34 / 45
33 元婚約者の来訪
しおりを挟む
クレイにポピー様の事を、今はどう思っているのか、聞く事が出来ないまま、数日が経った頃、オッサムが私の執務室にやって来ました。
「リサ、話があるんだ」
「何でしょう?」
深刻そうな顔をしているので、お姉様に何かあったのか、と不安な気持ちになっていると、応接セットのソファーに座った、オッサムが口を開きました。
「もうすぐ、ブランカの19歳の誕生日だろう?」
「ああ、そういわれればそうですね。お姉様の誕生日パーティーを開くのですか?」
「それもそうだが、気になる事があるんだ」
「…何でしょう?」
「この国の成人年齢は20歳だよな?」
「…そうですね」
何を言おうとしているのか、初めはわかりませんでしたが、頷く前に気付いてしまいました。
オッサムは国花がお姉様に出ない事を不安に思い始めたのではないでしょうか…。
普通、国花は成人になる前に現れている様です。
王配になりたいという野心があるからか、お姉様に国花が出ないという事は、オッサムにとって、ずっと気がかりなんでしょう。
「成人を過ぎてから、国花が出る事はあったんだろうか」
「ありえるのではないですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「何事にも例外はあるからです」
嘘は言っていません。
私という、別の意味での例外がありますから。
ただ、そう考えてみると、私の誕生日のあの日に、お姉様が、この先にも心を入れ替える事はないと判断されたのでしょうか…。
「王家の人間しか入れない場所に、その事について書かれた文献があるときいたんだが、それを見せてもらうわけにはいかないだろうか」
「お姉様と結婚なされば見れますよ」
「…そうじゃなくて、結婚する前に見たいんだ」
「それは私の権限では無理ですし、出来たとしても、あなたに見せてあげるつもりはありません」
強く言った後、彼を軽く睨んで尋ねます。
「もし、お姉様が女王である可能性がなくなったら、どうするつもりなんですか?」
「そ、それは…。そうなったら、跡を継ぐのは君だから…」
「君だから、なんですか?」
「……」
さすがにその先の言葉は口に出せない様でした。
これは困りました。
早い内に手を打たないと面倒な事になりそうです。
「あなたに見せる事は出来ませんが、私が確認してきましょう。何が知りたいんです?」
「いや、その、国花は長女以外にも出る事はあるのか…とか」
「わかりました。時間はかかるかと思いますが、何かわかるものがあるか探して、確認してみます…。ただ、オッサム」
「何だい?」
「あなたはお姉様が好きなのですよね?」
「…そうだけど、どうしたんだよ、いきなり」
「どうして、長女以外に国花が出るか知りたいのかと思いまして…。お姉様の事が好きなら、国花が出なくても良いのではないのですか?」
私の言葉に、オッサムがびくりと肩を震わせました。
「リサ、僕達は上手くいっていたよな?」
「何の話です?」
「もし、ブランカが20歳になっても、国花が出なかった時は、僕との事を考えてくれないか…?」
「あなた、何をふざけた事を言ってるんです?」
私の後ろに立っていたフィアナが何か言う前に、私が強い口調で聞き返すと、オッサムは苦笑してから首を横に振ります。
「言ってみただけだよ。君より、ブランカの方が女王にふさわしい事はわかっている。女性や王は他国の要人と会う事が多いから、華やかな顔立ちで、性格のおおらかな人間じゃないと無理だ。それを考えれば、ブランカと君なら、ブランカが勝っている」
「お姉様は可愛らしい顔立ちをされていますものね」
「ああ。王妃様によく似ているよ。君はどちらかというと国王様似だよな」
「オッサム、いいかげんにして下さい。あと、私がすでに結婚している事をお忘れですか?」
睨みつけると、オッサムは苦笑したまま、立ち上がります。
「怒らせてしまってごめん。ただ、言えるのは君よりブランカの方が人としても女性としても魅力的なのは確かだって事だよ。君はブランカの様に心優しくないからね」
「ありがとうございます」
オッサムに何を言われても、どうでもいいです。
ただ、話す事が不快になってきたので、帰るように促します。
「お帰りの様ですね。お姉様と仲良くして下さいね」
「もちろんだよ。君達も余り者同士で仲良くしたらいい」
オッサムは笑顔で嫌味を言った後、私の部屋から出ていきました。
「何なんですか、あれは!」
フィアナがオッサムが部屋から離れていくのを、わざわざ廊下まで出て確認した後、部屋に戻ってきて怒ってくれました。
「お姉様の外面に騙されてるんですよ。私にとってはその方がいいんです。お姉様も味方がこれ以上減るのは辛いでしょうから、オッサムの前では、可愛くて心優しい女性のフリをしてくれるでしょう」
フィアナに笑顔で言ってから、彼女の怒りが落ち着くのを待って、言葉を続けます。
「一応、文献を確認しておこうと思います。お父様がすでに確認しては下さっているんですが、私も動かないと、オッサムに怪しまれても嫌ですから」
