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しおりを挟む殿下の留学の理由が分からないまま、とうとう留学の日が来てしまった。
あれほど月日が流れるのが遅いと思っていたのに。
メアリに、もしかして魔法でも使ったの?って聞いたら、アホなこと言わないで下さいと小さい声で言われた。
まぁ、公の場で主に暴言はいちゃ不味いしね。
ちなみに、今日はメアリさんじゃなくて、アルベルトさんです。
誰に何を言われて来たのか、ミュリエッタ様までお見送りに来てくれました。
まぁ……アルベルトを見て、小声でブツブツと「なんでこんなところに…」と言っていたのは聞かなかったことにして。
アルベルトはそれを聞いて、お腹抱えて大爆笑してたけどね。
世の中うまいこといかないものですよ。
そうそう…レオナルド殿下との婚約の件ですが、白紙になりました。
はい。割と簡単に。
理由は王家側の都合で…という事なので、私の経歴にはいっさい傷は無し。
一応、レオナルド殿下本人(ウィリアム殿下の中の人)にも聞いたけど、
「大丈夫だよ。君には全然魅力を感じない」
なんて大笑いされながら言われた。
以前王都に行って以来、仲良くさせてもらっているけど、なんだかね…
「なんで私が振られたような感じなのよ!!!!!」
と言ってやりたかった。
もちろん…言ってないけどね。
そんなこと言ったものなら、何をするか分からない腹黒殿下は、今やいいお友達。
留学の理由は教えてもらっていないけれど、ある程度の事ならば別に普通に話す仲だ。
ちなみに…レオナルド殿下の着ぐるみを着ているウィリアム殿下は、魔法の暴発を恐れた王宮魔法士に、魔力封じの魔道具を付けられ、なぜか身体を鍛えているらしい。
あと一ヶ月もすればムキムキになるかもねって言ったら……
「あの身体は筋肉が付かないんだよ。無理するとすぐ熱出すしね…」
と、ニッコリ笑顔のウィリアム殿下(中身はレオナルド殿下です!)
みなさぁーーーーーーーん!ここにいるイケメンに騙されちゃいけませんよ!!!
なんてやり取りをしているのは、外部には内緒だったりする。
一応、レオナルド殿下の婚約者候補だったしね。
『ウィンステッド嬢、ウィリアム殿下に乗り換え?!』
なんて噂が回るのも困るからね。
殿下に会う時は、メアリが開発した転移魔法陣を使って移動。
魔法陣はもちろん日本語で書いてあるので、この世界の人には解読不可。
なので、転生者と思われるミュリエッタ様には絶対見せられない。
別に転生者っていうのがバレるのが困るっていうんじゃないよ?
時期が悪いと色々と不都合があったりするからね。
この魔法陣の構築をかなり気合入れてやっていた時期に、無理はしないようにねって声を掛けたら、小さい声で「これができたら、毎日ギル様に会いに帰ってこれる……」とブツブツ言っているのが聞こえて、愛の力って偉大ねって、思わず生ぬるい目をしてしまった。
結果的には、とても便利なものができたのでいいんだけどね。
まだ、任意の場所に転移できるものではなく、マークした場所にしか行けないらしいし、回数制限があるので、開発の余地ありらしいんだけどね。十分便利だと思うけど。
「お嬢様、一応これを持っておいてください。この魔石に魔力を注ぐと、お屋敷に転移するようになっています。なにか不測の事態が起きた場合は……」
そう言って、魔道具化した転移魔法陣を私に持たせられたけど、結局使わずに隣国の国境を通過。今日はこの先の宿場町にて一泊することになった。
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