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10 お医者様
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「なあリサ、何でお前は俺のことをクレイ様って呼ぶんだ?」
「えっと、では、クレイ殿下?」
「違う! 普通にクレイって呼んだらいいだろ」
婚約お披露目パーティーから数日後のこと、私の部屋にやって来たクレイ様に言われ、私は首を傾げて聞き返します。
「そんな、親しい呼び方をしてもよろしいんですか?」
「一応、俺達は夫婦になるんだろ?」
「お飾りの夫と妻という関係ですが…」
「それはそれだ。俺は対等な関係でいたいんだよ。もちろん、リサが女王になれば、リサを優先するけどな」
「呼び方はあまり関係ない様な気がしますが…。それに、私を立てるのは人前だけでかまわないですし…」
「いいから!」
「わかりました」
クレイ様にも色々とこだわりがあるようです。
別に嫌というわけでもないので頷くと、クレイ様は言います。
「じゃあ、練習してみろよ」
「クレイ様」
「いや、さっきと一緒じゃねぇか」
「クレイ…。何か、落ち着きませんね」
「まあ、そのうち慣れるだろ」
「クレイ、クレイ、クレイ」
「もういい! 連呼されると、それはそれでなんか恥ずかしいだろ!」
クレイ様、じゃない。
クレイにぺちりと優しく額を叩かれてしまいました。
ツッコミというやつでしょうか。
「あ、あと、触れる時はちゃんと伝えようと思うけど、さっきみたいな感じの場合は勝手に触れてもいいか?」
「かまいません。そのかわり、私も触れますね」
部屋の中は温かいですが、寒い季節だからでしょうか。
クレイの手はとてもひんやりしていました。
なので、クレイの手をとって温めようと思います。
「何してるんだ」
「手が冷たいので、温めてさしあげようかと」
ソファーに向かい合って座っていましたが、クレイの隣に移動して、彼の右手を取って私の両手で包むと、クレイは慌てた様な顔をします。
「温めなくても大丈夫だよ!」
「ですけど、ひんやりしていますよ?」
「一応、俺とお前は男と女なんだから、そういうのは気を付けた方がいい」
「大丈夫ですよ! 間違いがあったとしても婚約者同士ですから!」
「間違いがあったら駄目だろ」
「人なんですから間違う事もありますよ!」
「いや、こういう時に使う言葉じゃねぇだろ」
クレイ様は大きく息を吐かれましたが、諦めたのか、私に大人しくニギニギされてくれます。
あ、ニギニギとは握る事です。
「ところで、何かご用でしたか?」
「ああ、そうだった。実は、俺の国のパーティーに誘われてるんだ。で、良かったら、パートナーとして一緒に出席してくれないか?」
「パーティーですか!」
「ああ。リサは好きか?」
「いつもお姉様が代表して行かれておりましたので、どんなものかなのか知らないんです! 楽しいですか?」
ぎゅうと手を握りしめて聞くと、クレイは手を握り返してくれながら答えてくれます。
「俺はあまり好きじゃない。それに、彼女も来るんだ」
「…彼女とは…?」
「ほら、あれだ」
言いにくそうにされるので気付きました。
クレイ様の好きな方の事でしょう!
たしか、ポピー・パーカー様です。
公爵令嬢だとお聞きしました。
「クレイ様、じゃない。クレイはよろしいのですか?」
「何が?」
「パーカー公爵令嬢もパートナーの方といらっしゃるのでは?」
「俺はフラレたんだから、彼女が誰と来ようがもういいんだ」
「……申し訳ございません」
「どうして謝るんだよ」
「言いたくない言葉を言わせてしまいまして」
頭を下げると、クレイが空いている方の手で頭を撫でてくれました。
「気にすんな」
いたずらっ子みたいな笑顔のクレイに、何だか胸が熱くなりました。
先日からどうしてなのでしょう?
病気でしょうか?
まだ、オッサムに後悔させるという目的も果たせていないのに、死ぬわけにはいきません!
何より、私は女王にならなければいけないんです。
明日、お医者さまにお話してみましょう…。
って、大変です!
「クレイ、もし病気になってしまったら、先生に診てもらわないといけませんよね」
「そうだな…って、ああ、医者に話をしてないのか」
「そうなんです。お知り合いに口のかたい、お医者さまはいらっしゃらないでしょうか」
「ここの王室のお抱えの医者はいないのか?」
「いますけれど、お母様派閥なんです」
「派閥って…、面倒な家族だな。後継者争いみたいなもんか」
クレイは小さく息を吐いてから、長い足を組んで続けます。
「心当たりはあるが、あんまり紹介したくない」
「どうしてです?」
「患者には手を出さないが、プライベートは別だとかいう男だ」
「意味がわからないのですが…」
「診療中に邪な考えはわかないが、プライベートで会うとなるとそうじゃないって事だよ」
クレイはこめかみに手を当ててから聞いてきます。
「そいつが男だという事とプライベートでの恋愛面は軽い奴だ。それでもいいなら紹介できるけどどうする?」
「男性のお医者さまは初めてではありませんし大丈夫です。とにかく、診てもらう前に、お会いできたら嬉しいですね」
「じゃあ、今度のパーティーで向こうに行く際に、会えるように段取りする。だけど、そいつとはプライベートでは絶対に2人で会うなよ!」
「承知いたしました!」
私は大きく首を縦に振りました。
それにしても、クレイにここまで言わせる先生って、どんな方なのでしょう?
