65 / 69
第二部
15 女王陛下のワガママなお願い
しおりを挟む
自国の王家にリアムは電報を打ってくれ、すぐに返事が返ってきた
リアムの打った電報の内容が内容なだけに、外交に支障が出てくるとして、最優先事項として扱ってくれたみたいだった。
結果、愛人についての話は断ってかまわないという許可がおりた。
「大人しく愛人になれだなんて言う方ではないと思っていたけどホッとしたよ」
リアムは苦笑して言った。
その日は、リアムと一緒に城下にある貴族専用の宿に泊まった。
宮殿の敷地内にいれば、いつセーラ様がやってくるかわからなかったからだ。
次の日の朝に、リアムがセーラ様にお断りの返事をし、私からも正式に「お断りします」と告げさせてもらった。
「残念だわ。……私もね、頑張ってみたの。他の男性をたくさん呼んだのよ。今まで、素敵だと思った人を全て」
「……」
彼女が何を言おうとしているのか分からず、とりあえず最後まで聞いてみようと黙っていると、玉座に座っておられるセーラ様の横の椅子に座っているディール殿下の様子が気になった。
とても、辛そうな表情をしておられる。
セーラ様から、他の男性の話なんて聞きたくないのかもしれない。
本当にお気の毒だわ。
こうなるということを覚悟していたとしても、辛いに決まっている。
セーラ様はどうして、ディール殿下のことを考えてあげないのかしら?
こんなにもセーラ様のことを思ってらっしゃるのに……。
「アイリス、ディールを見つめてどうしたの?」
ついついお気の毒になって見つめてしまっていると、セーラ様に聞かれてしまった。
質問してもよいか尋ねると許可がおりたので、気になったことを口にしてみる。
「ディール殿下の体調が優れないのではと思いまして……」
「え? ディールが? どうしたの、ディール? 何かあったの? お医者様を呼ぶ? 嫌よ、死んじゃ嫌だからね!」
立ち上がったセーラ様は、横に座っていたディール様に子供みたいに抱きついた。
そんなに大事に思ってるのに、どうしてリアムを欲しがるの?
「今日はもういいわ! 二人共、また明日、ゆっくり話しましょ!」
セーラ様はディール殿下を連れて、私達の返事を待たずに、さっさと部屋を出ていく。
「……申し訳ない。もう少しだけ付き合ってやって欲しい」
ディール殿下が私達に向かって、深々と頭を下げた。
それを見たセーラ様が叫ぶ。
「ディール! そんなことをしている場合じゃないでしょ! 気分が悪いなら横にならなきゃ!」
慌ただしく部屋から出て行った二人を見送ったあと、リアムが大きなため息を吐く。
「明日話すって、まだ帰らせてもらえないのか」
「今までは、リアムが普通の人よりも素敵だから愛人にしたいと言い出したのかなと思っていただけだったんですけど……」
「どうかしたの?」
「リアム、たぶんなんですけど……」
思い浮かんだことをリアムに伝えようとした時だった。
バタバタという足音が近付いてきて、私達がいる部屋の前で止まり、勢いよく扉が開いたかと思うと、セーラ様が入ってきて叫ぶ。
「ねえ、明日の晩は、城下でお祭りがあるの。リアムとの思い出が欲しいから、その日一日だけ、夫を交換しましょう! これは命令よ! じゃあ、また明日ね! あなたの国の王家には私のほうから連絡を入れておくから!」
「え! ちょっ!?」
私とリアムが何か言い返す間もなく、セーラ様は部屋から出ていくと、扉を閉めて去っていってしまった。
慌てて、リアムが後を追いかけたけれど、逃げ足が速いというのか、すぐに見えなくなってしまったらしい。
部屋の中に戻ってきたリアムがこめかみをおさえて言う。
「夫を交換だなんて何を考えてるんだ。たとえ、相手が隣国の王配だったとしても、君が他の男と一緒に祭りに行くなんて絶対に嫌なんだけど。警備の問題とかどうするつもりなんだ……」
「リアム、私、ディール殿下とお話したいことがあるんです」
「……」
リアムがショックを受けた顔をして私を見るので、慌てて首を横に振りながら言う。
「変な意味じゃありません。もちろん、私だって、1日でも早く帰りたいです。ただ、今からリアムに話すことを、ディール殿下にお話したいんです」
「……とにかく宿に戻ろう。話はそこで聞くよ」
リアムは納得いかないといった感じだったけれど、渋々頷いてくれてから、私を促して部屋を出た。
リアムの打った電報の内容が内容なだけに、外交に支障が出てくるとして、最優先事項として扱ってくれたみたいだった。
結果、愛人についての話は断ってかまわないという許可がおりた。
「大人しく愛人になれだなんて言う方ではないと思っていたけどホッとしたよ」
リアムは苦笑して言った。
その日は、リアムと一緒に城下にある貴族専用の宿に泊まった。
宮殿の敷地内にいれば、いつセーラ様がやってくるかわからなかったからだ。
次の日の朝に、リアムがセーラ様にお断りの返事をし、私からも正式に「お断りします」と告げさせてもらった。
「残念だわ。……私もね、頑張ってみたの。他の男性をたくさん呼んだのよ。今まで、素敵だと思った人を全て」
「……」
彼女が何を言おうとしているのか分からず、とりあえず最後まで聞いてみようと黙っていると、玉座に座っておられるセーラ様の横の椅子に座っているディール殿下の様子が気になった。
とても、辛そうな表情をしておられる。
セーラ様から、他の男性の話なんて聞きたくないのかもしれない。
本当にお気の毒だわ。
こうなるということを覚悟していたとしても、辛いに決まっている。
セーラ様はどうして、ディール殿下のことを考えてあげないのかしら?
