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16.間に合え
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ドシン――
わずかに地面が揺れ、振動と共に音が聞こえた。
男性を担ごうと腰をしていた彼女たちが、ピタリと動きを止める。
同時に感じ取った気配は、すぐ後ろに迫っていた。
三人はごくりと息をのむ。
だが、現れたのは怪我をした女性だった。
木の陰から顔を出し、身体の半分は隠れている。
ほっと安堵した三人は、悲鳴をあげた女性が逃げてきたのだろうと考える。
「良かった。早っ……」
声をかけようとしたミルアは戦慄する。
安堵などしてはならなかった。
その女性は逃げてきたのではなく、連れて来られただけだ。
隠れている身体の半分は、すでに存在しないものとなっていた。
血を流し、臓物が垂れている。
食い散らかされていたのだ。
恐ろしい巨漢のモンスターによって。
「な、何だよあれ!」
「トロールだ……森の深い所にいるっていうモンスターだよ!」
「はっ? 何でそんなのがここに」
「――来る!」
トロールが叫ぶ。
女性の残り半分を投げ捨て、三人に向っていく。
ミルアが慌てて意識を失った男性を担ぎ、ステラが応戦する。
「くそっ、やるしかない!」
「援護する」
ソフィアが杖を構え、ステラの後方で待機する。
その隙にミルアは、離れた場所まで男性を移動させる。
トロールの情報は、シオンから聞いて知っている。
いずれ戦う相手だからと、教えてもらったのはつい最近のことだった。
森の深部に住まうモンスターは、彼女たちには荷が重い。
それでも、成長した彼女たちであれば、戦うことは出来る。
トロールが腕を振り下ろす。
ステラはくるりと回転して躱し、その勢いをのせて槍で薙ぐ。
「っ、おりゃ!」
トロールは強力なモンスターだ。
巨体の割にスピードがあり、一撃で岩を砕ける破壊力を持っている。
が、恐ろしいのはそこではない。
「もう再生しちゃったぞ」
「速い……」
自己再生
トロールが持つ固有スキルであり、最大の長所。
致命傷以外は瞬時に回復してしまう。
ステラがつけた傷も、一瞬のうちに再生されてしまった。
トロールに物理攻撃は効きにくい。
攻略法は、一撃で肉体を破壊してしまうか、弱点である炎の攻撃をくらわせること。
「フレアショット」
それを知っていたソフィアは、ステラが作った隙をついて魔法を放った。
火球はトロールの腹部に着弾し、全身へと燃え広がる。
シオンとの特訓で、以前よりもコントロールが向上していた。
「よっしゃ! ナイスだぜ、フィー!」
「うん。……まだ!」
ソフィアが大きな声をあげた。
直後にステラも気配に気づき、槍を構えて一歩下がる。
燃える一体のトロールの背後。
木を押し倒しながら歩いてきたのは、トロールの群れだった。
「冗談だろ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、君は何してるの?」
「見ての通り休憩中だけど」
「いやまぁ、それはわかるんだけどさ。あの子たちは? 今日が最後でしょ?」
「あいつらならクエストで森の中だ。俺なしでもやっていけるか、どうか確かめるためにな」
「なるほど」
ギルドマスターの部屋。
ソファーで向かい合って座る俺とアリア。
机の上には紅茶の入ったコップが置かれ、穏やかな時間が過ぎている。
「そういうアリアは?」
「アタシも休憩中よ。やっと書類業務が一区切りついたの」
視線を窓のほうに向ける。
別の机の上に積まれた書類の山が見えた。
「ギルドマスターも大変そうだな」
「まぁね。偶には思いっきり身体を動かしたいよ」
「良いんじゃないか?」
「ん、だったら今度一緒にドラゴンでも倒しに行くかい?」
アリアはニコッと微笑みながら物騒なことを口にした。
そんな……ちょっと買い物に行こう、みたいに誘う内容じゃないぞ。
冗談なんだろうけど、彼女が言うと本気にも聞こえてしまう。
「やれやれ」
呟いて、時計に目を向ける。
出発してから、もう二時間は経過していた。
「心配なら見に行けばいいのに」
「……いや、そんなことしたら台無しだ」
「そう? 君がそう言うならきっと――」
大丈夫だと思う。
アリアはたぶん、そう言おうとしたんだ。
だけど、言葉は途中で扉の音に遮られてしまった。
「アリア様!」
「エマ? どうしたのそんなに慌てて」
