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長女アイラ
Ⅶ
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一国の王子と対等に並び立てる実績を作れ。
メルフィス王子の優しい助言を頭に思い浮かべながら、私は夜を過ごすようになった。
静かな時間に落ち着いて考えてみる。
でも、中々良いアイデアは浮かばない。
というより、そんな都合の良いことが思いつくはずもない。
「はぁ~」
私が好きだった王子様の物語。
ただの村娘が偶然と度胸で成り上がって、最後には王子妃になる。
今、私がやろうとしているのはまさしくそれだ。
物語のような偶然に期待しながら、気長に待つしかないのだろうか。
翌日――
私は普段通りに朝食を準備して、サーシャを起こしに行った。
「サーシャ、もう――あれ?」
「えっへへ~ 今日は起きてるんだな~」
「珍しいわね。自分からちゃんと起きれるなんて」
普段は近づいて声をかけないと起きないのに、私が部屋に入ると着替え終わったサーシャがいた。
いつになく上機嫌のサーシャを見て、私は尋ねる。
「もしかして、今日は特別な予定でもあったの?」
「う~ん、まだ内緒!」
そう言いながら、嬉しそうな笑顔を見せている。
内容はわからないけど、間違いなくこれから良いことがあるに違いない。
元々元気でニコニコしているサーシャだけど、今日は一段とキラキラしている。
思い返せば最近も、活き活きとしている感じがした。
「サーシャ」
「なーに?」
「お仕事は楽しい?」
「もちろん!」
それを聞いて、私は嬉しくて微笑む。
サーシャと一緒に一階へ降りて、朝食をとる。
さっきの話があった所為か、カリナの近況も気になり始めた。
「ねぇカリナ」
「何?」
「お仕事はどう? 忙しそうだけど」
「まぁ、うん。忙しいけど大丈夫」
近頃、帰りが遅くなっているカリナ。
司書のお仕事はパッと想像できなくて、忙しそうだなという感覚だけがある。
ただカリナの場合、私たちには内緒にしていることがあるみたい。
どちらかというと、忙しいのはそっちなんじゃないかと予想している。
「本当に大変だった言いなさいよ? 私が手伝えることがあったら手伝うわ」
「ううん、大丈夫。わたしが……自分でやりたいことだから」
カリナはハッキリと私に言った。
彼女がそんな風に言うなんて珍しい。
サーシャと言い、カリナもやりたいことに向って突き進んでいるようだ。
私も頑張らないと。
二人の様子に鼓舞されて、心の中でそう呟く。
色々と考えることが多い毎日だ。
とにかく今は、私にやれることを精一杯やって、その中で新しいことも見つけよう。
それに、あの日からハミルと話せていない。
「そろそろ会いたいなぁ」
二人には聞こえない小さな声で、私は自分の気持ちを呟いた。
それから時間が経過し、聖堂での昼が終わる。
聖女として役目を果たしながら、頭の片隅には彼のことを考えていた。
こんな中途半端な姿勢だと、主に呆れられてしまいそうだ。
そんなことを考えながら、午後のお務めをおえる。
私は何気なく、裏庭に顔を出した。
ちょこんと椅子に座り、希望的観測を頭に思い浮かべる。
「ハミル……」
「呼んだか?」
「えっ――あ!」
壁からひょこっと飛び出した銀色の頭。
華麗にジャンプして着地して見せたのは、さっきまで頭に思い浮かべていた彼だった。
「よぉ、アイラ。また遊びに来てたぞ」
「うん」
「ん? 何だよ、いつもみたいに抜け出した云々は言わないんだな」
「えっ、ああ……忘れてたよ」
私はニコリと微笑んで誤魔化す。
彼に会いたいと思っていたから、いつもの皮肉も出てこなかったな。
「まぁいいや。隣いいか?」
「もちろん」
ハミルは私の隣に座る。
この後は大抵、互いの近況を報告し合うのだけど……
「……」
「……」
何だか気まずくて、話しを切り出し辛い。
聞きたいことはあるのに、それを口にしてもいいのか悩ましい。
メルフィス王子との話は、本人から伝えないようにと言われているし。
「なぁアイラ」
「な、何?」
「その……ちょっと前に兄上が帰ってきたんだよ」
ハミルから話を切り出してくれた。
私は頷いて、それに合わせる。
「知ってる。あいさつに来てくれたから」
「そうらしいな。で……」
「ん?」
「兄上に変なこと言われなかったか?」
ハミルは心配そうに私を見つめている。
その表情を見て私は察する。
たぶん、ハミルは色々と詰め寄った話をされたのだろう。
彼からメルフィス王子のことは聞いていて、身内には厳しいと話していたから。
「ううん、ただ挨拶をしただけだよ」
「そ、そうか」
ほっとしている様子だ。
嘘をついてしまったけど、王子との約束だから仕方がない。
「俺の方はさ……色々言われたよ」
「色々って?」
「それはまぁ、色々さ。これでも俺は王子だから、考えないといけないこととか、無視できないことも多い」
知っているよ。
見て、聞いてきたから。
「儘ならないことばかりだけど、王子だからって自分ことを諦めたくないんだよ。だからさ――」
ハミルが私を見つめる。
私も見つめ返す。
「まだ言えないけど、いずれちゃんと伝えるから。それまで待っていてほしい」
