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17 夫と愛人の言い分 ④
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「そ、そんな! どうして無理なんだ!?」
「あなたが私にしたことを自分がされたらどう思うか考えてみればわかると思いますが」
言い終えて歩き出すと、ロファー様の叫び声が背中にかかる。
「考えた! そりゃあ嫌な気になるだろう! でも、仕方がないじゃないか! 今までこんなことをしても誰も私を悪いと叱らなかった! 気づかせてくれなかった大人が悪いんだ!」
「あなたももう大人でしょう? なら、自分で気づけたのではないですか? 全てを誰かのせいにするなんておかしいでしょう。今のあなたは私にしてみればただの駄々っ子です。そんなあなたが魅力的に見えるわけがありません」
言葉が返ってこなかったので振り返ると、ここまで強く言われたことがなかったのか、ロファー様は口をぽかんと開けて私を見つめていた。何か言えるようになるまで待ってあげる必要もない。私はその場に彼を置いて自分の部屋に戻った。
******
ロファー様にとってミミナさんは初恋の相手で、次に好きになったのは私らしい。そんな私に拒否されて、彼は初めての失恋をしたことになった。彼はメンタル面が幼いままだったので「この私がフラれるだなんて」とショックを受けて寝込んでしまった。
看病に来てほしいと言われたけれど、病気ならまだしもくだらない理由なので無視した。
「フェリ様、わたし、早速約束を守れそうにないです」
「何ですって?」
ミミナさんが私の専属メイドになって二日目の朝、そんなことを言ってきたので、もう泣き言を言うのかと思ったら違った。
「もう、ロファー様のことを魅力的だとは思えません」
「ああ、そういうことね」
ロファー様と私が離婚するまで、ミミナさんにはロファー様を好きでいるようにお願いしていたから、それが無理だと言いたいのだと分かった。
「それは仕方がないわよ。ロファー様は思った以上に情けない人だったもの。それが分かったということは、あなたもそれだけ冷静になれたということよ」
「……でも、フェリ様との約束は守れません」
「そうね。じゃあ好きなフリをしてちょうだい」
「それで良いんですか?」
不安げにしているミミナさんに微笑みかける。
「良いわよ。相手が相手だし、強制なんてしたら悪い人すぎるでしょう」
「ありがとうございます!」
ミミナさんは安堵の表情になったあと頭を下げた。
ロファー様が寝込んでしまったせいで仕事が滞ってしまっている。私の仕事はある程度できているので、彼の仕事をしようかとも思ったけれど、いつかは離婚するつもりなら、私がやってしまったら意味がない。どうしようか考えていたところに、執事が困り顔でやって来た。
「ファリ様にご相談したいことがあるのですが」
「何かしら」
「本日は取引先の方がお見えになる約束なのですが、当主様は突然体調不良になったということにして帰ってもらうようにと言っておられるのです」
「それならもっと早くに予定を変更してもらえば良かったのに」
「おっしゃる通りなのですが、元々、予定していなかったノウミ公爵令息も急遽、話し合いに参加されると聞いて会いたくないとおっしゃるのです」
執事はこらえきれなくなったのか、大きなため息を吐いた。
ため息を吐きたくなる気持ちはわかるわ。
「どうしてランスロット様と会いたくないのかしら」
「自分よりもファリ様と仲が良いことを知っておられますし、先日のことでファリ様に怒られたことを思い出すからでしょう」
ランスロット様に失礼なことを言ったので怒った時のことを根に持っているらしい。
面倒くさすぎる!
「わかったわ。お客様に迷惑をかけるわけにはいかないので私が応対します。それから、そのことをロファー様に伝えてもらえる?」
「ありがとうございます!」
執事は表情を輝かせると、足早に私の部屋を離れていく。
急遽参加することになったということは、ランスロット様はきっと私に用事があるのよね。どんな話か気になるけれど、私がランスロット様と会うと知ったら、ロファー様は何か言ってくるかしら。
「あなたが私にしたことを自分がされたらどう思うか考えてみればわかると思いますが」
言い終えて歩き出すと、ロファー様の叫び声が背中にかかる。
「考えた! そりゃあ嫌な気になるだろう! でも、仕方がないじゃないか! 今までこんなことをしても誰も私を悪いと叱らなかった! 気づかせてくれなかった大人が悪いんだ!」
「あなたももう大人でしょう? なら、自分で気づけたのではないですか? 全てを誰かのせいにするなんておかしいでしょう。今のあなたは私にしてみればただの駄々っ子です。そんなあなたが魅力的に見えるわけがありません」
言葉が返ってこなかったので振り返ると、ここまで強く言われたことがなかったのか、ロファー様は口をぽかんと開けて私を見つめていた。何か言えるようになるまで待ってあげる必要もない。私はその場に彼を置いて自分の部屋に戻った。
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ロファー様にとってミミナさんは初恋の相手で、次に好きになったのは私らしい。そんな私に拒否されて、彼は初めての失恋をしたことになった。彼はメンタル面が幼いままだったので「この私がフラれるだなんて」とショックを受けて寝込んでしまった。
看病に来てほしいと言われたけれど、病気ならまだしもくだらない理由なので無視した。
「フェリ様、わたし、早速約束を守れそうにないです」
「何ですって?」
ミミナさんが私の専属メイドになって二日目の朝、そんなことを言ってきたので、もう泣き言を言うのかと思ったら違った。
「もう、ロファー様のことを魅力的だとは思えません」
「ああ、そういうことね」
ロファー様と私が離婚するまで、ミミナさんにはロファー様を好きでいるようにお願いしていたから、それが無理だと言いたいのだと分かった。
「それは仕方がないわよ。ロファー様は思った以上に情けない人だったもの。それが分かったということは、あなたもそれだけ冷静になれたということよ」
「……でも、フェリ様との約束は守れません」
「そうね。じゃあ好きなフリをしてちょうだい」
「それで良いんですか?」
不安げにしているミミナさんに微笑みかける。
「良いわよ。相手が相手だし、強制なんてしたら悪い人すぎるでしょう」
「ありがとうございます!」
ミミナさんは安堵の表情になったあと頭を下げた。
ロファー様が寝込んでしまったせいで仕事が滞ってしまっている。私の仕事はある程度できているので、彼の仕事をしようかとも思ったけれど、いつかは離婚するつもりなら、私がやってしまったら意味がない。どうしようか考えていたところに、執事が困り顔でやって来た。
「ファリ様にご相談したいことがあるのですが」
「何かしら」
「本日は取引先の方がお見えになる約束なのですが、当主様は突然体調不良になったということにして帰ってもらうようにと言っておられるのです」
「それならもっと早くに予定を変更してもらえば良かったのに」
「おっしゃる通りなのですが、元々、予定していなかったノウミ公爵令息も急遽、話し合いに参加されると聞いて会いたくないとおっしゃるのです」
執事はこらえきれなくなったのか、大きなため息を吐いた。
ため息を吐きたくなる気持ちはわかるわ。
「どうしてランスロット様と会いたくないのかしら」
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面倒くさすぎる!
「わかったわ。お客様に迷惑をかけるわけにはいかないので私が応対します。それから、そのことをロファー様に伝えてもらえる?」
「ありがとうございます!」
執事は表情を輝かせると、足早に私の部屋を離れていく。
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