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二人が初めて出会ったのは、高校の運動会だった。
その時、仁野は一年生で、松田は二年生。
あの日は容赦ない日差しが照りつけ、仁野はクラス代表として五千メートル走に出場することになっていた。
短距離や走り高跳びにもすでに出場していて、心身ともに疲れ切っていた。
――体育科の生徒だからといって、他のクラスメイトからは便利な駒扱い。普段は成績が悪いと見下され、家が裕福だと妬まれ、体格が恵まれていると煙たがられる。
それなのに運動会だけは「駄馬」みたいに全ての種目を押しつけられるのだ。
それでも、いざ競技が始まると全力を尽くしてしまうのが身体に染みついた性分だった。
だが最後の百メートルで転倒し、膝を地面に強打。大きく擦りむき、血がにじみ出す。冷や汗が止まらない。
それでも足を引きずりながらゴールまでたどり着いた。
医務室の前で椅子に座らされ、限界まで抑えていた苛立ちが一気に爆発する。
「……っ、もっと優しくできねぇのかよ!」
消毒液を塗ろうとしていた男子を、反射的に蹴飛ばしてしまった。
その男子はバランスを崩し、床に尻もちをつく。
周りの生徒が息を呑む中、顔を上げたその瞬間――
「……ごめん。もっと優しくする。」
大きな瑪瑙のような瞳が、まっすぐ仁野を見つめていた。
仁野は言葉を失った。
直男だろうが何だろうが、顔のいい奴には弱い。
理不尽に八つ当たりしたのは自分なのに、彼は謝ってきた。しかも、綺麗な顔をして。
どう見ても悪いのは自分のほうだった。
仁野は苛立ちを押し込めるようにこめかみを押さえ、水を仰ぐ。
何も言えずにいると、その男子――松田は再び消毒を続け、終わると小さな声で注意事項を告げて去ろうとした。
胸元の名札には「医務係ボランティア 松田」と書かれていた。
松田が薬箱を片づけていると、仁野はまだ足を引きずりながら立ち上がり、氷水の入ったカップを彼の頬に押し当てた。
「……悪かったな。さっきは八つ当たりした。」
わざとらしく笑ってみせた。冷たさに肩をすくめた松田の仕草が、妙に印象に残った。
その後、二人の交流はほとんどなかった。
LINEを交換したが、たまに挨拶をする程度。
松田から何度か映画やプールに誘われたこともあったが、仁野はいつも断っていた。
それ以来、松田からの誘いはぱたりと途絶えた。
松田が卒業する時には、学校全体が彼の栄誉を称えた。
横断幕には「松田栄選手 優秀賞受賞おめでとう」と書かれ、大々的に掲げられた。
その光景を見て、仁野はLINEで一言だけ送った。
「おめでとう。」
しばらく返事は来なかった。
やがて届いたのは――心のこもった告白だった。
その時、仁野は一年生で、松田は二年生。
あの日は容赦ない日差しが照りつけ、仁野はクラス代表として五千メートル走に出場することになっていた。
短距離や走り高跳びにもすでに出場していて、心身ともに疲れ切っていた。
――体育科の生徒だからといって、他のクラスメイトからは便利な駒扱い。普段は成績が悪いと見下され、家が裕福だと妬まれ、体格が恵まれていると煙たがられる。
それなのに運動会だけは「駄馬」みたいに全ての種目を押しつけられるのだ。
それでも、いざ競技が始まると全力を尽くしてしまうのが身体に染みついた性分だった。
だが最後の百メートルで転倒し、膝を地面に強打。大きく擦りむき、血がにじみ出す。冷や汗が止まらない。
それでも足を引きずりながらゴールまでたどり着いた。
医務室の前で椅子に座らされ、限界まで抑えていた苛立ちが一気に爆発する。
「……っ、もっと優しくできねぇのかよ!」
消毒液を塗ろうとしていた男子を、反射的に蹴飛ばしてしまった。
その男子はバランスを崩し、床に尻もちをつく。
周りの生徒が息を呑む中、顔を上げたその瞬間――
「……ごめん。もっと優しくする。」
大きな瑪瑙のような瞳が、まっすぐ仁野を見つめていた。
仁野は言葉を失った。
直男だろうが何だろうが、顔のいい奴には弱い。
理不尽に八つ当たりしたのは自分なのに、彼は謝ってきた。しかも、綺麗な顔をして。
どう見ても悪いのは自分のほうだった。
仁野は苛立ちを押し込めるようにこめかみを押さえ、水を仰ぐ。
何も言えずにいると、その男子――松田は再び消毒を続け、終わると小さな声で注意事項を告げて去ろうとした。
胸元の名札には「医務係ボランティア 松田」と書かれていた。
松田が薬箱を片づけていると、仁野はまだ足を引きずりながら立ち上がり、氷水の入ったカップを彼の頬に押し当てた。
「……悪かったな。さっきは八つ当たりした。」
わざとらしく笑ってみせた。冷たさに肩をすくめた松田の仕草が、妙に印象に残った。
その後、二人の交流はほとんどなかった。
LINEを交換したが、たまに挨拶をする程度。
松田から何度か映画やプールに誘われたこともあったが、仁野はいつも断っていた。
それ以来、松田からの誘いはぱたりと途絶えた。
松田が卒業する時には、学校全体が彼の栄誉を称えた。
横断幕には「松田栄選手 優秀賞受賞おめでとう」と書かれ、大々的に掲げられた。
その光景を見て、仁野はLINEで一言だけ送った。
「おめでとう。」
しばらく返事は来なかった。
やがて届いたのは――心のこもった告白だった。
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