「――うん」
気持ちは同じだと、私たちは確かめ合う。
メルフィス王子の優しい助言を頭に思い浮かべながら、私は夜を過ごすようになった。
静かな時間に落ち着いて考えてみる。
でも、中々良いアイデアは浮かばない。
というより、そんな都合の良いことが思いつくはずもない。
「はぁ~」
私が好きだった王子様の物語。
ただの村娘が偶然と度胸で成り上がって、最後には王子妃になる。
今、私がやろうとしているのはまさしくそれだ。
物語のような偶然に期待しながら、気長に待つしかないのだろうか。
翌日――
私は普段通りに朝食を準備して、サーシャを起こしに行った。
「サーシャ、もう――あれ?」
「えっへへ~ 今日は起きてるんだな~」
「珍しいわね。自分からちゃんと起きれるなんて」
普段は近づいて声をかけないと起きないのに、私が部屋に入ると着替え終わったサーシャがいた。
いつになく上機嫌のサーシャを見て、私は尋ねる。
「もしかして、今日は特別な予定でもあったの?」
「う~ん、まだ内緒!」
そう言いながら、嬉しそうな笑顔を見せている。
内容はわからないけど、間違いなくこれから良いことがあるに違いない。
元々元気でニコニコしているサーシャだけど、今日は一段とキラキラしている。
思い返せば最近も、活き活きとしている感じがした。
「サーシャ」
「なーに?」
「お仕事は楽しい?」
「もちろん!」
それを聞いて、私は嬉しくて微笑む。
サーシャと一緒に一階へ降りて、朝食をとる。
さっきの話があった所為か、カリナの近況も気になり始めた。
「ねぇカリナ」
「何?」
「お仕事はどう? 忙しそうだけど」
「まぁ、うん。忙しいけど大丈夫」
近頃、帰りが遅くなっているカリナ。
司書のお仕事はパッと想像できなくて、忙しそうだなという感覚だけがある。
ただカリナの場合、私たちには内緒にしていることがあるみたい。
どちらかというと、忙しいのはそっちなんじゃないかと予想している。
「本当に大変だった言いなさいよ? 私が手伝えることがあったら手伝うわ」
「ううん、大丈夫。わたしが……自分でやりたいことだから」
カリナはハッキリと私に言った。
彼女がそんな風に言うなんて珍しい。
サーシャと言い、カリナもやりたいことに向って突き進んでいるようだ。
私も頑張らないと。
二人の様子に鼓舞されて、心の中でそう呟く。
色々と考えることが多い毎日だ。
とにかく今は、私にやれることを精一杯やって、その中で新しいことも見つけよう。
それに、あの日からハミルと話せていない。
「そろそろ会いたいなぁ」
二人には聞こえない小さな声で、私は自分の気持ちを呟いた。
それから時間が経過し、聖堂での昼が終わる。
聖女として役目を果たしながら、頭の片隅には彼のことを考えていた。
こんな中途半端な姿勢だと、主に呆れられてしまいそうだ。
そんなことを考えながら、午後のお務めをおえる。
私は何気なく、裏庭に顔を出した。
ちょこんと椅子に座り、希望的観測を頭に思い浮かべる。
「ハミル……」
「呼んだか?」
「えっ――あ!」
壁からひょこっと飛び出した銀色の頭。
華麗にジャンプして着地して見せたのは、さっきまで頭に思い浮かべていた彼だった。
「よぉ、アイラ。また遊びに来てたぞ」
「うん」
「ん? 何だよ、いつもみたいに抜け出した云々は言わないんだな」
「えっ、ああ……忘れてたよ」
私はニコリと微笑んで誤魔化す。
彼に会いたいと思っていたから、いつもの皮肉も出てこなかったな。
「まぁいいや。隣いいか?」
「もちろん」
ハミルは私の隣に座る。
この後は大抵、互いの近況を報告し合うのだけど……
「……」
「……」
何だか気まずくて、話しを切り出し辛い。
聞きたいことはあるのに、それを口にしてもいいのか悩ましい。
メルフィス王子との話は、本人から伝えないようにと言われているし。
「なぁアイラ」
「な、何?」
「その……ちょっと前に兄上が帰ってきたんだよ」
ハミルから話を切り出してくれた。
私は頷いて、それに合わせる。
「知ってる。あいさつに来てくれたから」
「そうらしいな。で……」
「ん?」
「兄上に変なこと言われなかったか?」
ハミルは心配そうに私を見つめている。
その表情を見て私は察する。
たぶん、ハミルは色々と詰め寄った話をされたのだろう。
彼からメルフィス王子のことは聞いていて、身内には厳しいと話していたから。
「ううん、ただ挨拶をしただけだよ」
「そ、そうか」
ほっとしている様子だ。
嘘をついてしまったけど、王子との約束だから仕方がない。
「俺の方はさ……色々言われたよ」
「色々って?」
「それはまぁ、色々さ。これでも俺は王子だから、考えないといけないこととか、無視できないことも多い」
知っているよ。
見て、聞いてきたから。
「儘ならないことばかりだけど、王子だからって自分ことを諦めたくないんだよ。だからさ――」
ハミルが私を見つめる。
私も見つめ返す。
「まだ言えないけど、いずれちゃんと伝えるから。それまで待っていてほしい」
「――うん」
気持ちは同じだと、私たちは確かめ合う。
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