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第2章 新たな婚約者
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「きゃあっ!」
殴られて体勢を崩したデスタがソレーヌに抱きつくような状態になった。
そのせいで、倒れ込んできた彼の体を支えきれなかったソレーヌ様はデスタと一緒にソファに倒れ込んだ。
「お前も何を考えているんだ!」
ロイアン伯爵はソレーヌ様も殴ろうとして手を上げた。
でも、デスタの体が邪魔で彼女を叩けないことがわかり、すぐに手を下ろして叫ぶ。
「おかしいと思っていたんだ! セフィリア様が病弱だなんて話を他の人間から一度も聞いたことがないのに、何度も何度もすぐに帰って来るし、馬鹿みたいにソレーヌの元へ向かうから!」
「ロイアン伯爵、おかしいと思っていながら、確認をいれなかったのはなぜなのです?」
「それは、失礼に値するかと思いまして」
ロイアン伯爵はわたしに向かって何度も頭を下げる。
「セフィリア様のお怒りはごもっともです。ですが、何卒、お許し願えませんでしょうか。二度とこのようなことを息子にはさせません! どうかお願い致します!」
「ロイアン伯爵、申し訳ございませんが、わたしは考えを変えるつもりはありません」
冷たく応えてからお父様に目を向ける。
お父様は黒の上着の中から、折りたたまれた紙を取り出して、ロイアン伯爵に差し出した。
ロイアン伯爵は戸惑った様子ながらも、その紙を受け取る。
それは、わたしも読んだ報告書で、その内容を読んだロイアン伯爵は怒りで体が震え始めた。
「なんてことを! 本人に知られなければ、好きなことを言っても良いとでも思っていたのか!」
ロイアン伯爵は一度怒りを抑えて、お父様に礼を言ってから紙を返した。
そして、わたしのほうに近づいてくると、深々と頭を下げる。
「誠に申し訳ございませんでした。こんな話を知ってしまった以上、息子を許す気持ちも失せたでしょう。婚約破棄の件ですが受け入れさせていただきます」
「ち、父上! 待ってください! 諦めるには早すぎますよ!」
デスタはふざけたことを言うと、殴られた頬を手で押さえながら、わたしに訴えかけてくる。
「どうしちゃったんだよ。いつもは笑って許してくれていたじゃないか。今日は機嫌が悪いのかい?」
「今日だけじゃなくて、あなたやソレーヌ様を見たり、思い出したりするだけで機嫌が悪くなりそうだわ」
焦った顔をしているデスタは、わたしが素敵だと思っていた彼とはまったく違っていた。
親に嘘をついてまで浮気をして、婚約破棄をされて、父親に叱られて殴られる、ただの馬鹿な男だった。
また、悔しい気持ちがこみあげてくる。
本当に好きだった。
だから、こんな最低な人だったなんて知りたくなかった。
そして、薄々気が付いていて目を逸らし続けていた自分にも腹が立った。
手を握りしめ、拳を作ったところで冷静になり、大きく深呼吸する。
ここで感情的になってはいけない。
まだ、お父様の条件を満たせていないわ。
「そんな悲しいことを言わないでくれよ。頼むから!」
デスタがわたしに向かって手を伸ばしてきたので、その手を叩く。
「触らないで」
「そんな……! セフィリア、本気なのか?」
「本気よ。こんなことを冗談で言うわけがないでしょう?」
情けない顔をしているデスタを一瞥した後に、ソレーヌ様に目を向ける。
すると、なぜか彼女は愛想笑いをしてきた。
「そんなに怒らないで? その、申し訳ないと思っているわ。これからは控えるから」
「ソレーヌ様。もう、わたしとあなたの関係は、ただの公爵令嬢と伯爵令嬢という仲です。親しげに話しかけるのはやめてください」
「そんなっ! どうしてそんなに簡単に割り切れちゃうんですか!? あなたは、本当にお兄様のことを愛していたんですか!?」
ソレーヌ様はまるで、わたしが悪いような言い方をする。
悪いのはどちらなの?
「愛していたから捨てるのよ」
わたしは小さく呟くと、呆然とした表情のデスタに話しかける。
「デスタ様、あなたには彼女がお似合いです。わたしは絶対にあなたの妻にはなりませんので、ご安心くださいませ」
「そんな! これからは上手くやるよ! 絶対に上手くやるからチャンスをくれないか!? いや、チャンスをください!」
デスタはわたしの足元にやって来ると、カーペットの上に額をつけた。
上手くやるですって?
浮気を?
ふざけたことを言わないでほしい。
お父様はこれで満足かしら?
