25 / 35
11-2
しおりを挟む
「驚いていると思う。困惑している者もいるだろう。だが、彼女は聖女イリアス本人だ。それは私が保証しよう」
彼は私に目配せをして、任せてくれと言うように話し始めた。
人々も彼の言葉に耳を傾ける。
「私自身も驚いている。彼女にも事情があって、この国にやってきた。詳しくはまだ話せないが、疚しさからくる秘密ではない」
私がなぜこの国にやってきたのか。
本当の理由は、まだ国民には話せない。
話さないほうがいいと、事前に話し合って結論を出した。
スパーク王国が聖女を偽り、本人である私を追放したことが知られたら、きっと大混乱になる。
噂が広がれば、混乱はスパーク王国の外へと漏れるだろう。
そうなったら、彼らの怒りの矛先はどこへ向く?
理不尽に、今私がいるこの国に向けられるかもしれない。
どちらが本物なのか、ではなく、どちらも聖女本人であると人々に思って貰えたら、余計な混乱を招かずに済むだろう。
「だが、これだけは信じてほしい。彼女は私の願いに応えてくれた。苦しむ人々を救いたいという私の願いに、心から賛同してくれてここにいる」
「陛下……」
残念ながら、私の言葉は届かないだろう。
聖女であっても、私はまだよそ者だ。
本人かどうかもわからない私がいくら語ったところで、人々の心には響かない。
だけど、彼の言葉なら届くはずだ。
人々から信頼され、求められて国王となった彼なら――
「どうか認めてはくれないだろうか? 彼女を、この国の一員として」
「……陛下がそうおっしゃるなら、なぁ?」
「ああ、信じるしかないよな」
「何はともあれ、聖女様がこの国に来てくれたんだ! 喜ばしいことじゃないか!」
人々の声が、驚きや困惑から、喜びに変化していく。
私たちはそれを感じ取り、安堵する。
「よかった……ありがとう、みんな」
「ありがとうございます、陛下」
あなたの言葉が、人々の心を動かした。
まさしく国王として、これ以上に相応しい人はいないだろう。
私は光栄に思う。
彼に選ばれたことを。
今なら人々にも、私の言葉は届くはずだ。
「皆様が抱える不安はもっともです。私のことを信じてもらえるかどうかは、これからの私にかかっていると思います」
「聖女様!」
「聖女様がお話しになられているぞ」
人々は耳を傾ける。
私の声に。
「ですからどうか、私のことを見ていてください。皆様に認めて頂けるように、この国の一員になれるように、私は祈り続けます」
「聖女様……わかりました」
「私たちは見ています! 聖女様のことを」
ようやく、と言っていいのか。
人々から拍手が起こる。
陛下の言葉があったから、人々の中に生まれた私に対する不安や疑念は、一先ず胸の奥にしまわれた。
けれど払拭されたわけじゃない。
本当の意味で理解され、認められるために、私もこれから頑張ろう。
「ありがとうございます」
「イリアス」
「はい」
こうして私は、正式にスローレン王国の聖女となった。
少し呆れてしまう。
スパーク王国を追放されて、聖女としての役割から解放されたのに、結局また聖女として振る舞う道を選んでいる。
けれど、聖女であることが嫌だったわけじゃない。
苦しんでいる人がいれば助けたいし、悲しんでいる人がいたら涙をぬぐいたい。
そう思う気持ちは本物で、どこまで行っても私は聖女らしい。
必要だったのは、聖女として立つべき新しい場所だったのだろうか?
それとも……。
彼は私に目配せをして、任せてくれと言うように話し始めた。
人々も彼の言葉に耳を傾ける。
「私自身も驚いている。彼女にも事情があって、この国にやってきた。詳しくはまだ話せないが、疚しさからくる秘密ではない」
私がなぜこの国にやってきたのか。
本当の理由は、まだ国民には話せない。
話さないほうがいいと、事前に話し合って結論を出した。
スパーク王国が聖女を偽り、本人である私を追放したことが知られたら、きっと大混乱になる。
噂が広がれば、混乱はスパーク王国の外へと漏れるだろう。
そうなったら、彼らの怒りの矛先はどこへ向く?
理不尽に、今私がいるこの国に向けられるかもしれない。
どちらが本物なのか、ではなく、どちらも聖女本人であると人々に思って貰えたら、余計な混乱を招かずに済むだろう。
「だが、これだけは信じてほしい。彼女は私の願いに応えてくれた。苦しむ人々を救いたいという私の願いに、心から賛同してくれてここにいる」
「陛下……」
残念ながら、私の言葉は届かないだろう。
聖女であっても、私はまだよそ者だ。
本人かどうかもわからない私がいくら語ったところで、人々の心には響かない。
だけど、彼の言葉なら届くはずだ。
人々から信頼され、求められて国王となった彼なら――
「どうか認めてはくれないだろうか? 彼女を、この国の一員として」
「……陛下がそうおっしゃるなら、なぁ?」
「ああ、信じるしかないよな」
「何はともあれ、聖女様がこの国に来てくれたんだ! 喜ばしいことじゃないか!」
人々の声が、驚きや困惑から、喜びに変化していく。
私たちはそれを感じ取り、安堵する。
「よかった……ありがとう、みんな」
「ありがとうございます、陛下」
あなたの言葉が、人々の心を動かした。
まさしく国王として、これ以上に相応しい人はいないだろう。
私は光栄に思う。
彼に選ばれたことを。
今なら人々にも、私の言葉は届くはずだ。
「皆様が抱える不安はもっともです。私のことを信じてもらえるかどうかは、これからの私にかかっていると思います」
「聖女様!」
「聖女様がお話しになられているぞ」
人々は耳を傾ける。
私の声に。
「ですからどうか、私のことを見ていてください。皆様に認めて頂けるように、この国の一員になれるように、私は祈り続けます」
「聖女様……わかりました」
「私たちは見ています! 聖女様のことを」
ようやく、と言っていいのか。
人々から拍手が起こる。
陛下の言葉があったから、人々の中に生まれた私に対する不安や疑念は、一先ず胸の奥にしまわれた。
けれど払拭されたわけじゃない。
本当の意味で理解され、認められるために、私もこれから頑張ろう。
「ありがとうございます」
「イリアス」
「はい」
こうして私は、正式にスローレン王国の聖女となった。
少し呆れてしまう。
スパーク王国を追放されて、聖女としての役割から解放されたのに、結局また聖女として振る舞う道を選んでいる。
けれど、聖女であることが嫌だったわけじゃない。
苦しんでいる人がいれば助けたいし、悲しんでいる人がいたら涙をぬぐいたい。
そう思う気持ちは本物で、どこまで行っても私は聖女らしい。
必要だったのは、聖女として立つべき新しい場所だったのだろうか?
それとも……。
98
あなたにおすすめの小説
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ
マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
恋愛
聖女『神龍の巫女』として神龍国家シェンロンで頑張っていたクレアは、しかしある日突然、公爵令嬢バーバラの嫌がらせでリストラされてしまう。
さらに国まで追放されたクレアは、失意の中、隣国ブリスタニア王国へと旅立った。
旅の途中で魔獣キングウルフに襲われたクレアは、助けに入った第3王子ライオネル・ブリスタニアと運命的な出会いを果たす。
「ふぇぇ!? わたしこれからどうなっちゃうの!?」
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから
神崎 ルナ
恋愛
アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。
だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。
その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。
ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。
辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。
ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。
その後、王都から助けを求める使者が現れる。
追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。
エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。
全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。
◇
命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。
◇
※他サイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる