27 / 52
24 お姉様にとっては地獄でしょうね
しおりを挟む
お姉様の叫び声は聞こえてきたものの、それに対して言葉を返しているはずの、ロード様や他の人たちの声は聞こえてこない。
「えっ!? あなたみたいな人でもチヤホヤされるのっ!?」
しばらくしてまた、お姉様の驚く声が聞こえてきた。
すると今度は、お姉様ではない他の女性の声も聞こえてくる。
「あなたみたいって何よ! あんたこそ馬鹿みたいな話し方して何なの!? 子供なら可愛いし許せるけど、あんた大人でしょ!? 可愛こぶるのはやめなさいよ! キモいんだけど!」
「可愛こぶるってなんなのっ!? わたしは可愛いんだから、ぶってるんじゃないわ! 可愛いのよ!」
「あんた、本当に鬱陶しいわね! 貴族の令嬢だか何だか知らないけど、ここに来たら、そんなの関係ないからね! こちらにいる公爵閣下にも許可を得てるんだから、厳しく指導してやるわ!」
こちらにいる公爵閣下というのは、ロード様のことだと思われる。
というか、ここはロード様の領地だし、他の公爵閣下がいたら不自然だ。
撫でる手が止まっていたからか、メルちゃんが私の顔に自分の顔を寄せてきた。
「ごめんね、メルちゃん」
メルちゃんを撫でながら聞こえてくる声に耳を傾けていると、メルちゃんの耳がたまにピクピク動いていることに気が付いた。
私には聞こえないけれど、ロード様が話をしているのだと思った。
メルちゃんは耳が良いから、ロード様の声には反応しているのね。
「どうして、この人にそんなことを決める権利があるのっ!? わたしは、侯爵令嬢なのよっ!? 偉いんだから! 嫌よ! ジーギス様たちの所に帰れないなら実家に帰る!」
お姉様がわあわあと騒いでいる。
実は伯父様はお姉様を家に連れて帰りたがっていた。
だけど、ロード様がそれを良しとしなかった。
家に帰らせるだけじゃ解決には至らないだろうし、見せしめにもならないからだ。
お姉様のことだから、実家に帰ったら伯父様にお願いして、すぐにまた私のところへ来るようになりそうだもの。
「ねぇ、あんた、そんなに自信がないの?」
「何がよっ!?」
「あたしとあんたなら、この店の客の人気はあたしのほうが上だって言えるわよ。だって、あんたは可愛くないもん」
「な、なんですって!?」
お姉様は怒りのままに叫ぶ。
「見てなさいよ! わたしが絶対にこの店で一番の人気者になってやるんだからぁ! あ、聞いておくけれど、この店のお客様は男性なんでしょうっ!?」
「そんなに大きな声で言わなくても聞こえてるわよ。あと別に客全員が男性ってわけじゃないわよ。女性だっているわ。それに、男性はお金はないし、下品な奴らばっかりだけどね。あ、お触りとか一応は禁止してるから安心して。すごく汗臭いし、汚い手で触れられたくないのよ。まあ、全員そういうわけじゃないからさ。ちゃんと清潔感があるのもいるわよ」
見知らぬ女性の言葉に返答する、お姉様の言葉は聞こえなかった。
きっと、話を聞いて呆然としているんだと思う。
お姉様は汗臭い男性が好きではない。
汗臭い人が苦手なのは男女問わずにいると思うから、その気持ちはわからないでもない。
この店は採掘員にとって憩いの場だ。
酒場と言ってはいるけれど、メインになる食事も提供していて、仕事帰りに直接、夕食をとるためにここに寄る人が多いんだそうだ。
だから、ドロドロの作業服のままの汗臭いお客様が多いのだと聞いている。
頑張って働いている証なんだけれど、お姉様にとっては地獄でしょうね。
*****
お姉様は次の日から働くことになり、お店の2階にある従業員が寝泊まりできる部屋に、強制的に連れて行かれた。
逃げられないように部屋の前には監視がつけられ、部屋の窓には鉄格子がつけられているとのことだった。
プライバシーは守られているから、慣れれば快適な住処になると、お姉様と言い合っていた女性が教えてくれた。
その女性は犬が好きらしく、店の中をウロウロしないのであれば、お店の中に入れても良いと言ってくれた。
だから、メルちゃんも一緒に中に入り、これから、お姉様がする仕事を説明してもらうことになった。
「えっ!? あなたみたいな人でもチヤホヤされるのっ!?」
しばらくしてまた、お姉様の驚く声が聞こえてきた。
すると今度は、お姉様ではない他の女性の声も聞こえてくる。
「あなたみたいって何よ! あんたこそ馬鹿みたいな話し方して何なの!? 子供なら可愛いし許せるけど、あんた大人でしょ!? 可愛こぶるのはやめなさいよ! キモいんだけど!」
「可愛こぶるってなんなのっ!? わたしは可愛いんだから、ぶってるんじゃないわ! 可愛いのよ!」
「あんた、本当に鬱陶しいわね! 貴族の令嬢だか何だか知らないけど、ここに来たら、そんなの関係ないからね! こちらにいる公爵閣下にも許可を得てるんだから、厳しく指導してやるわ!」
こちらにいる公爵閣下というのは、ロード様のことだと思われる。
というか、ここはロード様の領地だし、他の公爵閣下がいたら不自然だ。
撫でる手が止まっていたからか、メルちゃんが私の顔に自分の顔を寄せてきた。
「ごめんね、メルちゃん」
メルちゃんを撫でながら聞こえてくる声に耳を傾けていると、メルちゃんの耳がたまにピクピク動いていることに気が付いた。
私には聞こえないけれど、ロード様が話をしているのだと思った。
メルちゃんは耳が良いから、ロード様の声には反応しているのね。
「どうして、この人にそんなことを決める権利があるのっ!? わたしは、侯爵令嬢なのよっ!? 偉いんだから! 嫌よ! ジーギス様たちの所に帰れないなら実家に帰る!」
お姉様がわあわあと騒いでいる。
実は伯父様はお姉様を家に連れて帰りたがっていた。
だけど、ロード様がそれを良しとしなかった。
家に帰らせるだけじゃ解決には至らないだろうし、見せしめにもならないからだ。
お姉様のことだから、実家に帰ったら伯父様にお願いして、すぐにまた私のところへ来るようになりそうだもの。
「ねぇ、あんた、そんなに自信がないの?」
「何がよっ!?」
「あたしとあんたなら、この店の客の人気はあたしのほうが上だって言えるわよ。だって、あんたは可愛くないもん」
「な、なんですって!?」
お姉様は怒りのままに叫ぶ。
「見てなさいよ! わたしが絶対にこの店で一番の人気者になってやるんだからぁ! あ、聞いておくけれど、この店のお客様は男性なんでしょうっ!?」
「そんなに大きな声で言わなくても聞こえてるわよ。あと別に客全員が男性ってわけじゃないわよ。女性だっているわ。それに、男性はお金はないし、下品な奴らばっかりだけどね。あ、お触りとか一応は禁止してるから安心して。すごく汗臭いし、汚い手で触れられたくないのよ。まあ、全員そういうわけじゃないからさ。ちゃんと清潔感があるのもいるわよ」
見知らぬ女性の言葉に返答する、お姉様の言葉は聞こえなかった。
きっと、話を聞いて呆然としているんだと思う。
お姉様は汗臭い男性が好きではない。
汗臭い人が苦手なのは男女問わずにいると思うから、その気持ちはわからないでもない。
この店は採掘員にとって憩いの場だ。
酒場と言ってはいるけれど、メインになる食事も提供していて、仕事帰りに直接、夕食をとるためにここに寄る人が多いんだそうだ。
だから、ドロドロの作業服のままの汗臭いお客様が多いのだと聞いている。
頑張って働いている証なんだけれど、お姉様にとっては地獄でしょうね。
*****
お姉様は次の日から働くことになり、お店の2階にある従業員が寝泊まりできる部屋に、強制的に連れて行かれた。
逃げられないように部屋の前には監視がつけられ、部屋の窓には鉄格子がつけられているとのことだった。
プライバシーは守られているから、慣れれば快適な住処になると、お姉様と言い合っていた女性が教えてくれた。
その女性は犬が好きらしく、店の中をウロウロしないのであれば、お店の中に入れても良いと言ってくれた。
だから、メルちゃんも一緒に中に入り、これから、お姉様がする仕事を説明してもらうことになった。
788
あなたにおすすめの小説
謹んで、婚約破棄をお受けいたします。
パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。
何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。
自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。
彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。
そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。
大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─
江崎美彩
恋愛
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。
王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。
『えっ? もしかしてわたし転生してる?』
でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。
王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう!
『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりする物語です。
長編ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。
『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。
アノマロカリス
恋愛
私の名前はレイラ・カストゥール侯爵令嬢で16歳。
この国である、レントグレマール王国の聖女を務めております。
生まれつき膨大な魔力を持って生まれた私は、侯爵家では異端の存在として扱われて来ました。
そんな私は少しでも両親の役に立って振り向いて欲しかったのですが…
両親は私に関心が無く、翌年に生まれたライラに全ての関心が行き…私はいない者として扱われました。
そして時が過ぎて…
私は聖女として王国で役に立っている頃、両親から見放された私ですが…
レントグレマール王国の第一王子のカリオス王子との婚姻が決まりました。
これで少しは両親も…と考えておりましたが、両親の取った行動は…私の代わりに溺愛する妹を王子と婚姻させる為に動き、私に捏造した濡れ衣を着せて婚約破棄をさせました。
私は…別にカリオス王子との婚姻を望んでいた訳ではありませんので別に怒ってはいないのですが、怒っているのは捏造された内容でした。
私が6歳の時のレントグレマール王国は、色々と厄災が付き纏っていたので快適な暮らしをさせる為に結界を張ったのですが…
そんな物は存在しないと言われました。
そうですか…それが答えなんですね?
なら、後悔なさって下さいね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる