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第二章
29.死力を尽くせ
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リッチーの不死性は極めて高い。
他のアンデッドの追随を許さない圧倒的な死の拒絶。
他者には死を強制し、自身は死を退ける。
なんとも自分勝手な存在だ。
「だが、死せる者は尽きぬ」
極光で消滅させた途端、次のアンデッドを召喚しようとする。
アンデッドの数はそのままリッチーの強さを意味する。
「どれだけ貯めこんでるんだ?」
極光で消滅させてもキリがない。
この地形、空間にいる限り際限なく湧き出るのか。
だったらまず地面を塞ぐ。
「氷天!」
足元から氷の膜を生み出し、地面を一瞬にして凍結させる。
範囲も強度も魔力量次第。
「これで簡単にアンデッドは召喚できないぞ」
魔力量の多さだけが唯一の自慢だ。
この氷はそう簡単に破壊できない。
たとえリッチーの魔術であってもだ。
「素晴らしい!」
リッチーが喜んでいる?
この状況でひるみもしないのはさすがだ。
手下を封じられた程度じゃ何も変わらないと言われている気分になる。
だがこれで、リッチー本体を攻撃できる。
リッチーは素手だ。
武器を持っている俺のほうが接近戦は有利なはず!
「デスサイズ!?」
「我に武器がないとでも思ったか?」
斬りかかった剣は大鎌にはじかれる。
まがまがしいオーラをまとった漆黒の大鎌だ。
明らかにただの武器じゃない。
確認がいるな。
「――看破」
物体を見ることで、そこに含まれた情報を読み取る術式。
シータから共有された二十一の術式は、どれも便利なものが多くて助かる。
大鎌の情報が脳内に流れる。
「……なるほどな。即死効果か」
「明答」
大方予想通りか。
あの大鎌に斬られれば即死する。
攻撃を受けるわけにはいかない。
ならば接近戦ではなく。
「魔術で攻めるまで!」
俺は右手を前にかざす。
リッチーの弱点は聖なる光と――
「――気炎!」
荒々しく燃える豪炎を放つ。
アンデッドたちの弱点に炎がある。
リッチーも例外じゃない。
不死の肉体も炎に焼かれれば再生の妨げになる。
弱いアンデッドならそのまま消し炭にできる一撃だ。
無論……。
「アイスレイジ」
この程度で終わる相手じゃない。
リッチーも魔術で応戦。
氷の壁を生成し、俺の炎を防いだ。
俺の炎を防ぐか。
かなりの魔力出力と精密性だ。
おそらく術式の練度はあちらが上。
だけど!
「極光+気炎!」
術式の格はこちらが上だ!
聖なる光と炎の合わせ技。
さすがのリッチーも氷の壁だけでは防御できず、そのまま右へ飛び避ける。
俺はリッチーに切っ先を向ける。
「極光!」
回避直後だ。
次の行動にもワンテンポ遅れる。
回避も防御も間に合わない。
極光が当たる。
「よし!」
直撃した。
聖なる力の一撃だ。
リッチーといえど無傷では済まない。
はずだった。
「ぬるいな」
「なに……」
再生が間に合っている。
どういう不死性の高さだ。
だったら今度はもっと高出力で術式を――
前に出ようとした足が絡まる。
否、つかまれた。
地面から伸びるアンデッドの手が、俺の足首をがしっとつかんでいる。
「くそっ!」
リッチーに集中しすぎた。
いつの間にか氷の膜を突破されていたのか。
まずい。
「その命、喰らうぞ」
「くっ」
眼前に迫るリッチーが大鎌をふるう。
ぎりぎりで剣を構え軌道をそらす。
頭の横をかすめ、肩を斬られる。
「気炎!」
周囲に炎を放出。
リッチーもたまらず俺から離れた。
なんとか致命傷は防げたが……いや、あの大鎌はどんな攻撃だろうと即死。
「ぐ、う……」
「ほう。やはり一撃では死なないか。素晴らしき生命力だ」
「……はぁ、はぁ……」
魔力量が多くて助かった。
この手の能力は魔力量の多さで効果が上下する。
無尽蔵の魔力の前には即死も不完全。
それでも……。
「身体が……重い……」
呼吸が乱れる。
うまく手足に力が入らない。
このままじゃ……死――
「癒しなさい」
俺の身体を淡い光が包み込む。
痛みと苦しみが和らぎ、身体が軽くなっていく。
「エリーシュ様?」
「仕方ないでしょう? あなたに死なれると私も困るの」
「……貴様、聖女か」
「ええ。そうよ」
聖女とは聖なる力をその身に宿した存在。
魔力ではなく、聖なる力そのものが身から湧き出る特異体質。
胸の十字架はフェイク。
結界も彼女自身の能力だったのか。
「なんで隠してたんですか?」
「知られると面倒なの。言っておくけど、これを知っているのは私とあなただけよ」
「光栄ですね。それと、ありがとうございます」
「どういたしまして」
おかげで戦える。
まさか彼女に助けられるとは思わなかった。
不思議と情けなさは感じない。
「ラスト、私にコネクトで繋がりなさい。そうすれば私の力をあなたに共有できる」
「わかりました」
俺は彼女の手に触れる。
スキル『コネクト』の発動と同時に、彼女から聖なる力が流れ込む。
これで即死攻撃への耐性が上がった。
「余計なことを。味が悪くなるだろう」
「あらそう? だったらよかったわね」
「小賢しい……まずはお前から殺してしまおうか」
「させると思うか?」
彼女は殺させない。
「必ず守ります」
「ええ、信じているわ」
出会って間もない俺に命を預けてくれるのか。
この人は本当に……不思議な人だ。
さて、現実問題どう倒す?
