あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜

風見ゆうみ

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26 強い女性陣

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 リュカから助っ人がいるという話は聞いていたけれど、エマ様のことだと思いこんでいた。

 まさか、アグリタ王国の王妃陛下が助っ人だったなんて!
  昨日、エマ様は友人の所に泊まると言っていたけれど、まさか王妃陛下の所に行かれていたの?

「突然、ごめんなさいね。エマ様とは前々から交流があって、こちらに来られると聞いたものだから、無理やり城に泊まってもらうようにお願いしたのよ」
 
 アグリタ王国の王妃陛下であるミレーヌ様は笑顔で話を続ける。

「エマロン伯爵のことで、エマ様が悩んでおられると聞いたわ。お友達として、なんとかして差し上げたいのだけど」

 そこまで言うと、ミレーヌ様は言葉を止めて、エマロン伯爵に笑いかけた。
 エマロン伯爵の汗を拭くスピードがかなり速まる。

 蛇ににらまれた蛙って、こんな感じのことを言うのかしら?

 二人の様子を見てそんなことを思った。
 
 エマロン伯爵にしてみれば、他国の王妃陛下がやって来ただけではなく、自国の王妃陛下に私との婚約は諦めろと遠回しに言われているのだから断るに断れない状況になっているはず。

 だから、素直に諦めてくれるかと思ったけれど違った。

「息子の気持ちはどうなるのでしょうか」

 情に訴えてきたみたいだけれど、エマ様とミレーヌ様に聞き返される。

「あら、じゃあ、私の息子のリュカの気持ちはどうなるの?」
「そうね。それに、ミアシス伯爵令嬢の気持ちはどうなるのかしら? 二人はもう恋人同士なんでしょう?」

 ミレーヌ様の言葉に、私とリュカは動揺する。

「こ、恋人同士といいますか、その」
「改めて、そう言われると照れますが、そういうことで良いんだよな?」
「そ、そうだと思うわ」

 恋人同士の演技をしないといけないところなのに、普通に照れただけになってしまった私たちを見てエマ様が苦笑する。

「リュカ、あなた、恋人同士でもないのにリリーにキスをしようとしていたの?」

 エマ様にあの時の話を持ち出されて、私とリュカの顔は真っ赤になった。

「母上! その話はあとでゆっくりしましょう! 婚約者と言われるのに慣れて恋人同士という言葉に動揺してしまっただけですから!」
「え!? ゆっくり話をしてくれるの? 嬉しい。まさか、息子と恋の話が出来る日がくるなんて思わなかったわ」

 はしゃぐエマ様をミレーヌ様が窘める。

「エマ様。まだ、エマロン伯爵は納得いっていないのだから楽観しては駄目よ」
「そうでしたわね。……で、エマロン伯爵、どうしてもリリーとあなたの子息を婚約させたいと言うの?」

 ふふふ、ほほほ、と王妃陛下二人に睨まれたエマロン伯爵はがっくりと肩を落として口を開く。

「承知いたしました。ですが、ミアシス伯爵家からの婚約破棄という形にしていただき違約金や慰謝料をいただきたい」
「そんな、父上! 嫌です! 僕はリリー様と結婚したいんです!」
「アイザック! ワガママを言うな!」
「リリー様を婚約者にすると、周りには伝えているんですよ!」
「そんなもの、こちらから……、あ、いや」

 エマロン伯爵は言葉を止めて、次に続けられる言葉を探そうとした。
 でも、すぐには思い付かなかった様で口を閉ざした。

 自分から婚約破棄してやった、と言えば良いと言おうとしたのかしら?

 さすがに王妃陛下たちの前では言えないわよね。

「世間体を気にされているようでしたら、私のために婚約破棄した、でもよろしいですわよ。もちろん、私が婚約者がいると知らなかったことも一緒にお話してもらわなければなりませんが」

 私が言うと、アイザックが叫ぶ。

「そんな嘘をつくのは嫌です! 自分の身を守ろうとしないで下さい!」
「自分の身を守るとはどういうことです?」
「そうじゃないですか! 婚約を知らなかっただなんて嘘をついて」
「リリーには伝えていなかったんだ」

 アイザックの言葉を遮り、お父様が続ける。

「リリーの誕生日にサプライズで発表する予定だった」
「そんなことをするから! くそっ!」

 アイザックは怒りが抑えられないのか、彼の本性らしきものを一瞬見せた。
 でも、すぐに冷静になって咳払いをしてから謝ってくる。

「失礼しました。では、知らなかった、というのは嘘ではないのですね」
「知っておりましたら、こんなことにはなっておりませんでした」

 一度、言葉を切ってから、また話を再開する。
 
「エマロン卿には申し訳ないのですが、リュカ殿下と出会ってからは、リュカ殿下以外の方と将来を共にする気持ちはなくなりました」
「……そうですか」

 アイザックはあからさまに悔しそうな顔をした。
 でも、エマ様たちがいるからか言い返すことも出来ないようだった。

「話がついたようね? さあ、リリーだったかしら。私たちと一緒に来なさい。第一王女の話は知っているでしょう? 可哀想に。あの子はあれから自分の部屋に閉じこもっているの。気分転換になるだろうから、あの子の話し相手になってちょうだい」
「ええっ!?」

 ミレーヌ様からの予想外の申し出に驚いて、私は失礼に当たることも忘れて、大きな声を上げて聞き返してしまった。

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