身勝手な婚約者のために頑張ることはやめました!

風見ゆうみ

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14  悪いことを許すだなんてお断り

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「あなたにどうこう言われる筋合いはありません。それはお互い様ですからね。それに、ここにいる理由はちゃんとありますから」

 私が答えると、セインサーは訝しげな顔をして尋ねてきます。

「差し支えなければ、ここにいる理由というものがなんなのか教えていただけないでしょうか」

 自分だっておかしいのによく言えたものですね。

「かまいませんよ。マゼケキ様の命を狙っている人物がいるという情報が耳に入りましたの。殺されるかもしれない人を見捨てるのもどうかと思うでしょう」
「うああ!」

 突然、叫んだのはマゼケキ様でした。

 マゼケキ様は殺されるかもしれないという恐怖心からなのか、絶叫しながら逃げようとしました。

 ですが、ここ数日、寝たきりだったからか、足がうまく動かずに、ふらついた状態で部屋を出ていきます。

 彼のことは他の兵士が見てくれるので、今は放っておきましょう。

 笑顔でセインサーに話しかける。

「あなたが来たから、あんなにも怖がっているではないですか。あなたにはマゼケキ様を怯えさせる何かがあるのですか?」
「ち、違います! わたしは何もしていません!」
「何かしたかどうかは聞いていません。怯えさせる何かがあるのかと聞いただけです」
「べ、別にわたしは何も知りませんし、悪いことなどしていません!」
「……答えになっていませんね。それに、あなたは不正じみたことはしていましたけど、それは悪いこととは言わないのですか?」
「不正じみたこと?」

 セインサーは訝しげな顔で私を見つめます。

 何のことだか本当にわかっていないのでしょうか。
 私を殺害しようとする計画に関わっていたことは認めないにしても、書類についてはわかるでしょうに。

「自分だけ給料を上げようとしていましたよね。しかも、部下の給料を減らして自分に当てようとしていました。それは悪いことだとは思わないのですか?」
「そ、それは、その部下の勤務態度が悪かったので罰を与えようと思ったのです!」
「減給についてはまだ理解できても、あなたの給料が上がる理由がわかりません」
「それくらいのことは歴代の宰相はやって来ているんですよ!」

 今までは彼が好き放題していても、止める人間がいませんでした。
 両陛下は事なかれ主義ですし、王太子は仕事をしているようでしていません。

 外交面はセインサーもしっかりやって来たんでしょうけれど、帳簿類は無茶苦茶だし、国の財政ははっきり言って、どうなっているのかわかりません。

 ここまで国を荒らしたのだから、私の件で罪を問えなくても、横領などの件で捕まえることはできます。

 でも、それだけですと罰金で済む恐れがあります。

 それなら、殺人未遂で捕まえたほうが、彼に重い罰を与えられます。
 
 だから、マゼケキ様を囮にしたのです。

 レイディス曰く、最悪、犠牲になっても良い相手だそうです。

「前の人もやっていたなんて、言い訳は通じません。悪いことをしたのは確かでしょう。悪いことをしたという自覚もないのですか」
「ありませんよ! れっきとした報酬です!」
「認められませんから、却下したことは知っていますわよね」
「なんの権限があってそんなことをするんですか!」
「あなたと部下の関係は、私とあなたの関係のようなものだと思ってくださいませ」
「そ、それは、どういう意味です?」

 意味がわからないようなので説明して差し上げます。

「あなたは部下の勤務態度が悪かったから給料を下げて、自分の給料を上げようとした。ですから、私はあなたの勤務態度が悪いと思うので、あなたの給料を下げようと思います」
「そんな! ミュウミュウちゃんにプレゼントを買ってあげられないじゃないか!」

 ……ミュウミュウちゃんというのは、彼が足繁く通っているお店にいる女性の名前です。

 彼はミュウミュウちゃんに貢いで、借金までしています。

 ですから、給料を上げようとしたのでしょう。

「ミュウミュウさんにセインサー様は、二度とあなたの目の前に現れないと伝えたところ、悲しむ様子もなく、笑顔で、新しいカモを探しますと言っていましたよ」
「……そんな!」
「それから、奥様にもお話をしておきました。かなり、怒っていらっしゃいましたよ」

 セインサーは奥様が怖いんだそうです。

 奥様は何かあれば平手打ちをしたりして、暴力でわからせる、貴族には珍しいたくましい体格の女性だと聞いています。

 奥様の話を聞いたセインサーは顔が真っ青になったかと思うと、頭を抱えて泣き始めたのでした。

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