価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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28 元王太子の訴え

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 セイン殿下がメンナナ国に婿入りする事になれば、今まで考えていたよりも彼と会う事はもっと少なくなるはずなので、その点は好都合だった。

 メンナナ国とソラウ国は敵対はしていないし、国交もあるけれど、特に仲の良い国ではない。

 メンナナ国はレブルンから西の位置にあり、ソラウ国はレブルンをはさんだ東の位置にあるので、そう何度も行き来する事は出来ない。

 セイン殿下がまだ私を見つめているので、彼に背を向けてハルト殿下に話しかける。

「最後の思い出というのは、どんな事をさせたかったんですの?」
「今まで、ご迷惑おかけした事について謝らせるつもりでした」
「反省はしてるんですかね?」

 アズが尋ねると、ハルト殿下は苦笑して答えたあと、私にもう一度頭を下げる。

「していると思っていました。最後までご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」
「ここは人目がありますから、そんなに謝らないでくださいませ。頭を下げすぎても良くないですわ」
「そうですね……。ありがとうございます」

 ハルト殿下とは改めて話す約束をして、この場では別れた。
 
 私達に挨拶したい人達は他にもたくさんいたので、いくら彼が他国の王族といえども長くは時間がとれなかった。
 
 その後はめまぐるしく時間は過ぎ、セイン様の事など、すっかり頭から抜け落ちていた。
 一通りの挨拶を終えたあと、休憩を取るために近くにあった椅子に座ると、アズが飲み物を持ってきてくれた。

「お疲れ様」
「ありがとうございます。でも、こんなに忙しいパーティーは今回だけですわよね?」
「夜会に関してはね。結婚披露となるとパレードがあるから、もっと忙しいし、精神的に疲れるかもしれない」
「そうですわね。たくさんの人が集まるんですもの」

 祝賀パレードは1人1人に話しかけるわけではないので、人と顔の名前を一致させることに苦労はしないけれど、何が起きるかわからないという不安はあった。

 もし、そこにルピノが現れたら?

 さすがに危害を加えようとしはしてこないでしょうけれど、会いたくない人物ではあるわ。
 
「ルリ!」

 声が聞こえた方向に振り返ると、セイン殿下がこちらに近付いてくるところだった。
 けれど、すぐに近くにいた護衛が彼を止めてくれる。

「なんなんだよ! 俺は王子なんだぞ!?」
「申し訳ございませんが、アズアルド殿下から、セイン殿下をルリ様に近付けないようにと命令されております」
「そんな……! 俺は元婚約者なんだぞ!」
「元婚約者という事は、もう過去の人でしょう? あなたの気持ちはルリに伝わりましたので、本日はもうお帰りいただいて結構ですよ」

 アズがセイン殿下に近付いていきながら言うと、セイン殿下が私に向かって叫ぶ。

「ルリ! 済まなかった! 本当に本当に後悔している! 君がいなくなって、君のすごさがわかったんだ。それに、俺は君の事が好きだったんだよ!」

 衝撃的な発言に、近くにいた人達の動きまで止まった。
 そして、皆がゆっくりとセイン殿下の方に顔を向ける。

「君は俺にとって苦手なものを簡単にやってのけるから、男として悔しくて……、そんな時に、ルピノから褒められて浮気してしまった。本当にごめん!」

 セイン殿下が深く頭を下げた。

 今さら、謝られても、どうしようもならない。
 立ち上がり、持っていた飲み物をボーイに渡してアズの横に立つと、護衛の向こうに見えるセイン殿下に伝える。

「セイン殿下、頭を上げてくださいませ。そんな事をしていただいても、私はあなたの元には戻りません。私は他国に嫁ぐことに決まっているのです。そして、その覚悟を持ってここまでやって来たのです。今さら、後悔していると謝られても、私には謝罪を受け入れることしか出来ませんわ」
「……俺のところには、もう戻ってきてくれないのか?」
「戻るつもりはありません。浮気の件が発端ではありますが、私の心があなたから離れたのは、それが大きな原因ではありません。私に嘘をついて、自分は仕事をしていなかった事。仕事をしなくなった私に暴力をふるった事などが、あなたから気持ちが離れた原因です」
「……どうすれば、良かったんだ? どうすれば、俺は君よりも優れてると思えたんだよ! 悪いのは君じゃないか……!」

 悲痛な声で訴えてくるセイン殿下にアズが言う。

「浮気をする事や仕事をしない事がルリよりも優れている証明になりません。あなたは努力をせずに逃げただけですよ」

 アズの言葉を聞いたセイン殿下は、彼の言っている意味がわかったのか、呆然とした表情になり、その場に崩れ落ちた。






※次話は本編の時系列から少し離れて、パーティー後のセイン視点になります。
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