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しおりを挟む領地に帰ってきてすぐ、お父様に神殿へ入りたいことを言った。
そして、ラビに頼んで今の神殿の実情を調べてもらっている。
お父様に神殿のことを言った時、ビックリした表情の中に、悲しんでいるような気配も感じた。
私がいきなりこんなことを言い出したから悲しんでいるのだろう。
でも。この髪色はいずれはバレるだろうと思う。
まぁ、遅かれ早かれってやつだろう。
バイエルンにもアルメニアにも、聖女が出現したら差し出さなければいけない…なんて怖い法律はない。
あくまでも任意であったり神殿側からの勧誘だったりするそうだ。
「前世は黒だったから違和感はないんだけど…異世界だと、黒髪っていないからね…」
あくまでも私の予想だけど、この髪の黒は魔力ではないかと思う。
レオナルド殿下は魔力暴走の末入れ替わりなんてことになってしまったせいか、身体には何もなかったのだろう。カール殿下は以前は金髪だったと聞いた覚えがある。そして私も……。
以前は銀髪であった髪をひと房とり、ふと思う。
いっそ切ってしまえばいいかも?
成人のお披露目の日取りも決まっていない今なら、髪を切ってしまえば…ある程度結える長さまで延期できる。
そして、その間に神殿に入ればいい。
もしお父様や兄様が、神殿入りが家の為にならないと判断するのであれば、どこか辺境の地で自給自足の暮らしもいいかも知れない。幸にも私には魔法がある。ラビもピーちゃんもいる。
必要なら、あの空間にもう一度行き、仲間を増やせばいいだけのことだ。
私の魔力で生きる彼らなら、私が死ねばそれほど間を置かずに消えるだろう。
心残りを残して死ぬなんて、もう嫌なのだ。
それならば、いっそ周りに誰もいない方がマシだ。
前世…刺されたあの時…刺された場所は熱いのに、震える程ゾクゾクする背中。
くらくらと酩酊したような視界の端に映る赤い水たまり。
刺されたことは分かった。けど、何もできなかった。
出来たのは、心の中で両親と…刺される直前まで一緒に仕事をしていた真純に謝る事だけだった。
そういえば…あの時後悔したんだっけ。
気持ちを伝えなかったこと。
今回も、このまま行ったら後悔するかな?
前世と今では、結婚に対する価値観も人格に対する尊厳も何もかも違う。
なので、なかなかハッキリと自分の気持ちを口に出せる者など、余程の激情家かおバカさんくらいしかいない。
いずれ一国の王になるであろうレオナルド殿下でさえあれなのだ。
まして公爵家とはいえ令嬢である私が、気持ちを口になど……。
でも…真純君は…カール殿下は、私がみのりだったことを知っている。
なら…少しくらいこの世界の常識から外れても、見逃してくれるよね?
真純君に気持ちを伝えて…結婚を祝って……それから次を考えてみても良いかな?
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