「国王様が調べられた結果は、どうだったんですか?」
「やはり、長女、長男が多いようですが、その方達が病弱だった場合は、次女や次男に出ている事もあるんだそうです」
「ブランカ様は病弱ではないですよね…?」
フィアナに尋ねられ、大丈夫だとは思いますが、お姉様の健康について調べてみようと思ったのでした。
「リサ、話があるんだ」
「何でしょう?」
深刻そうな顔をしているので、お姉様に何かあったのか、と不安な気持ちになっていると、応接セットのソファーに座った、オッサムが口を開きました。
「もうすぐ、ブランカの19歳の誕生日だろう?」
「ああ、そういわれればそうですね。お姉様の誕生日パーティーを開くのですか?」
「それもそうだが、気になる事があるんだ」
「…何でしょう?」
「この国の成人年齢は20歳だよな?」
「…そうですね」
何を言おうとしているのか、初めはわかりませんでしたが、頷く前に気付いてしまいました。
オッサムは国花がお姉様に出ない事を不安に思い始めたのではないでしょうか…。
普通、国花は成人になる前に現れている様です。
王配になりたいという野心があるからか、お姉様に国花が出ないという事は、オッサムにとって、ずっと気がかりなんでしょう。
「成人を過ぎてから、国花が出る事はあったんだろうか」
「ありえるのではないですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「何事にも例外はあるからです」
嘘は言っていません。
私という、別の意味での例外がありますから。
ただ、そう考えてみると、私の誕生日のあの日に、お姉様が、この先にも心を入れ替える事はないと判断されたのでしょうか…。
「王家の人間しか入れない場所に、その事について書かれた文献があるときいたんだが、それを見せてもらうわけにはいかないだろうか」
「お姉様と結婚なされば見れますよ」
「…そうじゃなくて、結婚する前に見たいんだ」
「それは私の権限では無理ですし、出来たとしても、あなたに見せてあげるつもりはありません」
強く言った後、彼を軽く睨んで尋ねます。
「もし、お姉様が女王である可能性がなくなったら、どうするつもりなんですか?」
「そ、それは…。そうなったら、跡を継ぐのは君だから…」
「君だから、なんですか?」
「……」
さすがにその先の言葉は口に出せない様でした。
これは困りました。
早い内に手を打たないと面倒な事になりそうです。
「あなたに見せる事は出来ませんが、私が確認してきましょう。何が知りたいんです?」
「いや、その、国花は長女以外にも出る事はあるのか…とか」
「わかりました。時間はかかるかと思いますが、何かわかるものがあるか探して、確認してみます…。ただ、オッサム」
「何だい?」
「あなたはお姉様が好きなのですよね?」
「…そうだけど、どうしたんだよ、いきなり」
「どうして、長女以外に国花が出るか知りたいのかと思いまして…。お姉様の事が好きなら、国花が出なくても良いのではないのですか?」
私の言葉に、オッサムがびくりと肩を震わせました。
「リサ、僕達は上手くいっていたよな?」
「何の話です?」
「もし、ブランカが20歳になっても、国花が出なかった時は、僕との事を考えてくれないか…?」
「あなた、何をふざけた事を言ってるんです?」
私の後ろに立っていたフィアナが何か言う前に、私が強い口調で聞き返すと、オッサムは苦笑してから首を横に振ります。
「言ってみただけだよ。君より、ブランカの方が女王にふさわしい事はわかっている。女性や王は他国の要人と会う事が多いから、華やかな顔立ちで、性格のおおらかな人間じゃないと無理だ。それを考えれば、ブランカと君なら、ブランカが勝っている」
「お姉様は可愛らしい顔立ちをされていますものね」
「ああ。王妃様によく似ているよ。君はどちらかというと国王様似だよな」
「オッサム、いいかげんにして下さい。あと、私がすでに結婚している事をお忘れですか?」
睨みつけると、オッサムは苦笑したまま、立ち上がります。
「怒らせてしまってごめん。ただ、言えるのは君よりブランカの方が人としても女性としても魅力的なのは確かだって事だよ。君はブランカの様に心優しくないからね」
「ありがとうございます」
オッサムに何を言われても、どうでもいいです。
ただ、話す事が不快になってきたので、帰るように促します。
「お帰りの様ですね。お姉様と仲良くして下さいね」
「もちろんだよ。君達も余り者同士で仲良くしたらいい」
オッサムは笑顔で嫌味を言った後、私の部屋から出ていきました。
「何なんですか、あれは!」
フィアナがオッサムが部屋から離れていくのを、わざわざ廊下まで出て確認した後、部屋に戻ってきて怒ってくれました。
「お姉様の外面に騙されてるんですよ。私にとってはその方がいいんです。お姉様も味方がこれ以上減るのは辛いでしょうから、オッサムの前では、可愛くて心優しい女性のフリをしてくれるでしょう」
