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22 勤務時間がブラックすぎる
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ジュネコの誤解を解いたあと、逃げていった父たちをどうするか、ジェイクと話をしていると、近くで話を聞いていた兵士がジェイクに尋ねる。
「あの男性は死んだ女性が生きていると言いたいようでしたね」
「ああ。葬式の時には自分の娘であることに間違いはないと言っていたんだけどな」
「どういうことなんでしょうか」
死んだはずの人間を生きていると言っていると言う人を見たら、不思議に思うわよね。
「俺もそう聞いていたんだが、答えてはもらえなかったんだ」
「そうでしたか。……ところで、ジェイク様は今日はどうされたのですか?」
「彼女がジュネコを見たいって言うから連れてきたんだ」
ジェイクが私を紹介してくれたので、笑顔で挨拶する。
「こんにちは! お勤めご苦労様です!」
「ひいっ! いつからいたんですか!?」
「あなたがジェイク……様に話しかけてくる前からいましたよ」
「そ、それは失礼しました」
兵士は怯えた様子で続ける。
「ここまで存在を消せるなんて、潜入捜査でもされている方ですか?」
「いいえ。平民1です」
魔道具の性能が良すぎると、悪用される可能性があるわね。
兵士は困惑した様子で「失礼しました」と頭を下げて持ち場に戻っていった。
「兵士はジュネコが来てから仕事が楽になったみたいで、心に余裕がある感じがするな」
「そうなのね。ジュネコには申し訳ないけど、引き続き頑張ってもらわなくちゃ」
ジュネコに目を向けると、言われなくともと言わんばかりに、またパトロールを再開していた。
「ねえ、ジェイク」
「ん?」
「今、ジュネコは休みなくパトロールしてるのよね」
「雨の日は頭に傘をつけてもらってるらしい。強風の日は飛ばされたり、物が飛んできて壊れる可能性があるから、室内から見張ってるらしいが、そう言われてみれば休みはないな」
ジェイクは答えてから眉根を寄せた。
勤務時間がブラックすぎる。
もちろん、検問所の人たちに悪意はないことはわかっている。ジュネコは眠らなくても良いし疲れない。だけど、ずっと働かされていると思うと、何だか可哀想になってきた。
「ジュネコに似た猫の置物を買いたいんだけど、見たことはある?」
「記憶にはないが探したらいいのか?」
「ううん。そこまでしてもらわなくても大丈夫よ。お客さんに聞いてみるわ」
「買ってどうするつもりなんだ?」
「上手くいったら、ジュネコと交代勤務してもらおうと思って……」
ジェイクは少しの沈黙のあと、ぼそりと呟く。
「あれがもう一体増えると思うと、頼もしいような恐ろしいような……」
「まだ上手くいくかはわからないわよ」
そう念押ししたあと、ジュネコに労いの言葉をかけ、兵士には次にあの二人が来ても相手にしないように伝え、今日のところは帰ることにした。
その日の夜遅く、タクリッボの店長が検問所から離れた場所にある外壁から侵入しようと試みたが、ジュネコによって阻止された。
ジュネコが異変を察知し、兵士に念話で知らせてくれたのだ。
店長は不法侵入の罪で領から追い出されるだけでは済まされず、魔道具を売買するための資格を永久に剥奪されることになった。
タクリッボの店長は捕まった際に、私に『嘘をついて良心は痛まないのか』と言っていたらしいが、彼にそんなことを言われても心に響くことはなかった。
大体、そんな嘘をつかなければいけなくなったのは父のせいなのだ。私に文句を言われても知ったことではない。それにタクリッボの店長の日頃の行いが良ければ、私だって情けをかけて助けていると思う。
父やシャゼットはタクリッボの店長が捕まったことで大人しくなり、ジュネコの相棒探しを続けていたある日のこと。開店前にエイフィック様が『ケッタイ』に訪ねてきたのだった。
「あの男性は死んだ女性が生きていると言いたいようでしたね」
「ああ。葬式の時には自分の娘であることに間違いはないと言っていたんだけどな」
「どういうことなんでしょうか」
死んだはずの人間を生きていると言っていると言う人を見たら、不思議に思うわよね。
「俺もそう聞いていたんだが、答えてはもらえなかったんだ」
「そうでしたか。……ところで、ジェイク様は今日はどうされたのですか?」
「彼女がジュネコを見たいって言うから連れてきたんだ」
ジェイクが私を紹介してくれたので、笑顔で挨拶する。
「こんにちは! お勤めご苦労様です!」
「ひいっ! いつからいたんですか!?」
「あなたがジェイク……様に話しかけてくる前からいましたよ」
「そ、それは失礼しました」
兵士は怯えた様子で続ける。
「ここまで存在を消せるなんて、潜入捜査でもされている方ですか?」
「いいえ。平民1です」
魔道具の性能が良すぎると、悪用される可能性があるわね。
兵士は困惑した様子で「失礼しました」と頭を下げて持ち場に戻っていった。
「兵士はジュネコが来てから仕事が楽になったみたいで、心に余裕がある感じがするな」
「そうなのね。ジュネコには申し訳ないけど、引き続き頑張ってもらわなくちゃ」
ジュネコに目を向けると、言われなくともと言わんばかりに、またパトロールを再開していた。
「ねえ、ジェイク」
「ん?」
「今、ジュネコは休みなくパトロールしてるのよね」
「雨の日は頭に傘をつけてもらってるらしい。強風の日は飛ばされたり、物が飛んできて壊れる可能性があるから、室内から見張ってるらしいが、そう言われてみれば休みはないな」
ジェイクは答えてから眉根を寄せた。
勤務時間がブラックすぎる。
もちろん、検問所の人たちに悪意はないことはわかっている。ジュネコは眠らなくても良いし疲れない。だけど、ずっと働かされていると思うと、何だか可哀想になってきた。
「ジュネコに似た猫の置物を買いたいんだけど、見たことはある?」
「記憶にはないが探したらいいのか?」
「ううん。そこまでしてもらわなくても大丈夫よ。お客さんに聞いてみるわ」
「買ってどうするつもりなんだ?」
「上手くいったら、ジュネコと交代勤務してもらおうと思って……」
ジェイクは少しの沈黙のあと、ぼそりと呟く。
「あれがもう一体増えると思うと、頼もしいような恐ろしいような……」
「まだ上手くいくかはわからないわよ」
そう念押ししたあと、ジュネコに労いの言葉をかけ、兵士には次にあの二人が来ても相手にしないように伝え、今日のところは帰ることにした。
その日の夜遅く、タクリッボの店長が検問所から離れた場所にある外壁から侵入しようと試みたが、ジュネコによって阻止された。
ジュネコが異変を察知し、兵士に念話で知らせてくれたのだ。
店長は不法侵入の罪で領から追い出されるだけでは済まされず、魔道具を売買するための資格を永久に剥奪されることになった。
タクリッボの店長は捕まった際に、私に『嘘をついて良心は痛まないのか』と言っていたらしいが、彼にそんなことを言われても心に響くことはなかった。
大体、そんな嘘をつかなければいけなくなったのは父のせいなのだ。私に文句を言われても知ったことではない。それにタクリッボの店長の日頃の行いが良ければ、私だって情けをかけて助けていると思う。
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