ちらりとお父様に目を向けると、満足そうな表情で口角を吊り上げた。
すぐにデスタに視線を移し、泣きべそをかいている彼を見下ろして尋ねる。
「どうして、チャンスをあげないといけないの? もう十分でしょう?」
「待ってくれ、セフィリア! 正直に言うよ! 僕はあわよくば、君とソレーヌの二人共を自分のものにしようとしていた! だけど、そんな考えは間違っていたと認める!」
「当たり前でしょう! そんな当たり前のことを言われて、わたしが許すとでも思ったの?」
この人、一体何なの?
少しでも彼から離れたくて、わたしは場所を移動して、ソファに座っているお姉様の隣が空いているので、そちらのスペースに避けた。
デスタは床にしゃがみ込んだまま、顔だけわたしのほうに向ける。
「頼むよ! 捨てないでくれ! 君に捨てられたらどうなると思ってるんだよ!」
「捨てられたらどうなるんだ? ぜひ、聞かせてほしい。そうだな。ロイアン伯爵の口から聞きたいものだ」
お父様は勝手に会話に割って入ってきて、クツクツと笑った。
本当に性格が悪い。
ロイアン伯爵は大きく息を吐いてから、デスタを見つめて口を開く。
「デスタ、お前とは親子の縁を切る。そして、ソレーヌ、お前の母親とも離婚する。エルテ公爵家に払わなければいけない慰謝料は私が払う。そのかわり、デスタもソレーヌも、二度と私の前に姿を現すな。母親と三人で幸せに生きれば良い」
ロイアン伯爵が話し終えると、ソレーヌ様が泣き叫ぶ。
「嫌よ、そんなの! 私は平民になんかなりたくない!」
「僕もだ! 助けてくれ、セフィリア! 愛してる! 本当に愛してるんだ!」
デスタが床を這いつくばりながら、わたしに近寄ってこようとした。
すると、ロビースト様が立ち上がって、デスタの顎を蹴り飛ばした。
「まったく見苦しいものです。大丈夫でしたか、セフィリア嬢?」
顎を手で押さえて、床を転がりまわっているデスタを無視し、ロビースト様はわたしに話しかけてきた。
助けてもらったので、素直に感謝する。
「助けていただき、ありがとうございます」
「いえ、いいんです。だって、あなたはわたくしの婚約者になる方ですからねぇ」
「はい?」
眉根を寄せて聞き返した私を見て、ロビースト様はにたりと笑った。
そして、隣りに座っていたお姉様は両手で顔を覆って泣き始めた。
殴られて体勢を崩したデスタがソレーヌに抱きつくような状態になった。
そのせいで、倒れ込んできた彼の体を支えきれなかったソレーヌ様はデスタと一緒にソファに倒れ込んだ。
「お前も何を考えているんだ!」
ロイアン伯爵はソレーヌ様も殴ろうとして手を上げた。
でも、デスタの体が邪魔で彼女を叩けないことがわかり、すぐに手を下ろして叫ぶ。
「おかしいと思っていたんだ! セフィリア様が病弱だなんて話を他の人間から一度も聞いたことがないのに、何度も何度もすぐに帰って来るし、馬鹿みたいにソレーヌの元へ向かうから!」
「ロイアン伯爵、おかしいと思っていながら、確認をいれなかったのはなぜなのです?」
「それは、失礼に値するかと思いまして」
ロイアン伯爵はわたしに向かって何度も頭を下げる。
「セフィリア様のお怒りはごもっともです。ですが、何卒、お許し願えませんでしょうか。二度とこのようなことを息子にはさせません! どうかお願い致します!」
「ロイアン伯爵、申し訳ございませんが、わたしは考えを変えるつもりはありません」
冷たく応えてからお父様に目を向ける。
お父様は黒の上着の中から、折りたたまれた紙を取り出して、ロイアン伯爵に差し出した。
ロイアン伯爵は戸惑った様子ながらも、その紙を受け取る。
それは、わたしも読んだ報告書で、その内容を読んだロイアン伯爵は怒りで体が震え始めた。
「なんてことを! 本人に知られなければ、好きなことを言っても良いとでも思っていたのか!」
ロイアン伯爵は一度怒りを抑えて、お父様に礼を言ってから紙を返した。
そして、わたしのほうに近づいてくると、深々と頭を下げる。
「誠に申し訳ございませんでした。こんな話を知ってしまった以上、息子を許す気持ちも失せたでしょう。婚約破棄の件ですが受け入れさせていただきます」
「ち、父上! 待ってください! 諦めるには早すぎますよ!」
デスタはふざけたことを言うと、殴られた頬を手で押さえながら、わたしに訴えかけてくる。
「どうしちゃったんだよ。いつもは笑って許してくれていたじゃないか。今日は機嫌が悪いのかい?」
