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【追放】三姉妹聖女
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国外追放――の四日前。
ちょうど活動資金と荷物を確認し終わって、部屋に戻った時。
私は二人と自室で、作戦会議ならぬひそひそ話をしきっていた。
「二人ともよく聞いて。ここままだと私たちは離れ離れになるわ」
「うん」
「離れ離れはやだよ」
「ええ、でもデリント王子の提案にのっても、きっと幸せにはなれないと思うの」
二人はうんうんと頷いている。
意味は理解できなくとも、邪な考えだということは察している様子。
これで話を進めやすい。
「だからね? 私たち三人で国を出ましょう」
「えぇ!?」
「サーシャちゃん……声が大きい」
「ご、ごめんカリナお姉ちゃん」
パッと両手で口をふさぐサーシャ。
カリナが私に尋ねてくる。
「どうするの?」
「さっきの荷台を見たでしょう? あんなにたくさんの荷物だもの。一つくらい増えていても不自然には思われないわ」
私の思いついた考えはこうだ。
まず、私が聖女として残ることを陛下に伝える。
ついでに王子の提案もお断りしよう。
二人は出て行くための準備に入る。
私は何とかして、他の人にバレないよう荷台へ隠れる。
落ち着くためにしばらく誰とも会いたくない、とか言えば上手く立ち回れるはず。
あとは身を潜めて、王城を出たらひたすら逃げる。
「そう……」
「上手く行くかな?」
「上手く行かせるわ。それが一番、三人で幸せになれる方法よ」
活動資金、荷物共に予想以上にもらえている。
三人分で計算しても、しばらくは平凡に暮らしていける量だった。
陛下には悪いけど、私たちは一人を犠牲にする道を選ばない。
そんな道を選ぶくらいなら、三人で大変な日常へ飛び込むほうがマシだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして当日。
私たちは何とか、目的通り三人で王城を出ることが出来た。
荷台に袋詰めされている間は大変だったわ。
馬車が揺れるたびに腰とかいろんな場所をぶつけて、何度か声を上げそうになったけど我慢した。
ようやく外に出られた時の解放感は、これ以上ない喜びに満ちていたと思う。
感慨にふけっていると、カリナがちょんちょんと私の肩をつついて言う。
「アイラ、早く移動したほうが」
「そうね。サーシャ、運転お願いするわ」
「うん、任せてよ! 騎士さんたちに習っておいてよかったな~」
私は荷台から前の座席へ移動して、三人並んで座る。
真ん中に座っているサーシャの運転で、馬車はガタンゴトンと動き出した。
サーシャが運転しながらつぶやく。
「今ごろお城はどうなってるかな~」
「大混乱?」
「ふふっ、そうかもしれないわね」
陛下には迷惑をかけてしまうし、その点は申し訳ないと思う。
でもこれが一番良かったはずだとも思っている。
少なくとも一人、悔しがっている人がいるだろうから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷の前に現れたデリント王子。
陛下の命令で、屋敷への出入りは控えるように言われているが、彼はそれを無視して中へと入った。
揚々と歩いて向かったのは、アイラがこもっている部屋。
「私の誘いを断るとは予想外だったが……まぁ良い。その分は彼女にしっかり奉仕してもらおうじゃないか」
なんてことを口にしている。
彼が事実を知って唇を噛みしめるまで、あと数分。
部屋の前に到着したデリント王子は、おほんと咳ばらいをして話しかける。
「アイラ! 私だ! 父上には止められていたがね、心配になってきてしまったよ」
中から返事はない。
「落ち込んでいるのだろう? 私が慰めてあげようじゃないか」
これにも応答はない。
王子はやれやれと首を振り、扉に手を伸ばす。
「いつまでも引き籠っていては健康に良くない。さぁ私と一緒に――開いている?」
扉には鍵がかけられておらず、簡単に開いた。
首を傾げる王子。
彼が中を見渡すが、そこには誰もいない。
「なぜ誰も……ん? これは……」
王子は机の上にある手紙に気付く。
手に取って確認すると、そこには――
デリント王子へ。
貴方と婚約なんてまっぴら御免です。
妹たちも貴方の言いなりにはなりたくないそうです。
最後に一つ教えておきます。
いやらしい目を直さないと、一生誰とも結婚なんてできませんよ?
と、王子への想いのこもったメッセージが記されていた。
「……あの女ぁ……」
この時の王子の顔は、羞恥と怒りでぐちゃぐちゃになっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今頃きっと悔しがってるわ。その時の顔が見れないのは残念だけど、これでスッキリしたわね」
ようやく素直になれる。
あんな気持ち悪い人との婚約なんて絶対に嫌。
こっちから婚約破棄させてもらえて、肩の荷が下りた気分ね。
「アイラお姉ちゃん、このまま真っすぐでいいの?」
「ええ。一先ずはずっと東へ行きましょう」
行く当てはないけど、その代わり自由にどこへも行ける。
まずはこの国の領土を抜けて、どこで暮らすのかは後から考えることにしよう。
馬車の後ろを振り向いても、小さくぼんやりと首都が見える。
「さようなら」
もう二度と、ここへ戻ることはないだろう。
ちょうど活動資金と荷物を確認し終わって、部屋に戻った時。
私は二人と自室で、作戦会議ならぬひそひそ話をしきっていた。
「二人ともよく聞いて。ここままだと私たちは離れ離れになるわ」
「うん」
「離れ離れはやだよ」
「ええ、でもデリント王子の提案にのっても、きっと幸せにはなれないと思うの」
二人はうんうんと頷いている。
意味は理解できなくとも、邪な考えだということは察している様子。
これで話を進めやすい。
「だからね? 私たち三人で国を出ましょう」
「えぇ!?」
「サーシャちゃん……声が大きい」
「ご、ごめんカリナお姉ちゃん」
パッと両手で口をふさぐサーシャ。
カリナが私に尋ねてくる。
「どうするの?」
「さっきの荷台を見たでしょう? あんなにたくさんの荷物だもの。一つくらい増えていても不自然には思われないわ」
私の思いついた考えはこうだ。
まず、私が聖女として残ることを陛下に伝える。
ついでに王子の提案もお断りしよう。
二人は出て行くための準備に入る。
私は何とかして、他の人にバレないよう荷台へ隠れる。
落ち着くためにしばらく誰とも会いたくない、とか言えば上手く立ち回れるはず。
あとは身を潜めて、王城を出たらひたすら逃げる。
「そう……」
「上手く行くかな?」
「上手く行かせるわ。それが一番、三人で幸せになれる方法よ」
活動資金、荷物共に予想以上にもらえている。
三人分で計算しても、しばらくは平凡に暮らしていける量だった。
陛下には悪いけど、私たちは一人を犠牲にする道を選ばない。
そんな道を選ぶくらいなら、三人で大変な日常へ飛び込むほうがマシだから。
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そして当日。
私たちは何とか、目的通り三人で王城を出ることが出来た。
荷台に袋詰めされている間は大変だったわ。
馬車が揺れるたびに腰とかいろんな場所をぶつけて、何度か声を上げそうになったけど我慢した。
ようやく外に出られた時の解放感は、これ以上ない喜びに満ちていたと思う。
感慨にふけっていると、カリナがちょんちょんと私の肩をつついて言う。
「アイラ、早く移動したほうが」
「そうね。サーシャ、運転お願いするわ」
「うん、任せてよ! 騎士さんたちに習っておいてよかったな~」
私は荷台から前の座席へ移動して、三人並んで座る。
真ん中に座っているサーシャの運転で、馬車はガタンゴトンと動き出した。
サーシャが運転しながらつぶやく。
「今ごろお城はどうなってるかな~」
「大混乱?」
「ふふっ、そうかもしれないわね」
陛下には迷惑をかけてしまうし、その点は申し訳ないと思う。
でもこれが一番良かったはずだとも思っている。
少なくとも一人、悔しがっている人がいるだろうから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷の前に現れたデリント王子。
陛下の命令で、屋敷への出入りは控えるように言われているが、彼はそれを無視して中へと入った。
揚々と歩いて向かったのは、アイラがこもっている部屋。
「私の誘いを断るとは予想外だったが……まぁ良い。その分は彼女にしっかり奉仕してもらおうじゃないか」
なんてことを口にしている。
彼が事実を知って唇を噛みしめるまで、あと数分。
部屋の前に到着したデリント王子は、おほんと咳ばらいをして話しかける。
「アイラ! 私だ! 父上には止められていたがね、心配になってきてしまったよ」
中から返事はない。
「落ち込んでいるのだろう? 私が慰めてあげようじゃないか」
これにも応答はない。
王子はやれやれと首を振り、扉に手を伸ばす。
「いつまでも引き籠っていては健康に良くない。さぁ私と一緒に――開いている?」
扉には鍵がかけられておらず、簡単に開いた。
首を傾げる王子。
彼が中を見渡すが、そこには誰もいない。
「なぜ誰も……ん? これは……」
王子は机の上にある手紙に気付く。
手に取って確認すると、そこには――
デリント王子へ。
貴方と婚約なんてまっぴら御免です。
妹たちも貴方の言いなりにはなりたくないそうです。
最後に一つ教えておきます。
いやらしい目を直さないと、一生誰とも結婚なんてできませんよ?
と、王子への想いのこもったメッセージが記されていた。
「……あの女ぁ……」
この時の王子の顔は、羞恥と怒りでぐちゃぐちゃになっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今頃きっと悔しがってるわ。その時の顔が見れないのは残念だけど、これでスッキリしたわね」
ようやく素直になれる。
あんな気持ち悪い人との婚約なんて絶対に嫌。
こっちから婚約破棄させてもらえて、肩の荷が下りた気分ね。
「アイラお姉ちゃん、このまま真っすぐでいいの?」
「ええ。一先ずはずっと東へ行きましょう」
行く当てはないけど、その代わり自由にどこへも行ける。
まずはこの国の領土を抜けて、どこで暮らすのかは後から考えることにしよう。
馬車の後ろを振り向いても、小さくぼんやりと首都が見える。
「さようなら」
もう二度と、ここへ戻ることはないだろう。
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