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6 あっという間に過ぎる午後
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「どうした? リリー、頭痛でもするのか?」
「うん、ちょっとね」
両親の反応を考えて、こめかみをおさえた私を心配してリュカが尋ねてくれた。
そんな彼に苦笑して答えたあと、押さえていた手を離して話を続ける。
「これからのことを考えていただけだから気にしないで。心配してくれてありがとう。話を戻すけれど、あなたのご両親へ挨拶を先にしたほうが良いのかしら? 身分はあなた家のほうが、わたしの家とは比べ物にならないくらいに上なんだから」
「そうか? それなら早速向かおうか。君の護衛たちにも伝えるけど、正式に父からもリリーの家族に連絡してもらうようにするよ」
「ちょ、ちょっと待って! 向かうってどこに!?」
「俺の両親のところだよ」
「ちょっと待って、リュカ! 今すぐ行くと言うのなら話は別よ!」
たしか、わたしの家族は今日の夜には帰って来ることになっている。
私が家にいなければ、かなり驚くはずだわ。
立ち上がったリュカを引き止めようとした時だった。
リュカの緩んでいた表情が緊迫したものに変わったことに気が付いた。
「リュカ?」
「リリー、これから話しかけてくる奴は要注意人物だから覚えていてくれ。奴の名前はザライス・レイクウッド。俺を嵌めた男の名だ。そして、かつての俺の親友だった奴だよ」
「はい?」
私が聞き返したと同時、長い黒髪を後ろで一つにまとめた、ひょろりとした背の高い神経質そうな男が店の中に入ってきた。
店内を見回したかと思うと、リュカのほうを見て眉根を寄せた。
そして、私たちの所やって来たかと思うと、リュカに向かって叫ぶ。
「リュカ! なんでこんな所にいるんだ! 今日は城に行くはずだろ!? 勝手な行動をとらないでくれよ!」
「予定を変更したんだ」
「僕はそんな話、一切聞いていないぞ!」
レイクウッドという男性は細い目をより細めて、リュカを責めた。
「急遽決まったんだ。父上の許可も得ているし、朝の段階でアグリタの国王にも連絡を入れて承諾も得てる」
冷たい口調で答えるリュカの態度に、レイクウッドは興奮して叫んだせいで、ずれた眼鏡を指で直しながら、訝しげな表情を見せた。
この人、側近なのに偉そうな態度を取ってるわね。
――わたしもリュカに対して敬語じゃないから人のことは言えないけれど。
「どうしてそんな勝手なことをしたんだ。しかも、僕に何も言ってくれないだなんておかしいだろう?」
「どうした、ザライス。俺がアグリタ城に行かなかったことで何か問題でもあったか?」
「問題があるとかないとかいう話じゃない! 勝手な動きをしないでくれ! しかも女性なんか連れて何をしているんだよ。リュカには素敵な婚約者がいるだろう! おい、お前! お前が着ているコートはいくらすると思ってるんだ! 早く脱げ!」
リュカのコートを着たままだった私を見て、レイクウッドは怒り始めた。
慌ててコートを脱ごうとすると、リュカが止めてくる。
「リリー、気にしなくていいから」
「でも、高いんでしょう? 汚してはいけないわ」
「汚したとしても、未来の妻に金を請求したりはしないよ」
「そうしてくれると助かるわ」
レイクウッドは私たちのやり取りを聞いて不思議そうな顔をしたけれど、すぐに私を睨みつけてきた。
「どうしてこんなに偉そうにしているんだ」
「それは失礼いたしました」
別にこの人に睨まれても怖くないわ。
負けじと睨み返すと、レイクウッドは私から視線を逸らして、リュカのほうに顔を向けた。
「リュカ、とにかくこの店を出よう」
「そうだな。行こうか、リリー」
「ええ」
リュカが立ち上がって手を差し出してきたので、彼の手に自分の手を重ねる。
すると、レイクウッドが眉根を寄せて、私に尋ねてきた。
