幸せなお飾りの妻になります!

風見ゆうみ

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第二部

2  出席する理由

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  リアムと寝室を共にするようになり、数日が経ったある日の昼、私とリアムは久しぶりに繁華街でデートをすることにした。

 以前、ココルと出会った店もあるし、繁華街には、あまり良い思い出はないけれど、マオニール家の領地であるし、領内でお金を回すことは大切だからと気持ちを切り替えた。

 ここ最近の繁華街は、他の領地からの観光客を呼んで、お金を落としてもらうことも考えているらしい。

 地産地消的なものも良いけれど、他の領地からのお金が流れるというのは、マオニール家の領民が裕福になる一つになるかもしれないから、その計画をすすめていくつもりなのだそう。

 経済状況が良くなれば、福祉にもっと手がつけられるはずだし、一人でも多くの人が幸せになれたら良いと思った。

「アイリスにお願いしたいことがあるんだけど」
「何でしょうか?」

 一通り買い物を済ませて、貴族の女性に人気だというカフェで休憩中している際に、リアムが話しかけてきたので聞き返した。

「一度でいいから、アイリスにもパーティーに参加してもらえると嬉しいなと思うんだけど。もちろん、嫌ならかまわない」
「パーティーですか? 出席するのはかまいませんけど、どうしてですか?」

 先日、リアムは一人で夜会に出席していたから、何か言われたのかもしれない。

 そう思って問いかけると、リアムが苦笑する。

「知り合いから聞いたんだけど、未だに、僕とアイリスのことを白い結婚だと噂してる人がいるみたいなんだ」
「……そうなんですね。でも、言われてもしょうがないかもしれません。大々的な式は挙げていませんし、夜会にもパートナーとして出席したことはありませんから」

 リアムが公爵だから出来ることで、伯爵家以下の貴族なら、酷い妻だと、周りから非難の声を浴びていてもおかしくない。

「教えてくださったお友達は、親切な方ですね。普通は本人には言いにくいでしょうから」
「そうだね。親切というか、ピュアといったほうが正しいかな。戦場ではすごく頼りになるのに、普段はその反動かわからないけど、のんびりとした天然な人だよ」

 その人がよっぽど良い人なのか、リアムの表情が和らいだ。

 戦場ではすごく頼りになるということは、男性であっているのかしら?
 女性だったとしたら、何だか複雑だわ。

「その、どのような方なのですか?」
「イーサンのこと? ジュード辺境伯家の次男だよ」
「そうなんですね」

 次男という言葉を聞いて、ホッとした。

 リアムは私以外の妻を娶らないし、愛人だって作らないと言ってくれたけれど、性格上、やっぱり……、と考えてしまうこともある。

 そんな時は、ちゃんと思ったことを話すようにと約束した。
 だから、言葉にしてみる。

「女性だったらどうしようかと思いました」
「……アイリスがヤキモチを妬いてくれたんなら嬉しいな」

 リアムはそう言って、私の左頬に触れた。

「リ、リアム!?」
「抱きしめたくなったんだけど、今は駄目だよね」
「今は駄目です」
「夜、ベッドの上で抱きしめてもいい?」
「それも駄目です!」
 
 ベッドの上で抱きしめられるなんて、ドキドキでショック死してしまいそう……!

「いつになったら、僕と寝てくれるのかな?」
「寝室は一緒にしてます」
「それ以上の話をしてるんだけど?」
「予定は未定です」
「……」

 リアムが言いたいことはわかる。
 私だって、このままで良いだなんて思ってはいない。

 だけど、怖い。
 聞いた話では、すごく痛いって聞くんだもの。

 そういえば、リアムは、そういう経験はあるのかしら?

 でも、絶対に知識はあるわよね。
 そういうことを教えられているはずだから。

「アイリス?」
「す、すみません、考え事をしてました。それよりも、私が出席しなければならないパーティーについて教えていただけますか?」

 話題を変えたので、リアムは不服そうにしていたけれど、今、ここでは私は話さないと感じ取ってくれたのか、パーティーについての話を教えてくれた。

 そして、それから数十日後、私はパーティーに出席し、彼女達と出会うことになる。

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