こんなにもセーラ様のことを思ってらっしゃるのに……。
「アイリス、ディールを見つめてどうしたの?」
ついついお気の毒になって見つめてしまっていると、セーラ様に聞かれてしまった。
質問してもよいか尋ねると許可がおりたので、気になったことを口にしてみる。
「ディール殿下の体調が優れないのではと思いまして……」
「え? ディールが? どうしたの、ディール? 何かあったの? お医者様を呼ぶ? 嫌よ、死んじゃ嫌だからね!」
立ち上がったセーラ様は、横に座っていたディール様に子供みたいに抱きついた。
そんなに大事に思ってるのに、どうしてリアムを欲しがるの?
「今日はもういいわ! 二人共、また明日、ゆっくり話しましょ!」
セーラ様はディール殿下を連れて、私達の返事を待たずに、さっさと部屋を出ていく。
「……申し訳ない。もう少しだけ付き合ってやって欲しい」
ディール殿下が私達に向かって、深々と頭を下げた。
それを見たセーラ様が叫ぶ。
「ディール! そんなことをしている場合じゃないでしょ! 気分が悪いなら横にならなきゃ!」
慌ただしく部屋から出て行った二人を見送ったあと、リアムが大きなため息を吐く。
「明日話すって、まだ帰らせてもらえないのか」
「今までは、リアムが普通の人よりも素敵だから愛人にしたいと言い出したのかなと思っていただけだったんですけど……」
「どうかしたの?」
「リアム、たぶんなんですけど……」
思い浮かんだことをリアムに伝えようとした時だった。
バタバタという足音が近付いてきて、私達がいる部屋の前で止まり、勢いよく扉が開いたかと思うと、セーラ様が入ってきて叫ぶ。
「ねえ、明日の晩は、城下でお祭りがあるの。リアムとの思い出が欲しいから、その日一日だけ、夫を交換しましょう! これは命令よ! じゃあ、また明日ね! あなたの国の王家には私のほうから連絡を入れておくから!」
「え! ちょっ!?」
私とリアムが何か言い返す間もなく、セーラ様は部屋から出ていくと、扉を閉めて去っていってしまった。
慌てて、リアムが後を追いかけたけれど、逃げ足が速いというのか、すぐに見えなくなってしまったらしい。
部屋の中に戻ってきたリアムがこめかみをおさえて言う。
「夫を交換だなんて何を考えてるんだ。たとえ、相手が隣国の王配だったとしても、君が他の男と一緒に祭りに行くなんて絶対に嫌なんだけど。警備の問題とかどうするつもりなんだ……」
「リアム、私、ディール殿下とお話したいことがあるんです」
「……」
リアムがショックを受けた顔をして私を見るので、慌てて首を横に振りながら言う。
「変な意味じゃありません。もちろん、私だって、1日でも早く帰りたいです。ただ、今からリアムに話すことを、ディール殿下にお話したいんです」
「……とにかく宿に戻ろう。話はそこで聞くよ」
リアムは納得いかないといった感じだったけれど、渋々頷いてくれてから、私を促して部屋を出た。
87
あなたにおすすめの小説
何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。
自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。
彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。
そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。
大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
【完結】ご期待に、お応えいたします
楽歩
恋愛
王太子妃教育を予定より早く修了した公爵令嬢フェリシアは、残りの学園生活を友人のオリヴィア、ライラと穏やかに過ごせると喜んでいた。ところが、その友人から思いもよらぬ噂を耳にする。
ーー私たちは、学院内で“悪役令嬢”と呼ばれているらしいーー
ヒロインをいじめる高慢で意地悪な令嬢。オリヴィアは婚約者に近づく男爵令嬢を、ライラは突然侯爵家に迎えられた庶子の妹を、そしてフェリシアは平民出身の“精霊姫”をそれぞれ思い浮かべる。
小説の筋書きのような、婚約破棄や破滅の結末を思い浮かべながらも、三人は皮肉を交えて笑い合う。
そんな役どころに仕立て上げられていたなんて。しかも、当の“ヒロイン”たちはそれを承知のうえで、あくまで“純真”に振る舞っているというのだから、たちが悪い。
けれど、そう望むのなら――さあ、ご期待にお応えして、見事に演じきって見せますわ。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。
理由は他の女性を好きになってしまったから。
10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。
意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。
ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。
セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる