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4 駆除しなければならない
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ランドリュー様は悪い人ではなさそうだけど、メンタル面が心配だわ。
もっと、自分に自信を持てるようにならないと伯爵は務まらない。
この様子じゃ領民だって不安になってしまうわ。
「お兄様が馬鹿だと気付けて良かったではありませんか。あなたが伯爵となり、より良い伯爵領に変えていけば良いのです」
「……そんなものでしょうか」
「そんなものですわ」
頷くと、ランドリュー様も素直に頷く。
「そうだと思うことにします」
「最初から諦めていてはいけませんわ」
「頑張ります!」
ランドリュー様は右手に拳を作って宣言したのはいいものの、すぐにしょぼんと肩を落とす。
「書類仕事は今まで僕がやっていたので良いんですが、社交場にはいつも兄に出席してもらっていたんです。僕にはパートナーがいませんし、これからどうしたら良いのか」
「よろしければ、わたくしが行きましょうか」
「良いんですか?」
「ええ。ただ、ケサス様の婚約者ではなくなったわたくしが張り切って出ても良いのかというところが問題ではありますが」
ランドリュー様は少し考えてから提案してくる。
「では、兄との婚約は破棄されたのですし、僕と婚約するというのはどうでしょうか」
「ランドリュー様と?」
「は、はい。あの、迷惑でしょうか」
「いいえ。願ってもないことですが、本当によろしいんですの?」
「はい。ファリン嬢と話をしていると、なぜか勇気と自信が湧いてくるんです!」
拳を握りしめて訴えてくるランドリュー様に苦笑すると、また、しゅんと肩を落とす。
「興奮してしまって申し訳ございません」
「いいえ。わたくしとしましては、ランドリュー様の性格はとても好ましいものですわ。ですが、伯爵という立場を考えますと心配です。婚約者として口を出すこともあるかと思いますが、それはお許しいただけますか?」
「それはもちろんです。あ、でも、その、お前みたいな役立たずは死ねとか、そういう言葉は控えてもらえると助かります」
「ケサス様がそんなことを言っていたんですか?」
尋ねると、ランドリュー様は無言で頷いた。
ケサス様に罵詈雑言を浴びせられて、自分に自信がなくなったパターンというところかしら。
それにしても、誰かに向かって死ねだなんて口に出して言ってはいけないことよ。
……ああ、でも、大切な人の仇とかなら言っても良いのかしら。
「兄からはずっと、その態度や図体が鬱陶しいと言われ続けてきました」
「言われ続けたから、自分に自信がなくなってしまったのですね」
「……学園に通っていた時はここまで酷くなかったんですが、卒業してからはほとんど兄と一緒にいましたので、そのせいかもしれません」
「原因はケサス様ですわね」
まったく、迷惑な人だわ。
「どうしましょうか。ファリン嬢が良いのであれば、婚約破棄の書類と新たな婚約の書類を用意しますが」
「よろしいんですの?」
「かまいませんよ」
「あの、わたくしが相手でという意味なのですが」
「はい! お兄様よりも僕の話を聞いてくれる若い女性はファリン嬢しかいないと思います」
「世の中の女性はそんなに馬鹿ばかりではありませんわよ」
今まで、ケサス様とランドリュー様との間にどんなことが起きていたのかはわからない。
でも、ランドリュー様は根が良い人でしょうから、自信をつければ多くの人から支持されるでしょう。
ランドリュー様が立派な伯爵になっている姿をケサス様に見せてさしあげましょう!
「これは失礼いたしました。僕の今までの婚約者がそうでしたので」
「ということは、今回の駆け落ち相手もランドリュー様と関係があったのですか?」
「彼女は僕が子供の頃の婚約者です。僕と婚約を解消したあと、違う人の婚約者になっていました。結局は兄が奪ったようですが」
そこまで言うと、ランドリュー様が眉尻を下げた。
「どうかしましたか?」
「……子爵令嬢の婚約者から慰謝料を払えと言われるかもしれません」
「……可能性はありますわね。ところで子爵令嬢のお相手はどなたですの? と、いいますか、子爵令嬢がどなたかもわたくしは知らないのですが」
「失礼しました。手紙には子爵令嬢としか書いてありませんでしたね」
「ランドリュー様は知ることができたのですか?」
「……実は、ファリン嬢が来る前にシイオ子爵夫妻がやって来たんです」
シイオ子爵家といえば、一人娘がとても美人だということで有名だわ。
たしか、わたくしよりも一つ年上の20歳だったかしら。
「なんとおっしゃっていたのですか?」
「二人を捜し出して家に連れ戻すと言っていました」
「捜し出すのはかまいませんが、子爵令嬢だけにしましょう」
「え? あ、それはどういう?」
「いえ、何でもございません」
危なかった。
ケサス様のような置物が家にあっても邪魔なだけなので捜す必要はない、と言いそうになってしまったわ。
「ファリン嬢もお疲れですよね。失礼しました。まずは部屋に案内させましょう。休憩後にゆっくり話しませんか。話したいことがたくさんありますから」
「お心遣いに感謝いたします」
メイドにわたくしの部屋に案内してもらって一人になると、やらなければならないことを考えた。
ケサス様が子爵家の人たちに見つかって、家に帰りたいと言い出しても、絶対に入れてやるものですか。
ランドリュー様に悪影響を与える害虫は駆除しなければならない。
ちょうど、ミノスラード伯爵家の庭園は手入れされていないから荒れ放題で、木々の中に入れば視界が悪い。
侵入できないように、罠を作るのも素敵ね。
