価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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30 ノーラルからの手紙

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 ある日の朝、アズが部屋にやって来て、ノーラル様達の話を教えてくれた。

 ノーラル様が訪ねた先は、ソラウにある、反王家派として噂のある貴族の家でシイナレンラジという公爵家だった。

 それを機にシイナレンラジ家の事を詳しく調べてみると、その家の元令嬢とノーラル様は国境近くにある仕立て屋がお気に入りという共通点があり、若い頃にその店で知り合っていた事がわかった。
 
 そして、シイナレンラジ家の別邸にルピノらしき女性が潜んでいる事もわかった。

「やっぱり、ルピノは生きていたんですね。死んでいるわけはないと思っていましたけど。居場所がわかったなら良かったです。彼女がいきなり私の前に現れるという事はなくなりましたし」
「ただ、どうして、わざわざ、ルピノ嬢の母親が彼女の居場所がバレてしまう様な危険を冒してまで彼女に会いに行ったのかがわからないんだ」
「そう言われてみればそうですわね。ノーラル様がルピノのところに行かなければ、ルピノがどこにいるかはわからずじまいでしたのに……」

 何か考えがあった?
 それとも、何も考えずにルピノに会いに行っただけかしら?

 そこまで考えたあと、私もアズに伝えたい事があった事を思い出して話をする。

「ヤイネバ侯爵家について、お父様に調べてもらいましたが、最近、行商などへの支払いが滞る様になっているそうですわ」
「何が理由で?」
「それがわからないんだそうです。ヤイネバ卿は若くて可愛らしい人を買っては捨てるを繰り返しているようですが、それは昔からそうで、いきなり厳しくなるのはおかしいと、お父様は言っておられました。それから、捨てるといっても放り出すわけじゃなく、奉公先を探してはいるみたいです。大体が可愛らしくて若い女の子なので、貴族の多くは下女として雇ってくれているそうです」
「……リコロ卿だったっけ? 彼は奴隷を買ってる?」
「レブルンでも奴隷の売買は違法ですが、裏ではそうかもしれません」

 私の言葉にアズは少し考えてから口を開く。

「下女になる少女達も奴隷に戻るよりかは良い環境でいられるから問題にならないのか」
「自分が奴隷だったとわかれば、その屋敷の当主にどう思われるかがわからないですし、怖くて言えませんわよね」

 2人で顔を見合わせて考えていた時だった。

 部屋の扉がノックされた。

 アズが来ている時にノックをするだなんて、よっぽどだと思って返事をすると、アザレアだけでなく、トーリも入ってきた。
 だから、彼女達の前に立って尋ねる。

「どうかしたの?」
「アズアルド殿下とのお話中に申し訳ございません」
「どうせならば、アズアルド殿下とルリ様が一緒にいらっしゃる今の方が良いかと思いまして」
 
 アザレアの言葉をトーリが補足した。

「かまわないわ」
「こちらなのですが……」

 私が頷くと、アザレアは封筒を私に向かって差し出してきたので受け取る。
 危険物などがないかどうか確認するために、すでに封は切られていた。

 封筒から手紙を取り出すと、アズもソファーから立ち上がって、私の横に立って聞いてくる。

「誰からだ?」
「そうですわね。確認いたします」

 アザレアとトーリが渡してくるのだから、そう悪い人でもないのだろうと思っていたけれど、差出人を確認して、逆に連絡をしてきたら困る人からきたのだという事がわかった。

 ノーラル様からの私宛の手紙で、要約すると、人の命がかかっているので、どうしても私に会いたいと書かれていた。
 
 人の命って、きっとルピノの事なんでしょうけれど、ルピノは死んだ事になっているのよね?

 考えているとアズが聞いてくる。

「どうするつもりだ?」
「人の命が関わっていると書かれてあるのがネックですわね」
「無視した場合、彼女は王太子妃になる人間が過去とはいえ母親だった人間からの手紙を無視したと騒ぎ出すだろうか?」
「その可能性がありますわね。命に関わるという文言をいれたのにと。ですが、これだけでは内容がわからないだけに、直接、会うわけにはいきませんわ」
「よろしければ、わたしがお話を聞く事にいたしましょうか?」

 アザレアの言葉のあとにトーリが言う。

「その場合は私も一緒に聞きます。ルリ様はノーラル様に会いたくはないでしょうが、何を言おうとしているのかは気になられているのでしょう?」
「それは間違っていないわ」

 切り捨ててしまえばいいのだけれど、本当に命に関わる事で、それが第3者だったりしたら嫌だもの。
 だけど、私が会うのはノーラル様の思う通りになるみたいで嫌だった。

「私が会うべき話だと思ったら、会うようにするけれど、先に話だけ聞いてもらえる? もちろん、ノーラル様には、アザレア達が話を聞くという事はその場でお知らせで良いと思うわ。あなた達の都合の良い日時で返事をしてちょうだい。何か言われたら、王太子妃候補に簡単に会えるとは思わないでと伝えて」
「承知しました」

 私の言葉に2人が同時に首を縦に振った。

 ノーラル様は私に何を話すつもりなのかしら?




※次話はアザレア視点になります。
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