【完結】どうぞ他をあたってください

風見ゆうみ

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26  暴走する夫の欲望 ④

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 ファルナ様たちに助けてもらったお礼を言ったあと、ブローチをラフリード様に見せて尋ねる。

「先ほど、気になることをおっしゃっていたのですが、どういうことかお聞きしても良いですか?」
「気になること?」
「はい。先代のビレディ侯爵の件です」
「簡単に話すが、それはかなり高価なものだ」

 そう言って、ラフリード様は、私の持っているブローチが今はほとんど採ることができなくなった鉱石で作られていることを教えてくれた。

「母上に見せてもらったことがある。世界で三点だけ同時期に作られたもので、一つは王妃陛下が持っていて、残りの二つの行方はわからないと言われていた」
「見せてもらったというのは……」
「ああ。一つはジゼル公爵家にある」

 そんな大事な話を聞いても良いのかと焦ったけれど、その一つが私の手元にあるのだから良いのだと思うことにする。
 そんなに高価なものだったなんて思ってもいなかったと同時に疑問が浮かんだ。

「これは一度売りに出されたのです。そんなにすごいものなら、業者はなぜ気づかなかったのでしょうか」
「業者が若かったんじゃないか?」
「……そう言われてみれば、二十代後半くらいに見えました」
「子供の時の話でなおかつ、どんなものかもはっきりしていないから判断がつかなかったのかもしれない。模造品も出回ったからな」

 会場に向かいながら聞いた話では、トータムのお母様とジゼル公爵夫人、王妃陛下は幼なじみだったらしい。
 三人が幼い頃にお揃いのものを持ちたいと言って作られたもので、王妃陛下が結婚式につけていたことで話題になり、後々プレミアがついたのだそうだ。
 それと同時に見た目がそっくりなブローチが売り出され、大流行したらしい。

「先代の侯爵夫人が付けていても、周りは模造品だと思っていたのですね」

 ウララ様も模造品だと思い込んだのね。

 成長するにつれて三人の交流が減っていき、仲が良かったことなど、当事者やその家族しか記憶になくなったそうだ。

 もしかして、ラフリード様たちが私を気にかけてくれたのは、浮気を見逃していたからというだけじゃなくて、トータムのお母様のことがあったからなのかしら。

 もっと話を聞きたかったが、会場に着いてしまったため、ラフリード様たちとは受付の前で別れた。

 今日の会場はダンスホールだ。トータムからは贅を尽くせと言われ、楽団を指定された。世界的にも有名な楽団だったため、すでに予定が埋まっていたが、元々の予定をキャンセルさせて、こちらに来てもらった。
 トータル的に財産が赤字になるわけではないが、財政が厳しくなることは確かだ。
 予算の最終チェックはトータムにもウララ様にもしてもらっているし、あとは知らない。
 慰謝料をもらえないことは覚悟しているし、ラフリード様が預かってくれているお金もある。
 少しの間だけお借りして、働いて返すことにしよう。

 ブローチはとても高価なものらしいが、絶対に売ったりしない。私にとって大事なものであるのは確かだし、多くの人の思い出の品なのだ。大事にお守り代わりに持っていよう。

 そうよ。トータムのお母様は浮気を許すような人じゃない。

 おば様、見守っていてくださいね。

 ブローチに手を触れて気合を入れたあと、私はフララさんたちかいるであろう、控え室の扉の前に立った。
 ノックしようとした時、部屋の中からトータムたちの言い争う声が聞こえてきたのだった。

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