「さっきから、リュカに馴れ馴れしい態度を取っていますが、あなたは一体、どこの誰なんです?」
「まずは自分の名前から名乗るのが貴族の礼儀ではないのですか?」
「はあ? 何を生意気なことを言ってるんだ! おい、リュカ、彼女は誰なんだよ!?」
「彼女は俺の大事な人だ。だから、彼女に偉そうな口を叩くのは今すぐやめろ」
レイクウッドに尋ねられたリュカは、はっきりと答えた。
レイクウッドはリュカに何か言おうと口を開きはしたけれど、周りの注目を浴びていることに気が付いたのか、舌打ちをしてから口を閉ざした。
「行こう、リリー」
「ええ」
椅子から立ち上がり、リュカと手を繋いで店の出口へと向かった。
*****
リュカと共に店の外に出た私は、まずはリュカに私の両親に会ってもらえないかとお願いした。
リュカのご両親であるトラブレル王国の両陛下は、約束もなしに会える方たちではないだろうし、もし会うことが出来たとしても約束もなしに押しかけるのは失礼に当たると思ったからだ。
そのことを伝えると、リュカも頷いてくれた。
「父上と母上はすでにこの国を出ているだろうから、国に帰って落ち着いてから会ったほうが良いだろうしな」
「出来れば、私の両親も連れていきたいのよ」
「わかった」
「リュカ、いい加減にしてくれ! 一体、どうなっているんだ!」
後から出てきたレイクウッドが文句を言ってきたので、リュカは先に帰って、両陛下に自分が勝手な行動をしていると伝えるように命令した。
両陛下は今回のことをわかってくださっているから、リュカにしてみれば、レイクウッドを追い払う良い口実だった。
レイクウッドは、最初は納得がいかないような表情をしてはいた。
でも、リュカの命令に従い、大人しく別行動をとってくれた。
その後は私の乗ってきた馬車で、リュカと一緒に私の家に向かうことになった。
リュカを見たマララは「突然、いなくなった上に、男性を一緒に連れて帰るだなんて!」と憤慨した。
でも、リュカが隣国の王子だと聞くと地面にひれ伏せた。
その姿を見て、少しスッキリしてしまったのは性格が悪いのかしら?
ミアシス邸に着いた頃には、夕方になっていたため、家族も屋敷に帰って来ていた。
お父様たちは談話室にいるとメイドから聞いたので、まずはリュカを応接室に通してからお父様たちの所へ向かった。
最後に見た両親は心労のせいもあり、かなりやつれていた。
でも、今の両親はとても元気そうで、姿を見た瞬間、涙が出そうになった。
挨拶をして再会を喜んだ後は、お客様と会ってほしいとお願いした。
困惑していた二人だったけれど、お客様を待たせてはいけないということで、すぐに応接室に向かってくれた。
「リリー、一体、何があったと言うんだ?」
「そうよ。何がなんだかわからないわ」
「あとでちゃんと事情を説明します」
困惑している二人と共に、ノックをした後に応接室の中に入る。
「はじめまして、リュカ・ローブランシュと申します。ミアシス伯爵夫妻にお会いできて嬉しいです」
応接室のソファーに座っていたリュカは、扉を開けるなり立ち上がると、挨拶をして頭を下げた。
まさかの隣国の王子の訪問に、お父様たちは動きを止めてしまった。
しばらくの間があった後、何とか冷静に戻ったお父様が口を開く。
「ど、どうしてリュカ殿下がこちらに?」
「ご息女との婚約を認めてもらいたくて、無礼と知りながらも押しかけてしまいました」
リュカが苦笑して言うと、お父様は焦った表情で言う。
「こ、婚約!? で、殿下、も、申し訳ありません。お気持ちは大変有り難いのですが、リリーにはすでに婚約者がおるのです」
「お父様! 私はリュカが良いんです!」
私が叫ぶと、お父様は困った顔になる。
「何を言っているんだ、リリー!」
「お父様には申し訳ないですが、決められた婚約者なんてお断りです! 私はリュカと結婚します!」
私はリュカに近寄り、リュカの腕をつかんで叫んだ。
無茶苦茶なことを言っていることくらいわかっている。
でも、アイザックの婚約者になるなんて、絶対に嫌!
