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41 スニッチの本心
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「兄さんがもしかしたら関わっているかもしれないという事件があるにはあったが、どうして兄さんがエマロン家と繋がってる? 俺が知る限りは城からはほとんど外に出ていないはずだぞ」
「別に外に出なくても人に頼めばいいでしょう。そうじゃないと、トロット公爵令嬢にだって、エマロン家に頼むことは出来ないでしょう」
「そういえば、スニッチはまだトロット公爵家と繋がっているのか?」
リュカが眉を寄せて聞くと、スニッチはわざとらしく口を尖らせる。
「ひどいですねぇ。私がリュカ殿下を裏切るとでも思っておられるんですか?」
「二重スパイになっていないか確認しただけだ」
「ふむ。悪くない話ですね」
スニッチが顎に手を当てて言うので、リュカは大きな息を吐いてから言う。
「お前が言うと冗談に聞こえないな。城に戻ってきたら、自由に動け回れない様に監禁でもしようか?」
「物騒なことを言わないで下さいよ。私は悪い人間には付きませんから、ご安心ください。それに監禁なんてしたら、私を雇う意味ないじゃないですな」
「悪い人間にはつかないと言うけど、トロット公爵家とつながっていたじゃないの」
私がすかさず言うと、スニッチは後頭部をかきながら苦笑する。
「うーん。それを言われると辛いですね。あれは暇つぶしだったんですよ。だから、あの時、あなたを脅すだけで殺さなかったですし、薬だって無償でお渡ししたんですから信じて下さいよ」
やっぱり、あの時のレイクウッドの妹さんへの薬はスニッチがわざわざ用意したのね。
スニッチを雇う話にならなかったとしても、スニッチはあの薬を渡してくれだのだと思う。
「信じる理由としては弱い気もするけれど、スニッチは馬鹿じゃないから、あなたがもし裏切っていたとわかったらどうなるかはわかっているわよね?」
「国家反逆罪になるでしょうから、処刑ですかね」
私の質問に答えたスニッチに、リュカは首を横に振る。
「楽には死なせない。拷問を繰り返されるほうが辛いだろ?」
「怖い、怖い。まあ、それくらいの精神でないと、王太子なんてやってられませんよねぇ」
スニッチはわざとなのか明るく笑うと、話を続ける。
「私は悪党ではありますが、自分が嫌だと思う悪党になるつもりはないんですよ。ですから、いつだって、自分が正しいと思う道を選ぶつもりですよ」
「どういう意味だよ」
「そうですね。リュカ殿下が悪の道に進まなければ、私はあなたの味方ですという意味でしょうか」
「俺が悪の道に進むことはない」
「リリー様が何者かに殺されたりしたらどうします? 我を忘れませんか?」
「……殺させたりしない」
スニッチからの問いかけに、リュカは眉根を寄せて答えた。
「リュカのことも信用しているけれど、スニッチ、あなたもそうならない様に私を守ってね」
「……はい?」
私にお願いされたスニッチは、珍しく驚いた表情になり、目を丸くして聞き返してきた。
スニッチがこんな顔をするなんて珍しいわね。
そんなことを思いながら言う。
「だって、スニッチは悪党になるつもりはないんでしょう? なら、狙われているとわかっていて、私を見捨てるのは悪党のすることじゃないの?」
少し強引な言い分かもしれないけれど、思ったことを言ってみた。
私が思った通り、スニッチも強引だと思った様で苦笑する。
「納得するにはちょっと厳しい話だとは思いますが良いでしょう。リリー様をお守りできるように努力いたします」
「ありがとう。そのかわり、今回の件が片付いた時には、あなたのことを信用することにするわ」
「それは嬉しいですねぇ」
その言葉が本心かどうかは、私には読み取れなかった。
でも、私の中ではスニッチが悪い人間ではないという信じる気持ちが芽生え始めていた。
もし、スニッチが二重スパイだというのなら、私たちのほうに利益をもたらせてくれるスパイなのだろうと、なぜか確証もないのに信じてしまった。