「たった今報告がありました。サザーク森林表層で、トロールの群れが現れたそうです」
「トロールが?」
アリアが驚き目を見開く。
俺も信じられなくて、息を切らしているエマに尋ねる。
「待て待て、あれは深部に巣食ってモンスターだろ?」
「はい。ですが、すでに被害が出ております」
そう言って、エマは地図を取り出し森の一部にマークをつける。
「ここが確認されたポイントです」
「ここって……」
地図で示された場所は、トラップが設置されている付近だった。
その瞬間、俺の脳裏に最悪の可能性が浮かび上がる。
「悪いアリア、行ってくる」
気づけば身体が動いていた。
部屋の窓を開け、二階から飛び降り森へとかける。
「【脚力強化】、【耐久性向上】」
肉体に付与し、全力で街を抜ける。
「アリア様、至急討伐パーティーの要請を!」
「ううん、もう必要ないわ」
「えっ、ですが!」
「大丈夫よ。彼が向かってくれたから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ……はぁ……」
「っ、くそっ、もう脚が……」
「立ってステラ!」
ステラは槍を地面に突き立て、腕の力で立ち上がる。
彼女の脚は傷だらけで、もはや立っていることすらままならない。
それは彼女だけではない。
ミルアも左腕に傷を負い、右手でしか剣を握れない。
ソフィアも魔力切れで昏睡寸前の状態だった。
三人の後ろには、意識を失った男性が倒れている。
この男性を守るため、彼女たちは奮闘した。
約三十分もの間、トロール八体を相手に――
だが、それも限界に達していた。
トロールの肉体についた傷は、何事もなかったかのように再生する。
三人には傷が増えるばかり。
勝ち目はなく、死という終わりが目の前まで迫っている。
「このままじゃ……でも!」
「諦めないぞ! 絶対帰るんだ!」
「……うん」
それでも決意や揺らいでいない。
生き残るため、彼女たちは武器を構える。
そんな覚悟を踏みにじるように、トロールは迫り、彼女たちに拳を振り上げる。
「【ぶっとべ】」
次の瞬間。
拳をあげたトロールは、激しい音と一緒に吹き飛んだ。
「なっ……」
「今のって!」
その声と光景を、彼女たちは覚えている。
かつて、村を襲った魔王軍。
絶望の中で、彼女たちを救った一人の英雄と――
姿が重なる。
わずかに地面が揺れ、振動と共に音が聞こえた。
男性を担ごうと腰をしていた彼女たちが、ピタリと動きを止める。
同時に感じ取った気配は、すぐ後ろに迫っていた。
三人はごくりと息をのむ。
だが、現れたのは怪我をした女性だった。
木の陰から顔を出し、身体の半分は隠れている。
ほっと安堵した三人は、悲鳴をあげた女性が逃げてきたのだろうと考える。
「良かった。早っ……」
声をかけようとしたミルアは戦慄する。
安堵などしてはならなかった。
その女性は逃げてきたのではなく、連れて来られただけだ。
隠れている身体の半分は、すでに存在しないものとなっていた。
血を流し、臓物が垂れている。
食い散らかされていたのだ。
恐ろしい巨漢のモンスターによって。
「な、何だよあれ!」
「トロールだ……森の深い所にいるっていうモンスターだよ!」
「はっ? 何でそんなのがここに」
「――来る!」
トロールが叫ぶ。
女性の残り半分を投げ捨て、三人に向っていく。
ミルアが慌てて意識を失った男性を担ぎ、ステラが応戦する。
「くそっ、やるしかない!」
「援護する」
ソフィアが杖を構え、ステラの後方で待機する。
その隙にミルアは、離れた場所まで男性を移動させる。
トロールの情報は、シオンから聞いて知っている。
いずれ戦う相手だからと、教えてもらったのはつい最近のことだった。
森の深部に住まうモンスターは、彼女たちには荷が重い。
それでも、成長した彼女たちであれば、戦うことは出来る。
トロールが腕を振り下ろす。
ステラはくるりと回転して躱し、その勢いをのせて槍で薙ぐ。
「っ、おりゃ!」
トロールは強力なモンスターだ。
巨体の割にスピードがあり、一撃で岩を砕ける破壊力を持っている。
が、恐ろしいのはそこではない。
「もう再生しちゃったぞ」
「速い……」
自己再生
トロールが持つ固有スキルであり、最大の長所。
致命傷以外は瞬時に回復してしまう。
ステラがつけた傷も、一瞬のうちに再生されてしまった。
トロールに物理攻撃は効きにくい。
攻略法は、一撃で肉体を破壊してしまうか、弱点である炎の攻撃をくらわせること。
「フレアショット」
それを知っていたソフィアは、ステラが作った隙をついて魔法を放った。
火球はトロールの腹部に着弾し、全身へと燃え広がる。
シオンとの特訓で、以前よりもコントロールが向上していた。
「よっしゃ! ナイスだぜ、フィー!」
「うん。……まだ!」
ソフィアが大きな声をあげた。
直後にステラも気配に気づき、槍を構えて一歩下がる。
燃える一体のトロールの背後。
木を押し倒しながら歩いてきたのは、トロールの群れだった。
「冗談だろ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、君は何してるの?」
「見ての通り休憩中だけど」
「いやまぁ、それはわかるんだけどさ。あの子たちは? 今日が最後でしょ?」
「あいつらならクエストで森の中だ。俺なしでもやっていけるか、どうか確かめるためにな」
「なるほど」
ギルドマスターの部屋。
ソファーで向かい合って座る俺とアリア。
机の上には紅茶の入ったコップが置かれ、穏やかな時間が過ぎている。
「そういうアリアは?」
「アタシも休憩中よ。やっと書類業務が一区切りついたの」
視線を窓のほうに向ける。
別の机の上に積まれた書類の山が見えた。
「ギルドマスターも大変そうだな」
「まぁね。偶には思いっきり身体を動かしたいよ」
「良いんじゃないか?」
「ん、だったら今度一緒にドラゴンでも倒しに行くかい?」
アリアはニコッと微笑みながら物騒なことを口にした。
そんな……ちょっと買い物に行こう、みたいに誘う内容じゃないぞ。
冗談なんだろうけど、彼女が言うと本気にも聞こえてしまう。
「やれやれ」
呟いて、時計に目を向ける。
出発してから、もう二時間は経過していた。
「心配なら見に行けばいいのに」
「……いや、そんなことしたら台無しだ」
「そう? 君がそう言うならきっと――」
大丈夫だと思う。
アリアはたぶん、そう言おうとしたんだ。
だけど、言葉は途中で扉の音に遮られてしまった。
「アリア様!」
「エマ? どうしたのそんなに慌てて」
「たった今報告がありました。サザーク森林表層で、トロールの群れが現れたそうです」
「トロールが?」
アリアが驚き目を見開く。
俺も信じられなくて、息を切らしているエマに尋ねる。
「待て待て、あれは深部に巣食ってモンスターだろ?」
「はい。ですが、すでに被害が出ております」
そう言って、エマは地図を取り出し森の一部にマークをつける。
「ここが確認されたポイントです」
「ここって……」
地図で示された場所は、トラップが設置されている付近だった。
その瞬間、俺の脳裏に最悪の可能性が浮かび上がる。
「悪いアリア、行ってくる」
気づけば身体が動いていた。
部屋の窓を開け、二階から飛び降り森へとかける。
「【脚力強化】、【耐久性向上】」
肉体に付与し、全力で街を抜ける。
「アリア様、至急討伐パーティーの要請を!」
「ううん、もう必要ないわ」
「えっ、ですが!」
「大丈夫よ。彼が向かってくれたから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ……はぁ……」
「っ、くそっ、もう脚が……」
「立ってステラ!」
ステラは槍を地面に突き立て、腕の力で立ち上がる。
彼女の脚は傷だらけで、もはや立っていることすらままならない。
それは彼女だけではない。
ミルアも左腕に傷を負い、右手でしか剣を握れない。
ソフィアも魔力切れで昏睡寸前の状態だった。
三人の後ろには、意識を失った男性が倒れている。
この男性を守るため、彼女たちは奮闘した。
約三十分もの間、トロール八体を相手に――
だが、それも限界に達していた。
トロールの肉体についた傷は、何事もなかったかのように再生する。
三人には傷が増えるばかり。
勝ち目はなく、死という終わりが目の前まで迫っている。
「このままじゃ……でも!」
「諦めないぞ! 絶対帰るんだ!」
「……うん」
それでも決意や揺らいでいない。
生き残るため、彼女たちは武器を構える。
そんな覚悟を踏みにじるように、トロールは迫り、彼女たちに拳を振り上げる。
「【ぶっとべ】」
次の瞬間。
拳をあげたトロールは、激しい音と一緒に吹き飛んだ。
「なっ……」
「今のって!」
その声と光景を、彼女たちは覚えている。
かつて、村を襲った魔王軍。
絶望の中で、彼女たちを救った一人の英雄と――
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