アイザックのことを思い出しただけで、腸が煮えくり返るような気分になった。
「リリー、落ち着けって」
リュカは私に掴まれていないほうの手で、私の頭を撫でてくれた。
そして、呆然としている両親に向かって話しかける。
「拒否されるおつもりでしたら、その旨を私の父にも、そのまま伝えますが、それでよろしいのですね?」
リュカの顔は笑ってはいた。
でも、本当に笑っているわけではないことくらい、お父様たちにも理解できるはず。
このリュカの発言で断るという選択肢がないのだということも。
「リリー、本当にいいんだね? 誕生日に伝えるつもりだったんだが、お前に良い婚約者を見つけたんた。婚約者にと考えていた相手はとても良さそうな青年だよ」
「一応、お聞きしておきますが、お父さまが私の婚約者にと考えていらっしゃっる方のお名前は何と言うのでしょう?」
尋ねると、お父様は私の予想通りの名前を口にする。
「アイザック。アイザック・エマロンという名前だ。伯爵家の令息で、誠実そうな青年だよ?」
名前を聞いた私は、リュカの腕を掴む手の力を強めた。
「あのクソ野郎と同じ名前?」
「そうよ。誠実だなんてありえない!」
私の耳元に口を近づけて囁くように尋ねてきたリュカに、私は頷いてなら答えた。
そして、お父様に向かって言う。
「あんな男が婚約者になるのなら、私は家を出て、今すぐリュカと結婚します」
「なんてことを言うんだ、リリー!」
お父様たちは私がどうしてそんなに頑なに、アイザックとの婚約を嫌がるのかわからなくて困っている様子だった。
でも、リュカからの申し出を断ることも出来ないから諦めてくれたのか、お父様はため息を吐いて口を開く。
「わかったよ」
お父様はエマロン家が婚約破棄を認めてくれたら、リュカと私との婚約を認めると言ってくれたのだった。
「うん、ちょっとね」
両親の反応を考えて、こめかみをおさえた私を心配してリュカが尋ねてくれた。
そんな彼に苦笑して答えたあと、押さえていた手を離して話を続ける。
「これからのことを考えていただけだから気にしないで。心配してくれてありがとう。話を戻すけれど、あなたのご両親へ挨拶を先にしたほうが良いのかしら? 身分はあなた家のほうが、わたしの家とは比べ物にならないくらいに上なんだから」
「そうか? それなら早速向かおうか。君の護衛たちにも伝えるけど、正式に父からもリリーの家族に連絡してもらうようにするよ」
「ちょ、ちょっと待って! 向かうってどこに!?」
「俺の両親のところだよ」
「ちょっと待って、リュカ! 今すぐ行くと言うのなら話は別よ!」
たしか、わたしの家族は今日の夜には帰って来ることになっている。
私が家にいなければ、かなり驚くはずだわ。
立ち上がったリュカを引き止めようとした時だった。
リュカの緩んでいた表情が緊迫したものに変わったことに気が付いた。
「リュカ?」
「リリー、これから話しかけてくる奴は要注意人物だから覚えていてくれ。奴の名前はザライス・レイクウッド。俺を嵌めた男の名だ。そして、かつての俺の親友だった奴だよ」
「はい?」
私が聞き返したと同時、長い黒髪を後ろで一つにまとめた、ひょろりとした背の高い神経質そうな男が店の中に入ってきた。
店内を見回したかと思うと、リュカのほうを見て眉根を寄せた。
そして、私たちの所やって来たかと思うと、リュカに向かって叫ぶ。
「リュカ! なんでこんな所にいるんだ! 今日は城に行くはずだろ!? 勝手な行動をとらないでくれよ!」
「予定を変更したんだ」
「僕はそんな話、一切聞いていないぞ!」
レイクウッドという男性は細い目をより細めて、リュカを責めた。
「急遽決まったんだ。父上の許可も得ているし、朝の段階でアグリタの国王にも連絡を入れて承諾も得てる」