「今日だけじゃなくて、あなたやソレーヌ様を見たり、思い出したりするだけで機嫌が悪くなりそうだわ」
焦った顔をしているデスタは、わたしが素敵だと思っていた彼とはまったく違っていた。
親に嘘をついてまで浮気をして、婚約破棄をされて、父親に叱られて殴られる、ただの馬鹿な男だった。
また、悔しい気持ちがこみあげてくる。
本当に好きだった。
だから、こんな最低な人だったなんて知りたくなかった。
そして、薄々気が付いていて目を逸らし続けていた自分にも腹が立った。
手を握りしめ、拳を作ったところで冷静になり、大きく深呼吸する。
ここで感情的になってはいけない。
まだ、お父様の条件を満たせていないわ。
「そんな悲しいことを言わないでくれよ。頼むから!」
デスタがわたしに向かって手を伸ばしてきたので、その手を叩く。
「触らないで」
「そんな……! セフィリア、本気なのか?」
「本気よ。こんなことを冗談で言うわけがないでしょう?」
情けない顔をしているデスタを一瞥した後に、ソレーヌ様に目を向ける。
すると、なぜか彼女は愛想笑いをしてきた。
「そんなに怒らないで? その、申し訳ないと思っているわ。これからは控えるから」
「ソレーヌ様。もう、わたしとあなたの関係は、ただの公爵令嬢と伯爵令嬢という仲です。親しげに話しかけるのはやめてください」
「そんなっ! どうしてそんなに簡単に割り切れちゃうんですか!? あなたは、本当にお兄様のことを愛していたんですか!?」
ソレーヌ様はまるで、わたしが悪いような言い方をする。
悪いのはどちらなの?
「愛していたから捨てるのよ」
わたしは小さく呟くと、呆然とした表情のデスタに話しかける。
「デスタ様、あなたには彼女がお似合いです。わたしは絶対にあなたの妻にはなりませんので、ご安心くださいませ」
「そんな! これからは上手くやるよ! 絶対に上手くやるからチャンスをくれないか!? いや、チャンスをください!」
デスタはわたしの足元にやって来ると、カーペットの上に額をつけた。
上手くやるですって?
浮気を?
ふざけたことを言わないでほしい。
お父様はこれで満足かしら?
ちらりとお父様に目を向けると、満足そうな表情で口角を吊り上げた。
すぐにデスタに視線を移し、泣きべそをかいている彼を見下ろして尋ねる。
「どうして、チャンスをあげないといけないの? もう十分でしょう?」
「待ってくれ、セフィリア! 正直に言うよ! 僕はあわよくば、君とソレーヌの二人共を自分のものにしようとしていた! だけど、そんな考えは間違っていたと認める!」
「当たり前でしょう! そんな当たり前のことを言われて、わたしが許すとでも思ったの?」
この人、一体何なの?
少しでも彼から離れたくて、わたしは場所を移動して、ソファに座っているお姉様の隣が空いているので、そちらのスペースに避けた。
デスタは床にしゃがみ込んだまま、顔だけわたしのほうに向ける。
「頼むよ! 捨てないでくれ! 君に捨てられたらどうなると思ってるんだよ!」
「捨てられたらどうなるんだ? ぜひ、聞かせてほしい。そうだな。ロイアン伯爵の口から聞きたいものだ」
お父様は勝手に会話に割って入ってきて、クツクツと笑った。
本当に性格が悪い。
ロイアン伯爵は大きく息を吐いてから、デスタを見つめて口を開く。
「デスタ、お前とは親子の縁を切る。そして、ソレーヌ、お前の母親とも離婚する。エルテ公爵家に払わなければいけない慰謝料は私が払う。そのかわり、デスタもソレーヌも、二度と私の前に姿を現すな。母親と三人で幸せに生きれば良い」
ロイアン伯爵が話し終えると、ソレーヌ様が泣き叫ぶ。
「嫌よ、そんなの! 私は平民になんかなりたくない!」
「僕もだ! 助けてくれ、セフィリア! 愛してる! 本当に愛してるんだ!」
デスタが床を這いつくばりながら、わたしに近寄ってこようとした。
すると、ロビースト様が立ち上がって、デスタの顎を蹴り飛ばした。
「まったく見苦しいものです。大丈夫でしたか、セフィリア嬢?」
顎を手で押さえて、床を転がりまわっているデスタを無視し、ロビースト様はわたしに話しかけてきた。
助けてもらったので、素直に感謝する。
「助けていただき、ありがとうございます」
「いえ、いいんです。だって、あなたはわたくしの婚約者になる方ですからねぇ」
「はい?」
眉根を寄せて聞き返した私を見て、ロビースト様はにたりと笑った。
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