアは、しかしある日突然、公爵令嬢バーバラの嫌がらせでリストラされてしまう。 さらに国まで追放されたクレアは、失意の中、隣国ブリスタニア王国へと旅立った。 旅の途中で魔獣キングウルフに襲われたクレアは、助けに入った第3王子ライオネル・ブリスタニアと運命的な出会いを果たす。 「ふぇぇ!? わたしこれからどうなっちゃうの!?」

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから

神崎 ルナ
恋愛
 アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。    だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。  その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。  

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。

ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。 辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。 ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。 その後、王都から助けを求める使者が現れる。 追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。 エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。 全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。 ◇ 命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。 ◇ ※他サイトにも投稿しております。

処理中です...