「えっと、では、クレイ殿下?」
「違う! 普通にクレイって呼んだらいいだろ」
婚約お披露目パーティーから数日後のこと、私の部屋にやって来たクレイ様に言われ、私は首を傾げて聞き返します。
「そんな、親しい呼び方をしてもよろしいんですか?」
「一応、俺達は夫婦になるんだろ?」
「お飾りの夫と妻という関係ですが…」
「それはそれだ。俺は対等な関係でいたいんだよ。もちろん、リサが女王になれば、リサを優先するけどな」
「呼び方はあまり関係ない様な気がしますが…。それに、私を立てるのは人前だけでかまわないですし…」
「いいから!」
「わかりました」
クレイ様にも色々とこだわりがあるようです。
別に嫌というわけでもないので頷くと、クレイ様は言います。
「じゃあ、練習してみろよ」
「クレイ様」
「いや、さっきと一緒じゃねぇか」
「クレイ…。何か、落ち着きませんね」
「まあ、そのうち慣れるだろ」
「クレイ、クレイ、クレイ」
「もういい! 連呼されると、それはそれでなんか恥ずかしいだろ!」
クレイ様、じゃない。
クレイにぺちりと優しく額を叩かれてしまいました。
ツッコミというやつでしょうか。
「あ、あと、触れる時はちゃんと伝えようと思うけど、さっきみたいな感じの場合は勝手に触れてもいいか?」
「かまいません。そのかわり、私も触れますね」
部屋の中は温かいですが、寒い季節だからでしょうか。
クレイの手はとてもひんやりしていました。
なので、クレイの手をとって温めようと思います。
「何してるんだ」
「手が冷たいので、温めてさしあげようかと」
ソファーに向かい合って座っていましたが、クレイの隣に移動して、彼の右手を取って私の両手で包むと、クレイは慌てた様な顔をします。
「温めなくても大丈夫だよ!」
「ですけど、ひんやりしていますよ?」
「一応、俺とお前は男と女なんだから、そういうのは気を付けた方がいい」
「大丈夫ですよ! 間違いがあったとしても婚約者同士ですから!」
「間違いがあったら駄目だろ」
「人なんですから間違う事もありますよ!」
「いや、こういう時に使う言葉じゃねぇだろ」
クレイ様は大きく息を吐かれましたが、諦めたのか、私に大人しくニギニギされてくれます。
あ、ニギニギとは握る事です。
「ところで、何かご用でしたか?」
「ああ、そうだった。実は、俺の国のパーティーに誘われてるんだ。で、良かったら、パートナーとして一緒に出席してくれないか?」
「パーティーですか!」
「ああ。リサは好きか?」
「いつもお姉様が代表して行かれておりましたので、どんなものかなのか知らないんです! 楽しいですか?」
ぎゅうと手を握りしめて聞くと、クレイは手を握り返してくれながら答えてくれます。
「俺はあまり好きじゃない。それに、彼女も来るんだ」
「…彼女とは…?」
「ほら、あれだ」
言いにくそうにされるので気付きました。
クレイ様の好きな方の事でしょう!
たしか、ポピー・パーカー様です。
公爵令嬢だとお聞きしました。
「クレイ様、じゃない。クレイはよろしいのですか?」
「何が?」
「パーカー公爵令嬢もパートナーの方といらっしゃるのでは?」
「俺はフラレたんだから、彼女が誰と来ようがもういいんだ」
「……申し訳ございません」
「どうして謝るんだよ」
「言いたくない言葉を言わせてしまいまして」
頭を下げると、クレイが空いている方の手で頭を撫でてくれました。
「気にすんな」
いたずらっ子みたいな笑顔のクレイに、何だか胸が熱くなりました。
先日からどうしてなのでしょう?
病気でしょうか?
まだ、オッサムに後悔させるという目的も果たせていないのに、死ぬわけにはいきません!
何より、私は女王にならなければいけないんです。
明日、お医者さまにお話してみましょう…。
って、大変です!
「クレイ、もし病気になってしまったら、先生に診てもらわないといけませんよね」
「そうだな…って、ああ、医者に話をしてないのか」
「そうなんです。お知り合いに口のかたい、お医者さまはいらっしゃらないでしょうか」
「ここの王室のお抱えの医者はいないのか?」
「いますけれど、お母様派閥なんです」
「派閥って…、面倒な家族だな。後継者争いみたいなもんか」
クレイは小さく息を吐いてから、長い足を組んで続けます。
「心当たりはあるが、あんまり紹介したくない」
「どうしてです?」
「患者には手を出さないが、プライベートは別だとかいう男だ」
「意味がわからないのですが…」
「診療中に邪な考えはわかないが、プライベートで会うとなるとそうじゃないって事だよ」
クレイはこめかみに手を当ててから聞いてきます。
「そいつが男だという事とプライベートでの恋愛面は軽い奴だ。それでもいいなら紹介できるけどどうする?」
「男性のお医者さまは初めてではありませんし大丈夫です。とにかく、診てもらう前に、お会いできたら嬉しいですね」
「じゃあ、今度のパーティーで向こうに行く際に、会えるように段取りする。だけど、そいつとはプライベートでは絶対に2人で会うなよ!」
「承知いたしました!」
私は大きく首を縦に振りました。
それにしても、クレイにここまで言わせる先生って、どんな方なのでしょう?
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