極光の直撃を受けても大したダメージにはなっていない。
おそらく大鎌と同等の力で相殺したのだろう。
奴の身体は聖なる力を通しにくい。
外側からの攻撃はあまり効果がないのかもしれない。
だったら……。
「あとはどう当てるか」
「策など無駄だ」
漆黒のオーラが鞭のように伸びる。
無数に迫る攻撃は、俺とエリーシュを襲う。
「させない!」
魔力出力を全開に、加えてエリーシュから流れ込む聖なる力も載せる。
全身を強化して、迫る触手をすべて叩き落とす。
触手から大鎌と同じ力を感じる。
おそらくこれら一本一本も即死効果を持っている。
「っ……」
攻撃の手数が多すぎる。
近づくどころか凌ぐだけで精いっぱいだ。
「無駄な足掻きを」
「無駄じゃない。お前は知らないんだ」
感じる。
今も、この胸に。
「どれだけ遠く離れようと、俺たちは繋がっている」
「なにを――」
「ラスト様!」
空間に亀裂が走り、聞きたかった声が響く。
信じていたよ。
三人ならきっと、俺の元に駆けつけてくれると。
「待ってたよ、みんな」
他のアンデッドの追随を許さない圧倒的な死の拒絶。
他者には死を強制し、自身は死を退ける。
なんとも自分勝手な存在だ。
「だが、死せる者は尽きぬ」
極光で消滅させた途端、次のアンデッドを召喚しようとする。
アンデッドの数はそのままリッチーの強さを意味する。
「どれだけ貯めこんでるんだ?」
極光で消滅させてもキリがない。
この地形、空間にいる限り際限なく湧き出るのか。
だったらまず地面を塞ぐ。
「氷天!」
足元から氷の膜を生み出し、地面を一瞬にして凍結させる。
範囲も強度も魔力量次第。
「これで簡単にアンデッドは召喚できないぞ」
魔力量の多さだけが唯一の自慢だ。
この氷はそう簡単に破壊できない。
たとえリッチーの魔術であってもだ。
「素晴らしい!」
リッチーが喜んでいる?
この状況でひるみもしないのはさすがだ。
手下を封じられた程度じゃ何も変わらないと言われている気分になる。
だがこれで、リッチー本体を攻撃できる。
リッチーは素手だ。
武器を持っている俺のほうが接近戦は有利なはず!
「デスサイズ!?」
「我に武器がないとでも思ったか?」
斬りかかった剣は大鎌にはじかれる。
まがまがしいオーラをまとった漆黒の大鎌だ。
明らかにただの武器じゃない。
確認がいるな。
「――看破」
物体を見ることで、そこに含まれた情報を読み取る術式。
シータから共有された二十一の術式は、どれも便利なものが多くて助かる。
大鎌の情報が脳内に流れる。
「……なるほどな。即死効果か」
「明答」
大方予想通りか。
あの大鎌に斬られれば即死する。
攻撃を受けるわけにはいかない。
ならば接近戦ではなく。
「魔術で攻めるまで!」
俺は右手を前にかざす。
リッチーの弱点は聖なる光と――
「――気炎!」
荒々しく燃える豪炎を放つ。
アンデッドたちの弱点に炎がある。
リッチーも例外じゃない。
不死の肉体も炎に焼かれれば再生の妨げになる。
弱いアンデッドならそのまま消し炭にできる一撃だ。
無論……。
「アイスレイジ」
この程度で終わる相手じゃない。
リッチーも魔術で応戦。
氷の壁を生成し、俺の炎を防いだ。
俺の炎を防ぐか。
かなりの魔力出力と精密性だ。
おそらく術式の練度はあちらが上。
だけど!
「極光+気炎!」
術式の格はこちらが上だ!
聖なる光と炎の合わせ技。
さすがのリッチーも氷の壁だけでは防御できず、そのまま右へ飛び避ける。
俺はリッチーに切っ先を向ける。
「極光!」
回避直後だ。
次の行動にもワンテンポ遅れる。
回避も防御も間に合わない。
極光が当たる。
「よし!」
直撃した。
聖なる力の一撃だ。
リッチーといえど無傷では済まない。
はずだった。
「ぬるいな」
「なに……」
再生が間に合っている。
どういう不死性の高さだ。
だったら今度はもっと高出力で術式を――
前に出ようとした足が絡まる。
否、つかまれた。
地面から伸びるアンデッドの手が、俺の足首をがしっとつかんでいる。
「くそっ!」
リッチーに集中しすぎた。
いつの間にか氷の膜を突破されていたのか。
まずい。
「その命、喰らうぞ」
「くっ」
眼前に迫るリッチーが大鎌をふるう。
ぎりぎりで剣を構え軌道をそらす。
頭の横をかすめ、肩を斬られる。
「気炎!」
周囲に炎を放出。
リッチーもたまらず俺から離れた。
なんとか致命傷は防げたが……いや、あの大鎌はどんな攻撃だろうと即死。
「ぐ、う……」
「ほう。やはり一撃では死なないか。素晴らしき生命力だ」
「……はぁ、はぁ……」
魔力量が多くて助かった。
この手の能力は魔力量の多さで効果が上下する。
無尽蔵の魔力の前には即死も不完全。
それでも……。
「身体が……重い……」
呼吸が乱れる。
うまく手足に力が入らない。
このままじゃ……死――
「癒しなさい」
俺の身体を淡い光が包み込む。
痛みと苦しみが和らぎ、身体が軽くなっていく。
「エリーシュ様?」
「仕方ないでしょう? あなたに死なれると私も困るの」
「……貴様、聖女か」
「ええ。そうよ」
聖女とは聖なる力をその身に宿した存在。
魔力ではなく、聖なる力そのものが身から湧き出る特異体質。
胸の十字架はフェイク。
結界も彼女自身の能力だったのか。
「なんで隠してたんですか?」
「知られると面倒なの。言っておくけど、これを知っているのは私とあなただけよ」
「光栄ですね。それと、ありがとうございます」
「どういたしまして」
おかげで戦える。
まさか彼女に助けられるとは思わなかった。
不思議と情けなさは感じない。
「ラスト、私にコネクトで繋がりなさい。そうすれば私の力をあなたに共有できる」
「わかりました」
俺は彼女の手に触れる。
スキル『コネクト』の発動と同時に、彼女から聖なる力が流れ込む。
これで即死攻撃への耐性が上がった。
「余計なことを。味が悪くなるだろう」
「あらそう? だったらよかったわね」
「小賢しい……まずはお前から殺してしまおうか」
「させると思うか?」
彼女は殺させない。
「必ず守ります」
「ええ、信じているわ」
出会って間もない俺に命を預けてくれるのか。
この人は本当に……不思議な人だ。
さて、現実問題どう倒す?
極光の直撃を受けても大したダメージにはなっていない。
おそらく大鎌と同等の力で相殺したのだろう。
奴の身体は聖なる力を通しにくい。
外側からの攻撃はあまり効果がないのかもしれない。
だったら……。
「あとはどう当てるか」
「策など無駄だ」
漆黒のオーラが鞭のように伸びる。
無数に迫る攻撃は、俺とエリーシュを襲う。
「させない!」
魔力出力を全開に、加えてエリーシュから流れ込む聖なる力も載せる。
全身を強化して、迫る触手をすべて叩き落とす。
触手から大鎌と同じ力を感じる。
おそらくこれら一本一本も即死効果を持っている。
「っ……」
攻撃の手数が多すぎる。
近づくどころか凌ぐだけで精いっぱいだ。
「無駄な足掻きを」
「無駄じゃない。お前は知らないんだ」
感じる。
今も、この胸に。
「どれだけ遠く離れようと、俺たちは繋がっている」
「なにを――」
「ラスト様!」
空間に亀裂が走り、聞きたかった声が響く。
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三人ならきっと、俺の元に駆けつけてくれると。
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