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35 賢そうね
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メイドはメルちゃんとハヤテくんが、私の部屋に遊びに来ているのを知っている。
だから、レジーさんに言われて、こっちに向かってきているみたいだった。
「メル、待てだぞ」
メルちゃんの背中を撫でながらロード様が言うと、メルちゃんは「ワウ」と小声で鳴いた。
私はハヤテくんが部屋から飛び出していかないように抱き上げる。
すると、ハヤテくんはべろりと私の頬を舐めたあと、警戒するように扉に顔を向けた。
ノックのあとに、メイドの声が聞こえてくる。
「ロード様、ミレニア様、お寛ぎのところ、大変申し訳ございません」
「もう、早くしてよ! 噛まないのなら触りたいのよ!」
わたしたちが応える前にレジーさんの声が聞こえた。
ロード様はため息を吐いたあと、メルちゃんにもう一度声をかけてから立ち上がり、今度は私を見て言う。
「ちょっと話をしてくるから、メルとハヤテを頼むよ」
「承知しました。メルちゃん、こっちにおいで」
片手でハヤテくんを抱き直し、空いた手で自分の太腿を叩くと、メルちゃんは私の足元へやって来た。
そして、ソファーの上に飛びのり、私の太腿にお尻をのせてきた。
正直、重い。
ハヤテくんはぽっちゃりしているから、なんと10キロ近くあるし、メルちゃんもその二倍近い体重がある。
でも、メルちゃんからの背後は任せたという信頼感だと思って我慢する。
気を紛らわすようにロード様の背中を目で追うと、ちょうど扉を開けたところだった。
「申し訳ございません、旦那様」
「君は悪くない」
謝るメイドにロード様は応えると、私のほうからは姿が見えない、レジーさんに話しかける。
「君はスカディ殿下の付き人なんだろう? 殿下を放っておいていいのか?」
「スカディ殿下は今はお部屋で大人しく勉強しているわ。だから、私は暇なの」
「それなら、殿下と一緒に勉強すればいい。君も一緒に学園に通うんだから。あと、こんなことは言いたくないが、殿下の妻になるのであればマナーを学んだほうがいい」
「何よ。あなただって、私に敬語を使ってないじゃない。人のことを言えるの?」
「言っておくが、僕は公爵であって今の君の立場は王子の付き人だ。良識のある人間は僕に対して、そんな口のききかたはしない」
ロード様が嗜めると、レジーさんの不服そうな声が返ってくる。
「高位貴族って本当に偉そうですよね」
「君だって十分偉そうだよ。人に寄るんじゃないかな」
「あなたって本当に頭が悪いですね」
「頭が悪いのは君だよ」
「なんですって!? 私のどこが頭が悪いって言うんですか!」
「頭が悪いとわかっていない時点で悪いんだよ。自分の頭が悪いかもしれないということを考えもしない」
「な、何なのよ! 今まで、私、そんなことを言われたことはないんだけど!?」
ギャーギャーわめき出す、レジーさんにロード様が冷静に答える。
「きっと、君と関わりたくないから、そんな話をする気にもならないんだろうね」
「し、信じられない! 不敬だわ! 私の国の上の連中に話をするから!」
「どうぞ、ご自由に」
「覚えてなさいよ! というよりか、さっさと犬を触らせてよ!」
「うちの犬は君よりも賢いから、君を敵とみなしてわざと噛みつくおそれがあるよ」
「か……、噛みつくですって?」
レジーさんのかすれた声が聞こえ、ロード様がこちらに向かって振り返った。
「メル、おいで」
メルちゃんはすぐに反応して、ロード様の足元に駆けていく。
一緒について行こうとしたハヤテくんを、私はしっかりと抱きかかえて背中を撫でた。
「……よく見ると、可愛いワンちゃんだけど、本当に噛みつくの?」
そう言って、レジーさんがメルちゃんに手を伸ばすのが見えた。
すると、メルちゃんがうなり始める。
「ウーーーッ」
「え? ちょ、何なの、いきなり!? どうして何もしていないのに怒り出すのよ!」
「メルは君のことを敵だとみなしているようだ。触ってほしくないみたいだね」
「私は敵じゃないわよ! やっぱり、この犬馬鹿じゃないの!」
レジーさんがメルちゃんの頭を叩こうとした。
メルちゃんは噛みつくことは出来るけれど、普段は人に噛みつくという行為は許されていない。
だから、一瞬、噛みつこうと口を開けはしたけれど、噛みつくこともなく口を閉ざして身を後ろに退いた。
メルちゃんのほうが、レジーさんよりも賢そうね。
