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第二部
10 女王陛下のワガママ
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「駄目だよ、セーラ。そんな、ワガママを言ってはいけないよ!」
「ワガママなんかじゃないわ!」
女王陛下は、彼女をたしなめた王配のディール殿下に向かって、首を横に振りながら叫ぶ。
「絶対に彼は私の運命の人なのよ! だから、彼は私のものになるべきよ!」
「セーラ、マオニール公爵には奥様がいらっしゃるんだ。だから諦めるんだ。君には僕がいるだろう?」
「ディールのことは、もちろん好きよ! だけど、お願いディール、マオニール公爵が素敵だから、今年の誕生日プレゼントはマオニール公爵がいいわ!」
「いいかげんにしろ、セーラ!」
壇上で叫ぶ女王陛下は、旦那さまであるディール殿下から怒鳴られても、諦められないようだった。
「欲しい、欲しい、欲しい! 私はリアムが欲しいの!」
「申し訳ございませんが女王陛下。お気持ちは有り難いのですが、私には愛する妻がおりますので」
呆気にとられて、行動出来ずにいた私の肩を抱いて、リアムは続ける。
「後ろもつかえておりますので、失礼させていただきます」
「駄目よ!」
「セーラ! いいかげんにしろ! マオニール公爵、それから公爵夫人も気を悪くしないでほしい。彼女はまだ子供なんだ」
「承知いたしました。申し訳ございませんが、気分が優れませんので、本日はここで失礼させていただきます」
ディール殿下に笑顔を返して頭を下げてから後ろに並んでいた人達のために場所を譲る。
女王陛下はまだ何か言っておられたけれども、振り返らないようにした。
二人から離れて大きく息を吐くと、リアムが耳元で囁く。
「君の食べたい物は部屋に運んでもらおう。ここでは食べにくいだろう?」
「そんな贅沢なことは出来ませんよ! 今日は諦めます。この国を出るまでに、城下のお店に行って、スイーツをゆっくり堪能したいんですけど、それは駄目ですか?」
「アイリスがそうしたいならそれでいいよ」
リアムは私の手をとって優しく指にキスをしてから続ける。
「そういえば、国に帰ったら、指輪も買いに行かないとね。それだけでも男性よけにはなるだろうし」
「誰も私に興味なんて持ちませんから大丈夫ですよ」
「少なくとも僕が持ってるから、誰も、ではないと思うけど」
「じゃあ、リアムだけです」
「本当にそうなら安心だけど、そうじゃないかもしれない」
リアムが笑顔で言う。
彼の笑顔は同じように見えて、何パターンかあり、この顔をしている時は絶対に譲らない顔だ。
「リアムは心配性なんですね」
「そうだね。もう少し、アイリスが自分に自信を持ってほしいと思いつつも、自分の良さに気が付いて、僕から離れていくのも嫌なんだよね。難しいところなんだ」
「リアム以上に素敵な方はそういらっしゃらないと思いますから、私がリアムから離れていくなんてことはないと思います」
そこまで言って、自分で言ったくせに、なんだか恥ずかしくなって、早足でパーティー会場を出る。
「待ってよ、アイリス」
リアムに腕を掴まれ、引き寄せられて耳元で囁かれる。
「アイリスが嬉しいことを言ってくれたから、今日はアイリスを抱きしめないと眠れそうにないかも」
「駄目ですからね! 別々に寝ますからね!」
リアムが何をしようとしているのかがわかって、彼の頬を軽くつねった。
この時の私とリアムは女王陛下が、リアムに執着するだなんてことを、露ほども思っていなかった。
「ワガママなんかじゃないわ!」
女王陛下は、彼女をたしなめた王配のディール殿下に向かって、首を横に振りながら叫ぶ。
「絶対に彼は私の運命の人なのよ! だから、彼は私のものになるべきよ!」
「セーラ、マオニール公爵には奥様がいらっしゃるんだ。だから諦めるんだ。君には僕がいるだろう?」
「ディールのことは、もちろん好きよ! だけど、お願いディール、マオニール公爵が素敵だから、今年の誕生日プレゼントはマオニール公爵がいいわ!」
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呆気にとられて、行動出来ずにいた私の肩を抱いて、リアムは続ける。
「後ろもつかえておりますので、失礼させていただきます」
「駄目よ!」
「セーラ! いいかげんにしろ! マオニール公爵、それから公爵夫人も気を悪くしないでほしい。彼女はまだ子供なんだ」
「承知いたしました。申し訳ございませんが、気分が優れませんので、本日はここで失礼させていただきます」
ディール殿下に笑顔を返して頭を下げてから後ろに並んでいた人達のために場所を譲る。
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二人から離れて大きく息を吐くと、リアムが耳元で囁く。
「君の食べたい物は部屋に運んでもらおう。ここでは食べにくいだろう?」
「そんな贅沢なことは出来ませんよ! 今日は諦めます。この国を出るまでに、城下のお店に行って、スイーツをゆっくり堪能したいんですけど、それは駄目ですか?」
「アイリスがそうしたいならそれでいいよ」
リアムは私の手をとって優しく指にキスをしてから続ける。
「そういえば、国に帰ったら、指輪も買いに行かないとね。それだけでも男性よけにはなるだろうし」
「誰も私に興味なんて持ちませんから大丈夫ですよ」
「少なくとも僕が持ってるから、誰も、ではないと思うけど」
「じゃあ、リアムだけです」
「本当にそうなら安心だけど、そうじゃないかもしれない」
リアムが笑顔で言う。
彼の笑顔は同じように見えて、何パターンかあり、この顔をしている時は絶対に譲らない顔だ。
「リアムは心配性なんですね」
「そうだね。もう少し、アイリスが自分に自信を持ってほしいと思いつつも、自分の良さに気が付いて、僕から離れていくのも嫌なんだよね。難しいところなんだ」
「リアム以上に素敵な方はそういらっしゃらないと思いますから、私がリアムから離れていくなんてことはないと思います」
そこまで言って、自分で言ったくせに、なんだか恥ずかしくなって、早足でパーティー会場を出る。
「待ってよ、アイリス」
リアムに腕を掴まれ、引き寄せられて耳元で囁かれる。
「アイリスが嬉しいことを言ってくれたから、今日はアイリスを抱きしめないと眠れそうにないかも」
「駄目ですからね! 別々に寝ますからね!」
リアムが何をしようとしているのかがわかって、彼の頬を軽くつねった。
この時の私とリアムは女王陛下が、リアムに執着するだなんてことを、露ほども思っていなかった。
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