フィアナに笑顔で言ってから、彼女の怒りが落ち着くのを待って、言葉を続けます。
「一応、文献を確認しておこうと思います。お父様がすでに確認しては下さっているんですが、私も動かないと、オッサムに怪しまれても嫌ですから」
「国王様が調べられた結果は、どうだったんですか?」
「やはり、長女、長男が多いようですが、その方達が病弱だった場合は、次女や次男に出ている事もあるんだそうです」
「ブランカ様は病弱ではないですよね…?」
フィアナに尋ねられ、大丈夫だとは思いますが、お姉様の健康について調べてみようと思ったのでした。
50
あなたにおすすめの小説
私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる
迷い人
恋愛
お爺様は何時も私に言っていた。
「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」
そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。
祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。
シラキス公爵家の三男カール。
外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。
シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。
そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。
でも、私に愛を語る彼は私を知らない。
でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。
だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。
なのに気が付けば、婚約を??
婚約者なのだからと屋敷に入り込み。
婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。
そして……私を脅した。
私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!
【完結】優雅に踊ってくださいまし
きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。
この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。
完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。
が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。
-ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。
#よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。
#鬱展開が無いため、過激さはありません。
#ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
婚約破棄に全力感謝
あーもんど
恋愛
主人公の公爵家長女のルーナ・マルティネスはあるパーティーで婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。でも、ルーナ自身は全く気にしてない様子....いや、むしろ大喜び!
婚約破棄?国外追放?喜んでお受けします。だって、もうこれで国のために“力”を使わなくて済むもの。
実はルーナは世界最強の魔導師で!?
ルーナが居なくなったことにより、国は滅びの一途を辿る!
「滅び行く国を遠目から眺めるのは大変面白いですね」
※色々な人達の目線から話は進んでいきます。
※HOT&恋愛&人気ランキング一位ありがとうございます(2019 9/18)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】時戻り令嬢は復讐する
やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。
しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。
自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。
夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか?
迷いながらもユートリーは動き出す。
サスペンス要素ありの作品です。
設定は緩いです。
6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる