幸せなお飾りの妻になります!

風見ゆうみ

文字の大きさ
56 / 69
第二部

6  パーティーへの誘い

しおりを挟む
 クレア様とはあれから色々とあって、文通したり、お互いの家を行き来するようになった。

 そのせいもあり、お飾り妻だった時のように、屋敷の中にいるだけでなく、外にもよく出かけるようになった。

 もちろん、公爵家での仕事もしているし、遊び呆けているわけでも、お金を浪費しているわけでもない。

 そんなある日の晩、寝室にあるベッドの上で本を読んでいると、隣のベッドで横になっていたリアムが話しかけてきた。

「……アイリス、隣国であるアラルフェイトの王家主催のパーティーに夫婦で招待されてるんだ。悪いけど、一緒に行ってくれないかな」
「他国の王家主催のパーティーですか……。承知しました」
「かなり長旅にもなるけどいいかな?」
「かまいませんよ。隣国とはいえ、王家主催なら断れませんものね! ただ、お仕事をどうするよかが気になりますが……」

 私が不安そうにすると、リアムは笑う。

「トーイは一緒に行ってもらうけど、それ以外は屋敷に残らせるから、代理で頑張ってもらうよ。父上と母上も協力してくれるって」
「そうなんですね、お義父様達には申し訳ないですが、助けていただけるのは有り難いですね」
「本当にごめん」
「リアムが謝ることではありませんから!」
 
 お互いの気持ちを伝えあってからのリアムは、私に今まで以上に甘くなった。
 元々、リアムは私には甘いとは思っていたけれど、今まで以上に甘くて、どう対応したら良いのかわからないほどになった。
 妻なのだから当たり前のことなのに、パーティーが苦手な私に同行を求めることを申し訳なく思ってくれているんだから、困ったものだわ。

 それくらいで、私がリアムを嫌うと思ってるのかしら?

 そんな疑問と共に、隣国についての疑問がわいてきた。

「私はあまり隣国には詳しくはないんですが、何か注意したほうが良いということはありますか? もちろん、勉強はしていくつもりですが……」
「うーん。そうだな。一応、友好国ではあるし、慣習に厳しい国ではないけれど、他の国と違っているのは、女性しか王位を継げないというところかな」
「……ということは、隣国は女王陛下なんですね」

 そう言われてみれば、そんなことを聞いたことがあるのを思い出した。

「うん。それから、今の女王陛下はまだお若いんだ」

 リアムが苦笑するから気になって聞いてみる。

「おいくつなんですか?」
「たしか、16歳だよ。ご結婚されてるけどね。お相手はたしか、僕と同じ年だったと思う」
「16歳でご結婚ですか……」
「王族にしても早い気がするよね。まあ、それは良いとして、なんというか、恋することが趣味みたいな女性だと言われてる」
「惚れっぽいということですか?」
「そうなるだろうね」

 リアムは頷いたあと、広い部屋に並べられたダブルベッドの1つに座っていた私の隣に座ると抱きしめてきた。

「今日は一緒に寝てもいいかな?」

 私の寝相が悪いので、ベッドは別々にしているのだけれど、リアムは一緒のベッドで眠りたがることが多い。
 でも、次の日の朝早くから仕事の場合は、必ず、同じベッドで眠ることは御断りしている。

 私の寝相の悪さで、リアムの安眠を邪魔するわけにはいかないもの。

「……明日は休みじゃないですよね」
「家でこなせる仕事なら、休みなんてあってないようなものだから」
「ということは仕事なんですね」

 笑顔を作ってから聞くと、諦めたように小さく息を吐いてから、リアムは首を縦に振る。

「そうです」
「そうですか。では、リアムはあちらにお戻りください」 
「……」

 リアムのベッドを指差すと、不満げな顔をしながらも、リアムは渋々、自分のベッドに戻っていった。


しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

【完結】ご期待に、お応えいたします

楽歩
恋愛
王太子妃教育を予定より早く修了した公爵令嬢フェリシアは、残りの学園生活を友人のオリヴィア、ライラと穏やかに過ごせると喜んでいた。ところが、その友人から思いもよらぬ噂を耳にする。 ーー私たちは、学院内で“悪役令嬢”と呼ばれているらしいーー ヒロインをいじめる高慢で意地悪な令嬢。オリヴィアは婚約者に近づく男爵令嬢を、ライラは突然侯爵家に迎えられた庶子の妹を、そしてフェリシアは平民出身の“精霊姫”をそれぞれ思い浮かべる。 小説の筋書きのような、婚約破棄や破滅の結末を思い浮かべながらも、三人は皮肉を交えて笑い合う。 そんな役どころに仕立て上げられていたなんて。しかも、当の“ヒロイン”たちはそれを承知のうえで、あくまで“純真”に振る舞っているというのだから、たちが悪い。 けれど、そう望むのなら――さあ、ご期待にお応えして、見事に演じきって見せますわ。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。 理由は他の女性を好きになってしまったから。 10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。 意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。 ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。 セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。

処理中です...