あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜

風見ゆうみ

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40 少しずつ明らかになってきたこと

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 家に帰り着いたあとは、家族とリュカと一緒に夕食を済ませた。
 部屋に戻ろうとしたところで、スニッチが屋敷にやって来たとの連絡があった。
 リュカと一緒に応接室でスニッチと対面すると、私たちに挨拶をしたあとすぐに、スニッチは本題に入った。

「エマロン家の息子とタイディ家の娘は付き合ってるみたいですね」
「え!? テレサとアイザックが付き合ってる!?」

 スニッチの話を聞いて、思わず大きな声を上げて聞き返してしまった。

「そんなに驚くことですかね?」
「え、ええ、まあ、その」
 
 私はスニッチではなく、リュカのほうを見てから頷いた。
 その様子を見たスニッチが口をとがらせてリュカに文句を言う。

「何なんですか、わかっていることがあるなら先に教えておいてくださいよ。そうすれば、手間も省けるかと思うんですが」
「俺が知るわけがないだろ。他国の人間なんだぞ」
「リュカ殿下が知らなくても、リリー様は知っていてもおかしくないでしょう。同じ学園に通っているんですから」
「2人が付き合っているなんてことは知らなかったわ。だから、驚いたんじゃない」
 
 スニッチに聞いたところ、二人は2年ほど前に知り合っていて、密かに付き合っているらしい。
 
 テレサは私のお母様のせいで、自分の両親が別れたのだと思いこんでいて、私を不幸にさせることを考えているらしい。

「今日もそうだけれど、だから、テレサは私に執着しているのね」
「今日とそうだというのは?」
「実はね……」

 夕方の出来事のことを話すと、スニッチはソファの背もたれにもたれかかり、大きく息を吐いた。

「ギリギリセーフってところでしたね」
「ギリギリセーフ? どういうことだ?」

 リュカが尋ねると、スニッチはリュカを軽く睨む。

「私は、お2人に急ぎで話したいことがあると言っていましたよね」
「だから、俺が今ここにいるんだろ」
「リュカ殿下を拾わなかったら、馬車が早く着いて、リリー様は嫌な思いをせずに帰れたかもしれませんがね」
「それについては悪かったと思ってるよ」
「やめて、リュカは悪くないわ」

 謝るリュカにそう言ってから、スニッチにお願いする。

「何を知らせたかったのか教えてほしいの」
「承知しました。もし、今日、リュカ殿下があと少しでも着くのが遅かったら、リリー様は今、ここにはいらっしゃらないでしょう」
「そ、そんな、どういうことなの?」

 スニッチが物騒なことを言うので、怯えた声で尋ねると、スニッチはソファーの背もたれから身を起こして答える。

「結論から先に言わせてもらいますと、トロット公爵令嬢が関わっています」
「トロット公爵令嬢?」

 聞き覚えのある名前だけれど、すぐには思い出せなくて聞き返すとリュカが教えてくれる。

「俺の元婚約者だよ」
「あ! カナエ・トロット公爵令嬢ね!」

 思い出して頷くと、スニッチはリュカに向かって言う。

「恋愛のもつれには色々なパターンがありますが、今回の場合の憎しみはリュカ様ではなく、リリー様にいったようですね」
「彼女がリリーを狙っているのか?」
「ええ。エマロン家とタイディ家にリリー様を拉致する様に命令した様ですね」
「じゃあ、私は今日、もう少しで拉致されそうになっていたということ?」

 驚きつつも尋ねると、スニッチは大きく頷く。

「その可能性はありますね」
「私がリュカを横取りしたと思っているの? まあ、実際にそうなんだけど」
「でも、リュカ殿下とトロット公爵令嬢の婚約は政略結婚だったわけでしょう。リリー様は気にされなくて良いと思いますよ。上手く婚約破棄できていない、リュカ殿下の責任です」

 スニッチにきっぱりと言われ、リュカは私に謝ってくる。

「スニッチの言う通りだ。本当にごめん」
「気にしないで。その場には私もいたんだから。それに過激なことをしようとしてくるほうが間違っているし、あの方はリュカと結婚できない限り、どんな条件を出したとしても許してくれないと思うわ」

 リュカの手を握って言うと、リュカも握り返してくれてから頷く。

「ありがとう。だけど、このままにしておくわけにはいかないから、リリーを守る方法を考えるよ」
「お2人共、いちゃつくのは私がいなくなってからにして下さいよ」

 スニッチが大きなため息を吐いてから言うので、私とリュカは慌てて手を離すと、改めてスニッチに向き合って先を促す。

「ごめんなさい。話を続けましょう」
「悪かった。ただ、リリーを拉致してどうするつもりなんだ?」

 リュカが尋ねると、スニッチは眉根を寄せて考える。

「どこかへ売り飛ばすつもりだったんじゃないですか? 婚約者候補が行方不明となったら、いつかは、リュカ殿下も新たな婚約者を探さないといけなくなります。そうなった時に自分が立候補する、もしくは、傷心のあなたを慰めるつもりだったのかもしれない。いやあ、女性って怖いですねぇ」
「別に女性だから、すべての人がそうする訳じゃないだろ」

 リュカが言うとスニッチは苦笑する。

「これは失礼。それに男でも嫉妬深い奴はいますからね」
「でも、トロット公爵令嬢はどのルートで、エマロン家やタイディ家に連絡をとってるんだ? 他国の貴族だぞ?」
「トロット公爵家が直接エマロン家に頼んだわけではありません。ちなみにタイディ家が手伝おうとしているのは娘の独断です。彼氏のため、そして自分のためってやつでしょうね」
「じゃあ、エマロン家に頼んだのは誰なんだ?」
「聞きたいですか?」
「もったいぶるな」

 少し苛立った様子でリュカが言うと、スニッチは笑う。

「これは失礼しました。では、お伝えしましょう。リュカ殿下、あなたのお兄様がエマロン家に指示を出しています」

 スニッチの話を聞いた私とリュカは顔を見合わせた。
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