酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ

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2−1  会遇

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 警察側はオルザベートを逃した事について謝罪はしたものの、犯罪者を逃したわけではないから、という事で、彼女達を探そうともしなかった。
 もちろん、エドが彼女達を見つけるために人を雇ったので、それはそれで良いにしても、警察の上層部はろくな人間がいない事がわかった。
 お金を出さなければ人員を割けないなど、訳のわからない事を言ってきた理由を調べると、今まで、金蔓にしてきたイザメル様を捕まえた事により、自分達に入るお金が少なくなった為、エドに対して逆恨みしているようだった。
 他にも、ビアラを脅していた事もわかった。
 ここからはビアラに問い詰めて聞けた話だけれど、署長の娘がディラン様を狙っていたようで、付き合っているという噂のビアラに別れるように脅しをかけていたらしい。
 今の部署に入った当時に、署長から別れなければ、クビにする、と言われたビアラは、ディラン様との連絡をたった。
 ビアラはどうしても、自分の家族を殺した人物を探したかったから。
 けれど、ディラン様はディラン様で自分の家の財力を使って、ビアラに何かあればわかるようにしていたため、私とオルザベートが揉めた時に、ビアラが介入しているのがわかり、エドに文句を言ったみたいだった。

 ビアラはディラン様とは自然消滅になるだろうと思っていた様だけど、ディラン様は全然そんなつもりはなかったみたい。

 今回の事で、ビアラとディラン様は会う回数が増えたみたいで、ディラン様には密かに感謝されてしまっている。
 そして、そのお礼として、私はディラン様から魔法を習う事になった。

 オルザベートから身を守るため。
 そして、大切な人を守るために。

「ディラン様は魔法はどうやって覚えたんですか?」
「代々、僕の家は魔法使いの多い家系なんだ。だから親から子へ教えていくといった感じかな」
「という事は、ディラン様はお子さんができたら、お子さんに教えるんですね」

 とある日の昼下り。
 ディラン様がカイジス邸に来てくれて、魔力の扱い方を教えてくれていた。
 ただ、あまりやりすぎると疲れてしまうので、雑談しながら練習をしていた。

「そうだね。いつ出来るかはわからないけど」
「…ディラン様はビアラを待つつもりなんですか?」
「待ちはしない。逃げ場がないように、言い訳できないように追いつめるだけ」
「ディラン様って、そんなタイプだったんですね」
「彼女にだけだよ。それくらいしないと、すぐに腕からすりぬけていくから」

 ディラン様は苦笑してから続ける。

「エアリスが応援してくれて、本当に助かってる。ありがとう」
「礼を言われる事じゃないです! それに、ビアラが嫌がってたら応援していないと思います」
「エアリスはビアラが嫌がってないと思う?」
「思います!」

 両拳を握りしめて言うと、ディラン様は笑ってから言う。

「ありがとう。嬉しい事を言ってくれたお礼に1つ教えるよ。エドワードを愛称で呼んでいいのは君だけだって知ってた?」
「え?」
「たぶん、自分の両親にも、エドワードって呼ばせてたはずだよ」
「…そう言われてみればそうかもしれません」
「君も面倒な男に好かれているみたいだから頑張ってね」
「あ、ありがとうございます?」

 なんと答えたら良いのかわからなくて疑問形で言うと、ディラン様はまた笑った。
 ディラン様のレッスンは2時間程で終わって帰られたけれど、一緒に参加できなかったエドはなぜか不機嫌そうにしていた。

「別にディランに教えてもらわなくても、母上に教えてもらえばいいんじゃないのか?」
「ミラーザ様がディラン様に教わった方が良いと仰ったのよ。それに、ディラン様とビアラを会わせる口実にもなるでしょ」
「それはそうかもしれないが」

 エドは私を執務室のソファーに座らせて、自分も横に座ると、私の肩を抱いて続ける。

「人の恋路に必死になってないで、僕との事も考えてくれないか」
「か、考えてるわよ! 結婚したいと思ってるし!」
「その割には、あまり急いでない様に見えるが」
「それは、オルザベートの事があるから…。そういえば、オルザベートの子供はどうなったの?」 
「トゥッチ嬢の両親が引き取ったそうだ」
「そっか。自分の孫ですものね」

 納得できるので頷く。

「それにしても、魅了魔法を使われるのは厄介だな。君は、ネックレスを必ず持ち歩くように」
「わかってるわ。私がお祖父様達の形見を持っていれば、こんな事にはならなかったっていうのもわかっているし」

 ため息を吐くと、エドが優しく頭を撫でてくれる。

「今度こそ、トゥッチを捕まえる」
「うん。彼女のせいで色々な人が巻き込まれているもの。ビアラの事だって…」
「君は自分の事だけ考えていればいいから」
「そういう訳にはいかないわ」

 オルザベートを切り捨てるには、高みの見物では駄目だという事はわかったから。
 彼女に自分がおかしいという事をわからせないと。
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