冷たい口調で答えるリュカの態度に、レイクウッドは興奮して叫んだせいで、ずれた眼鏡を指で直しながら、訝しげな表情を見せた。
この人、側近なのに偉そうな態度を取ってるわね。
――わたしもリュカに対して敬語じゃないから人のことは言えないけれど。
「どうしてそんな勝手なことをしたんだ。しかも、僕に何も言ってくれないだなんておかしいだろう?」
「どうした、ザライス。俺がアグリタ城に行かなかったことで何か問題でもあったか?」
「問題があるとかないとかいう話じゃない! 勝手な動きをしないでくれ! しかも女性なんか連れて何をしているんだよ。リュカには素敵な婚約者がいるだろう! おい、お前! お前が着ているコートはいくらすると思ってるんだ! 早く脱げ!」
リュカのコートを着たままだった私を見て、レイクウッドは怒り始めた。
慌ててコートを脱ごうとすると、リュカが止めてくる。
「リリー、気にしなくていいから」
「でも、高いんでしょう? 汚してはいけないわ」
「汚したとしても、未来の妻に金を請求したりはしないよ」
「そうしてくれると助かるわ」
レイクウッドは私たちのやり取りを聞いて不思議そうな顔をしたけれど、すぐに私を睨みつけてきた。
「どうしてこんなに偉そうにしているんだ」
「それは失礼いたしました」
別にこの人に睨まれても怖くないわ。
負けじと睨み返すと、レイクウッドは私から視線を逸らして、リュカのほうに顔を向けた。
「リュカ、とにかくこの店を出よう」
「そうだな。行こうか、リリー」
「ええ」
リュカが立ち上がって手を差し出してきたので、彼の手に自分の手を重ねる。
すると、レイクウッドが眉根を寄せて、私に尋ねてきた。
「さっきから、リュカに馴れ馴れしい態度を取っていますが、あなたは一体、どこの誰なんです?」
「まずは自分の名前から名乗るのが貴族の礼儀ではないのですか?」
「はあ? 何を生意気なことを言ってるんだ! おい、リュカ、彼女は誰なんだよ!?」
「彼女は俺の大事な人だ。だから、彼女に偉そうな口を叩くのは今すぐやめろ」
レイクウッドに尋ねられたリュカは、はっきりと答えた。
レイクウッドはリュカに何か言おうと口を開きはしたけれど、周りの注目を浴びていることに気が付いたのか、舌打ちをしてから口を閉ざした。
「行こう、リリー」
「ええ」
椅子から立ち上がり、リュカと手を繋いで店の出口へと向かった。
*****
リュカと共に店の外に出た私は、まずはリュカに私の両親に会ってもらえないかとお願いした。
リュカのご両親であるトラブレル王国の両陛下は、約束もなしに会える方たちではないだろうし、もし会うことが出来たとしても約束もなしに押しかけるのは失礼に当たると思ったからだ。
そのことを伝えると、リュカも頷いてくれた。
「父上と母上はすでにこの国を出ているだろうから、国に帰って落ち着いてから会ったほうが良いだろうしな」
「出来れば、私の両親も連れていきたいのよ」
「わかった」
「リュカ、いい加減にしてくれ! 一体、どうなっているんだ!」
後から出てきたレイクウッドが文句を言ってきたので、リュカは先に帰って、両陛下に自分が勝手な行動をしていると伝えるように命令した。
両陛下は今回のことをわかってくださっているから、リュカにしてみれば、レイクウッドを追い払う良い口実だった。
レイクウッドは、最初は納得がいかないような表情をしてはいた。
でも、リュカの命令に従い、大人しく別行動をとってくれた。
その後は私の乗ってきた馬車で、リュカと一緒に私の家に向かうことになった。
リュカを見たマララは「突然、いなくなった上に、男性を一緒に連れて帰るだなんて!」と憤慨した。
でも、リュカが隣国の王子だと聞くと地面にひれ伏せた。
その姿を見て、少しスッキリしてしまったのは性格が悪いのかしら?
ミアシス邸に着いた頃には、夕方になっていたため、家族も屋敷に帰って来ていた。
お父様たちは談話室にいるとメイドから聞いたので、まずはリュカを応接室に通してからお父様たちの所へ向かった。
最後に見た両親は心労のせいもあり、かなりやつれていた。
でも、今の両親はとても元気そうで、姿を見た瞬間、涙が出そうになった。
挨拶をして再会を喜んだ後は、お客様と会ってほしいとお願いした。
困惑していた二人だったけれど、お客様を待たせてはいけないということで、すぐに応接室に向かってくれた。
「リリー、一体、何があったと言うんだ?」
「そうよ。何がなんだかわからないわ」
「あとでちゃんと事情を説明します」
困惑している二人と共に、ノックをした後に応接室の中に入る。
「はじめまして、リュカ・ローブランシュと申します。ミアシス伯爵夫妻にお会いできて嬉しいです」
応接室のソファーに座っていたリュカは、扉を開けるなり立ち上がると、挨拶をして頭を下げた。
まさかの隣国の王子の訪問に、お父様たちは動きを止めてしまった。
しばらくの間があった後、何とか冷静に戻ったお父様が口を開く。
「ど、どうしてリュカ殿下がこちらに?」
「ご息女との婚約を認めてもらいたくて、無礼と知りながらも押しかけてしまいました」
リュカが苦笑して言うと、お父様は焦った表情で言う。
「こ、婚約!? で、殿下、も、申し訳ありません。お気持ちは大変有り難いのですが、リリーにはすでに婚約者がおるのです」
「お父様! 私はリュカが良いんです!」
私が叫ぶと、お父様は困った顔になる。
「何を言っているんだ、リリー!」
「お父様には申し訳ないですが、決められた婚約者なんてお断りです! 私はリュカと結婚します!」
私はリュカに近寄り、リュカの腕をつかんで叫んだ。
無茶苦茶なことを言っていることくらいわかっている。
でも、アイザックの婚約者になるなんて、絶対に嫌!
アイザックのことを思い出しただけで、腸が煮えくり返るような気分になった。
「リリー、落ち着けって」
リュカは私に掴まれていないほうの手で、私の頭を撫でてくれた。
そして、呆然としている両親に向かって話しかける。
「拒否されるおつもりでしたら、その旨を私の父にも、そのまま伝えますが、それでよろしいのですね?」
リュカの顔は笑ってはいた。
でも、本当に笑っているわけではないことくらい、お父様たちにも理解できるはず。
このリュカの発言で断るという選択肢がないのだということも。
「リリー、本当にいいんだね? 誕生日に伝えるつもりだったんだが、お前に良い婚約者を見つけたんた。婚約者にと考えていた相手はとても良さそうな青年だよ」
「一応、お聞きしておきますが、お父さまが私の婚約者にと考えていらっしゃっる方のお名前は何と言うのでしょう?」
尋ねると、お父様は私の予想通りの名前を口にする。
「アイザック。アイザック・エマロンという名前だ。伯爵家の令息で、誠実そうな青年だよ?」
名前を聞いた私は、リュカの腕を掴む手の力を強めた。
「あのクソ野郎と同じ名前?」
「そうよ。誠実だなんてありえない!」
私の耳元に口を近づけて囁くように尋ねてきたリュカに、私は頷いてなら答えた。
そして、お父様に向かって言う。
「あんな男が婚約者になるのなら、私は家を出て、今すぐリュカと結婚します」
「なんてことを言うんだ、リリー!」
お父様たちは私がどうしてそんなに頑なに、アイザックとの婚約を嫌がるのかわからなくて困っている様子だった。
でも、リュカからの申し出を断ることも出来ないから諦めてくれたのか、お父様はため息を吐いて口を開く。
「わかったよ」
お父様はエマロン家が婚約破棄を認めてくれたら、リュカと私との婚約を認めると言ってくれたのだった。
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