縁あって国王陛下のお世話係になりました

風見ゆうみ

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14 ノヌル公爵からの呼び出し①

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 世話係の話からだいぶ話はそれてしまったけれど、聞けば聞くほど、シュティル様は恨まれる対象ではない気がする。

 もしかしたら、マーラ様がマゼッタ様からロラルグリラの話を聞いて、それをロラルグリラにマゼッタ様が話をしたという可能性があるということよね。

 もしくは侍女かしら。
 侍女ならマゼッタ様の息がかかっていてもおかしくない。

 シュテーダム王国は半島にあり、イーノ王国とロラルグリラ王国に挟まれ、その他は海になっている。
 だから、他国の助けが遅くなった。

 イーノ王国は半島の大陸側にあり、他の国からの支援をわざと遅らせたのかもしれない。

 歴史書には支援が遅れたとしか書いていなかったけれど、こう考えると腑に落ちる。

 責任転嫁が酷すぎる。
 娘が幸せなら、それで良かったんじゃないの?

 マゼッタ様がどうしてシュテーダムをそこまで嫌っているのかはわからない。
 どんな理由だったとしても、文句があるなら結婚を許した自分の旦那様に言うべきじゃないの。

「ラナリーが世話係を引き受けてくれると言うのならば、トッテム公爵家に連絡しよう。最初はエーラ嬢と一緒に仕事をしてもらわないといけないかもしれない」
「望むところですわ」

 お義父さまに、にこりと笑ってみせると、ルラン様の口元が引きつったように見えた。



*****


 2日後の午後、ノヌル公爵から城に呼び出された私は、指定された場所ではなく、まずはルラン様に声を掛けることにした。
 私一人でも別に構わないのだけれど、お義父さまとお義母さまから反対された。

 事情を話すと、早退という形でルラン様は一緒に付いてきてくれることになった。
 シュティル様はルラン様から世話係の話を聞いたようで、エーラ様に聞こえないように小声で「楽しみにしてるね」と言ってくれた。
 その笑顔が本当に無邪気なものだったから、心から喜んでくれているみたいで嬉しかった。
 それから、マオのエーラ様への対応がかなりキツく、エーラ様が手を出そうとすると爪を出して猫パンチをしているのを見た。
 私の場合はそこまではいかないから、まだマシみたいだと思うと少し嬉しかった。

 ノヌル公爵から指定された場所は、城とつながっている政務棟と呼ばれる大きな建物だった。
 中に入ると、受付の人に用件を尋ねられたので、ノヌル公爵から呼び出されていると伝えると、すぐに応接室に案内してくれた。

 約束の時間よりも少し遅れた時間に、ノヌル公爵は挨拶もなしに入ってきた。
 詫びることもなく、ルラン様がいることに眉根を寄せる。

「君を呼んだ覚えはないんだがな」
「申し訳ございません。よろしければ私にもお話をお聞かせ願いたいのですが」
「まあ、かまわん」

 白髪交じりの長い黒髪を後ろで一つにまとめたノヌル公爵は、お義父さまと年齢が近いはずなのに、随分老けて見えた。
 たしか、まだ40代だったはずなのだけれど、50代後半に見えてしまう。
 中肉中背の体型で、眉間には深いシワが刻まれていて、とても気難しそうな印象を受けた。

 ノヌル公爵は私たちの向かいに座ると話を始める。

「単刀直入に言うが、世話係はエーラの仕事だ。よそ者は手を引け」
「お待ち下さい。陛下のお世話を任されているのはユリアス公爵家のはずです。そのかわり政治はノヌル公爵家にお任せすることになっているのでしょう。エーラ様の代わりが見つかったのですから、交代していただくことはおかしいことではありません」
「よそ者が偉そうに言うんじゃない」

 ノヌル公爵の言葉に私が言い返す前に、ルラン様が割って入る。

「彼女は私の妻です。よそ者ではありません。それともユリアス公爵家をよそ者だとおっしゃるのですか」
「そういうつもりではない! ただ、女のくせに一々、首をつっこんでくるなと言いたいだけだ」
「女性のくせにという言い方もどうかと思いますが、その返答では、先程のよそ者という言葉を使った理由にはなりません」
「ユリアス公爵家の嫁だからって偉そうにするな! 女は家で大人しくしていれば良いのだ!」
「エーラ様は家で大人しくされていませんけれど、女性ではないのでしょうか」

 言いすぎかもしれないけれど、間違っているとも思えないので言ってみると、ノヌル公爵は悔しそうな顔をした。
 




 説明の仕方が悪くて申し訳ないのですが、地図的に


 半島のロラルグリラが海側、その隣がシュテーダム、大陸側がイーノです。

 半島の端にあるロラルグリラが面している国はシュテーダムのみになります。
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