その日の夜、作成してもらった書類にサインをして、わたくしはケサス様からの婚約破棄を受け入れ、正式にランドリュー様の婚約者となった。
もっと、自分に自信を持てるようにならないと伯爵は務まらない。
この様子じゃ領民だって不安になってしまうわ。
「お兄様が馬鹿だと気付けて良かったではありませんか。あなたが伯爵となり、より良い伯爵領に変えていけば良いのです」
「……そんなものでしょうか」
「そんなものですわ」
頷くと、ランドリュー様も素直に頷く。
「そうだと思うことにします」
「最初から諦めていてはいけませんわ」
「頑張ります!」
ランドリュー様は右手に拳を作って宣言したのはいいものの、すぐにしょぼんと肩を落とす。
「書類仕事は今まで僕がやっていたので良いんですが、社交場にはいつも兄に出席してもらっていたんです。僕にはパートナーがいませんし、これからどうしたら良いのか」
「よろしければ、わたくしが行きましょうか」
「良いんですか?」
「ええ。ただ、ケサス様の婚約者ではなくなったわたくしが張り切って出ても良いのかというところが問題ではありますが」
ランドリュー様は少し考えてから提案してくる。
「では、兄との婚約は破棄されたのですし、僕と婚約するというのはどうでしょうか」
「ランドリュー様と?」
「は、はい。あの、迷惑でしょうか」
「いいえ。願ってもないことですが、本当によろしいんですの?」
「はい。ファリン嬢と話をしていると、なぜか勇気と自信が湧いてくるんです!」
拳を握りしめて訴えてくるランドリュー様に苦笑すると、また、しゅんと肩を落とす。
「興奮してしまって申し訳ございません」
「いいえ。わたくしとしましては、ランドリュー様の性格はとても好ましいものですわ。ですが、伯爵という立場を考えますと心配です。婚約者として口を出すこともあるかと思いますが、それはお許しいただけますか?」
「それはもちろんです。あ、でも、その、お前みたいな役立たずは死ねとか、そういう言葉は控えてもらえると助かります」
「ケサス様がそんなことを言っていたんですか?」
尋ねると、ランドリュー様は無言で頷いた。
ケサス様に罵詈雑言を浴びせられて、自分に自信がなくなったパターンというところかしら。
それにしても、誰かに向かって死ねだなんて口に出して言ってはいけないことよ。
……ああ、でも、大切な人の仇とかなら言っても良いのかしら。
「兄からはずっと、その態度や図体が鬱陶しいと言われ続けてきました」
「言われ続けたから、自分に自信がなくなってしまったのですね」
「……学園に通っていた時はここまで酷くなかったんですが、卒業してからはほとんど兄と一緒にいましたので、そのせいかもしれません」
「原因はケサス様ですわね」
まったく、迷惑な人だわ。
「どうしましょうか。ファリン嬢が良いのであれば、婚約破棄の書類と新たな婚約の書類を用意しますが」
「よろしいんですの?」
「かまいませんよ」
「あの、わたくしが相手でという意味なのですが」
「はい! お兄様よりも僕の話を聞いてくれる若い女性はファリン嬢しかいないと思います」
「世の中の女性はそんなに馬鹿ばかりではありませんわよ」
今まで、ケサス様とランドリュー様との間にどんなことが起きていたのかはわからない。
でも、ランドリュー様は根が良い人でしょうから、自信をつければ多くの人から支持されるでしょう。
ランドリュー様が立派な伯爵になっている姿をケサス様に見せてさしあげましょう!
「これは失礼いたしました。僕の今までの婚約者がそうでしたので」
「ということは、今回の駆け落ち相手もランドリュー様と関係があったのですか?」
「彼女は僕が子供の頃の婚約者です。僕と婚約を解消したあと、違う人の婚約者になっていました。結局は兄が奪ったようですが」
そこまで言うと、ランドリュー様が眉尻を下げた。
「どうかしましたか?」
「……子爵令嬢の婚約者から慰謝料を払えと言われるかもしれません」
「……可能性はありますわね。ところで子爵令嬢のお相手はどなたですの? と、いいますか、子爵令嬢がどなたかもわたくしは知らないのですが」
「失礼しました。手紙には子爵令嬢としか書いてありませんでしたね」
「ランドリュー様は知ることができたのですか?」
「……実は、ファリン嬢が来る前にシイオ子爵夫妻がやって来たんです」
シイオ子爵家といえば、一人娘がとても美人だということで有名だわ。
たしか、わたくしよりも一つ年上の20歳だったかしら。
「なんとおっしゃっていたのですか?」
「二人を捜し出して家に連れ戻すと言っていました」
「捜し出すのはかまいませんが、子爵令嬢だけにしましょう」
「え? あ、それはどういう?」
「いえ、何でもございません」
危なかった。
ケサス様のような置物が家にあっても邪魔なだけなので捜す必要はない、と言いそうになってしまったわ。
「ファリン嬢もお疲れですよね。失礼しました。まずは部屋に案内させましょう。休憩後にゆっくり話しませんか。話したいことがたくさんありますから」
「お心遣いに感謝いたします」
メイドにわたくしの部屋に案内してもらって一人になると、やらなければならないことを考えた。
ケサス様が子爵家の人たちに見つかって、家に帰りたいと言い出しても、絶対に入れてやるものですか。
ランドリュー様に悪影響を与える害虫は駆除しなければならない。
ちょうど、ミノスラード伯爵家の庭園は手入れされていないから荒れ放題で、木々の中に入れば視界が悪い。
侵入できないように、罠を作るのも素敵ね。
その日の夜、作成してもらった書類にサインをして、わたくしはケサス様からの婚約破棄を受け入れ、正式にランドリュー様の婚約者となった。
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