それと同時に、ロード様がレジーさんの手を掴んだ。
「いいかげんにしろ。つまみ出されたいのか」
ロード様に凄まれたレジーさんは、ぽかんと口を大きく開けたあと、頬をピンク色に染めた。
だから、レジーさんに言われて、こっちに向かってきているみたいだった。
「メル、待てだぞ」
メルちゃんの背中を撫でながらロード様が言うと、メルちゃんは「ワウ」と小声で鳴いた。
私はハヤテくんが部屋から飛び出していかないように抱き上げる。
すると、ハヤテくんはべろりと私の頬を舐めたあと、警戒するように扉に顔を向けた。
ノックのあとに、メイドの声が聞こえてくる。
「ロード様、ミレニア様、お寛ぎのところ、大変申し訳ございません」
「もう、早くしてよ! 噛まないのなら触りたいのよ!」
わたしたちが応える前にレジーさんの声が聞こえた。
ロード様はため息を吐いたあと、メルちゃんにもう一度声をかけてから立ち上がり、今度は私を見て言う。
「ちょっと話をしてくるから、メルとハヤテを頼むよ」
「承知しました。メルちゃん、こっちにおいで」
片手でハヤテくんを抱き直し、空いた手で自分の太腿を叩くと、メルちゃんは私の足元へやって来た。
そして、ソファーの上に飛びのり、私の太腿にお尻をのせてきた。
正直、重い。
ハヤテくんはぽっちゃりしているから、なんと10キロ近くあるし、メルちゃんもその二倍近い体重がある。
でも、メルちゃんからの背後は任せたという信頼感だと思って我慢する。
気を紛らわすようにロード様の背中を目で追うと、ちょうど扉を開けたところだった。
「申し訳ございません、旦那様」
「君は悪くない」
謝るメイドにロード様は応えると、私のほうからは姿が見えない、レジーさんに話しかける。
「君はスカディ殿下の付き人なんだろう? 殿下を放っておいていいのか?」
「スカディ殿下は今はお部屋で大人しく勉強しているわ。だから、私は暇なの」
「それなら、殿下と一緒に勉強すればいい。君も一緒に学園に通うんだから。あと、こんなことは言いたくないが、殿下の妻になるのであればマナーを学んだほうがいい」
「何よ。あなただって、私に敬語を使ってないじゃない。人のことを言えるの?」
「言っておくが、僕は公爵であって今の君の立場は王子の付き人だ。良識のある人間は僕に対して、そんな口のききかたはしない」
ロード様が嗜めると、レジーさんの不服そうな声が返ってくる。
「高位貴族って本当に偉そうですよね」
「君だって十分偉そうだよ。人に寄るんじゃないかな」
「あなたって本当に頭が悪いですね」
「頭が悪いのは君だよ」
「なんですって!? 私のどこが頭が悪いって言うんですか!」
「頭が悪いとわかっていない時点で悪いんだよ。自分の頭が悪いかもしれないということを考えもしない」
「な、何なのよ! 今まで、私、そんなことを言われたことはないんだけど!?」
ギャーギャーわめき出す、レジーさんにロード様が冷静に答える。
「きっと、君と関わりたくないから、そんな話をする気にもならないんだろうね」
「し、信じられない! 不敬だわ! 私の国の上の連中に話をするから!」
「どうぞ、ご自由に」
「覚えてなさいよ! というよりか、さっさと犬を触らせてよ!」
「うちの犬は君よりも賢いから、君を敵とみなしてわざと噛みつくおそれがあるよ」
「か……、噛みつくですって?」
レジーさんのかすれた声が聞こえ、ロード様がこちらに向かって振り返った。
「メル、おいで」
メルちゃんはすぐに反応して、ロード様の足元に駆けていく。
一緒について行こうとしたハヤテくんを、私はしっかりと抱きかかえて背中を撫でた。
「……よく見ると、可愛いワンちゃんだけど、本当に噛みつくの?」
そう言って、レジーさんがメルちゃんに手を伸ばすのが見えた。
すると、メルちゃんがうなり始める。
「ウーーーッ」
「え? ちょ、何なの、いきなり!? どうして何もしていないのに怒り出すのよ!」
「メルは君のことを敵だとみなしているようだ。触ってほしくないみたいだね」
「私は敵じゃないわよ! やっぱり、この犬馬鹿じゃないの!」
レジーさんがメルちゃんの頭を叩こうとした。
メルちゃんは噛みつくことは出来るけれど、普段は人に噛みつくという行為は許されていない。
だから、一瞬、噛みつこうと口を開けはしたけれど、噛みつくこともなく口を閉ざして身を後ろに退いた。
メルちゃんのほうが、レジーさんよりも賢そうね。
それと同時に、ロード様がレジーさんの手を掴んだ。
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