「学園内では無理ですが、外では出来る限り頑張りますよ。そのかわり、学園の行き帰り以外に外出される時は事前に連絡をお願い致します」
「わかったわ。色々とありがとう」
思ったよりもあっさりスニッチが了承してくれたので、頷いたあとに感謝の気持ちを伝えた。
「別に外に出なくても人に頼めばいいでしょう。そうじゃないと、トロット公爵令嬢にだって、エマロン家に頼むことは出来ないでしょう」
「そういえば、スニッチはまだトロット公爵家と繋がっているのか?」
リュカが眉を寄せて聞くと、スニッチはわざとらしく口を尖らせる。
「ひどいですねぇ。私がリュカ殿下を裏切るとでも思っておられるんですか?」
「二重スパイになっていないか確認しただけだ」
「ふむ。悪くない話ですね」
スニッチが顎に手を当てて言うので、リュカは大きな息を吐いてから言う。
「お前が言うと冗談に聞こえないな。城に戻ってきたら、自由に動け回れない様に監禁でもしようか?」
「物騒なことを言わないで下さいよ。私は悪い人間には付きませんから、ご安心ください。それに監禁なんてしたら、私を雇う意味ないじゃないですな」
「悪い人間にはつかないと言うけど、トロット公爵家とつながっていたじゃないの」
私がすかさず言うと、スニッチは後頭部をかきながら苦笑する。
「うーん。それを言われると辛いですね。あれは暇つぶしだったんですよ。だから、あの時、あなたを脅すだけで殺さなかったですし、薬だって無償でお渡ししたんですから信じて下さいよ」
やっぱり、あの時のレイクウッドの妹さんへの薬はスニッチがわざわざ用意したのね。
スニッチを雇う話にならなかったとしても、スニッチはあの薬を渡してくれだのだと思う。
「信じる理由としては弱い気もするけれど、スニッチは馬鹿じゃないから、あなたがもし裏切っていたとわかったらどうなるかはわかっているわよね?」
「国家反逆罪になるでしょうから、処刑ですかね」
私の質問に答えたスニッチに、リュカは首を横に振る。
「楽には死なせない。拷問を繰り返されるほうが辛いだろ?」
「怖い、怖い。まあ、それくらいの精神でないと、王太子なんてやってられませんよねぇ」
スニッチはわざとなのか明るく笑うと、話を続ける。
「私は悪党ではありますが、自分が嫌だと思う悪党になるつもりはないんですよ。ですから、いつだって、自分が正しいと思う道を選ぶつもりですよ」
「どういう意味だよ」
「そうですね。リュカ殿下が悪の道に進まなければ、私はあなたの味方ですという意味でしょうか」
「俺が悪の道に進むことはない」
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「……殺させたりしない」
スニッチからの問いかけに、リュカは眉根を寄せて答えた。
「リュカのことも信用しているけれど、スニッチ、あなたもそうならない様に私を守ってね」
「……はい?」
私にお願いされたスニッチは、珍しく驚いた表情になり、目を丸くして聞き返してきた。
スニッチがこんな顔をするなんて珍しいわね。
そんなことを思いながら言う。
「だって、スニッチは悪党になるつもりはないんでしょう? なら、狙われているとわかっていて、私を見捨てるのは悪党のすることじゃないの?」
少し強引な言い分かもしれないけれど、思ったことを言ってみた。
私が思った通り、スニッチも強引だと思った様で苦笑する。
「納得するにはちょっと厳しい話だとは思いますが良いでしょう。リリー様をお守りできるように努力いたします」
「ありがとう。そのかわり、今回の件が片付いた時には、あなたのことを信用することにするわ」
「それは嬉しいですねぇ」
その言葉が本心かどうかは、私には読み取れなかった。
でも、私の中ではスニッチが悪い人間ではないという信じる気持ちが芽生え始めていた。
もし、スニッチが二重スパイだというのなら、私たちのほうに利益をもたらせてくれるスパイなのだろうと、なぜか確証もないのに信じてしまった。
「学園内では無理ですが、外では出来る限り頑張りますよ。そのかわり、学園の行き帰り以外に外出される時は事前に連絡をお願い致します」
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