価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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30.5 困惑するアザレア視点

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「はじめまして、アザレア・ミノンと申します。本日は、ルリ様の代わりにわたくし達にお話をお聞かせいただきたいと思っております」
「わたくし達?」

 聞き返してきたノーラル様には答えずに、トーリ様に視線を送る。

「アズアルド殿下の側近の者です。よろしくお願い致します」

 トーリ様は頭を下げたあと、向かい側に座っているノーラル様に話を促す。

「ルリ様にどんなお話があるのでしょうか?」
「ちょっと待ってください! わたしはルリと話を」
「ルリ様とお呼びください」

 ノーラル様に厳しい口調で言うと、彼女は眉を寄せたけれど、言い返しても不利だという事に気が付いたのか、首を縦に振った。

「わかりました。ルリ様にお伝え願いたいのですが」
「くだらない内容でなければ、ルリ様にお伝えいたしますので、お話願えますか?」

 わたしの問いかけに、ノーラル様が小さな声で言う。

「……助けてほしいんです」
「助ける?」
「私の娘のルピノが生きている事は、もうご存知なのでしょう?」

 この質問に対して、答えても良いのか迷っていると、トーリ様が頷く。

「調べはついています。手紙にあった命に関わるというのは、ルピノ嬢の事ですか?」
「……そうです。ルリ様に生きている事を知らせたくて、わざと動きました」

 ノーラル様はルリ様から聞いていた印象とは違い、美しい方だけれど、若々しさはなく、実年齢である40歳よりも年を取っているように見えた。

「知らせてどうされたいのです?」

 尋ねると、ノーラル様は立ち上がり、広い場所まで出ると床に額を付けた。

「お願いです! お金を貸していただけませんでしょうか!」
「………お金?」
「ルリ様は王族に嫁ぐのでしたら、自由にできるお金だって、貴族と比べ物にならないはずです! ルピノを助けてほしいんです!」
「とにかく、座ってください。そんな事をされてもお金を貸す事はできません」

 困惑しているわたしの代わりにトーリ様が言ってくれた。

「でもっ……、どうしても貸していただきたいのです!」

 ノーラル様は顔は上げたけれど、その場から動こうとしない。

「その状態ではお話を聞く事はできません。元いた場所に戻れないのでしたら、わたし達が退出いたしますが?」

 わたしが厳しい口調で言ったからか、ノーラル様は泣きそうな顔になりながらも、わたし達の向かいのソファーに腰掛けた。

「お金が必要な理由はなんなのです? ルピノ様はご病気かなにかなのですか?」
「いいえ! ルピノは健康です。ただ、ルピノはお金をもらってはいけない人からお金をもらっていたんです」

 わたしの問いかけに答えたノーラル様の身体がブルブルと震え始めた。

「一体、何があったのです?」
「……私の兄がルピノに興味を持っているんです」
「それだけでは命には関わらないですわよね?」
「もちろんです。でも、ルピノは兄にお金をもらうかわりに対価を払うと約束してしまっているんです!」

 興奮されているのはわかるけれど、そのせいで逆に何を言いたいのかがわからなかった。

「落ち着いてください。ノーラル様」
「落ち着いてなんていられません! お金をすぐに返さなければ、兄はルピノに危害をくわえるに決まっています!」
「監禁する、とかですか?」

 尋ねると、ノーラル様は首を何度も横に振ってから答える。

「ルピノを今の姿で永遠に残そうとするはずです」
「どういう事です?」

 そんな事が出来るとは思えなくて聞き返す。

「やり方につきましては今、ここでは言えません。ただ、ルピノは死んでしまうでしょう」

 ノーラル様の言葉を聞いたわたしは、トーリ様に目を向けた。

 トーリ様はわたしと目を合わせたあと、ノーラル様に尋ねる。

「今までに、あなたの兄は他の誰かに、あなたが危惧しているような事をした事があるのですか?」
「ないと思います。元々、兄は幼女が好きで、そのせいでルピノの事を好きなのもそうだと思っていましたが、実際は、ルピノにだけ執着しています。実験的に、他の誰かにやった事はあるかもしれませんが……」
「一体、何をされるとお考えなんですか?」

 ノーラル様はごくりとつばを飲み込んだあと、わたしの質問に答えてくれた。

「――――です」

 その答えを聞いたわたしとトーリ様は驚きを隠せなかった。


 
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